離婚の条件を口約束だけにしない!~公正証書か調停調書を作成しましょう~

口約束だけでは危険、離婚後のこと
離婚の際、財産分与や慰謝料、年金分割をどうするか、未成熟のお子さんがいらっしゃれば、養育費を月いくら払ってもらうか、面会交流の条件など、さまざまな取り決めが必要ですね。
これらの離婚の諸条件について、口約束だけで済ませてしまうかたもいらっしゃいますが、それはおすすめできません。相手が約束を守ってくれず態度を変えた場合、合意の内容を証明する手段が何もないからです。特に養育費については、離婚後何年も続くものであり、相手が払ってくれなくなる可能性については、対策をしておくべきです。
 
合意書(協議書)を作ればOK?
離婚に際して、当事者間で合意書を作成して双方署名捺印し、そこに書いておけば安心かというと、そうでもありません。自分たちで作った合意書では、たとえば相手が養育費を払ってくれなくなった場合、その合意書を使って相手からお金をとるには、まず裁判をおこして勝ってから、相手の財産や給与を差し押さえて取り立てる(強制執行)という、まわりくどいステップを踏まなければなりません。
 
公正証書か調停調書を作成しておきましょう
もし相手が約束どおり払ってくれなくなった場合にはすぐに強制執行の手続に移れるようにするために、離婚に際しては、公正証書か調停調書を作成しておきましょう。
(1)公正証書
公正証書は、公証役場というところで、そこにいる公証人が作成してくれます。離婚の諸条件について相手との合意が実質的にできたら、公証役場に連絡し、公証人とやりとりして文案を決め、相手と公証役場に行って、公正証書を作成してもらいましょう。弁護士をつけていれば、公証役場には弁護士が行きますので、ご本人は行かなくてよく、相手と顔を合わせなくても済みます。公正証書に、「もし払わなくなった時は直ちに強制執行に服する」旨の条項(強制執行認諾文言といいます)を入れておくことが重要です。公証役場に払う手数料は数万円程度ですが、お住まいの自治体によっては離婚公正証書作成の手数料の補助制度があるところもありますので、調べてみてください。財産分与の対象が多岐に渡るなど、内容が複雑になりそうな場合は、弁護士に依頼して相手との交渉や公証人とやりとりしながらの文案の作成をしてもらうことをおすすめします。
(2)調停調書
公正証書よりは手数料が安くて済む手段としては、離婚調停を利用して裁判所に調停調書を作って貰う方法があります。離婚の諸条件について相手と折り合わないときに離婚調停が有効なのは勿論ですが、実質的に合意ができている場合でも、調停調書という形にしておけば、もし相手が調書に書いたとおりの支払をしなければ、強制執行に使うことができます。離婚調停を起こし、第1回の調停期日(申立からだいたい1か月程度)で調停を成立させれば、裁判所書記官が調停調書を作成してくれます。調停の申立にかかる手数料は1200円ですので、戸籍謄本など提出資料の取得費用を含めても、2,000円以下くらいでできます。
このように、離婚の諸条件は口約束にとどめず、公正証書か調停調書を作り、相手が支払わなければ直ちに強制執行に移れる状態にしましょう。そうしておくことで、相手にも「責任を持って払わなければ」と思わせることができるという効果が生じます。

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