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インバウンド(訪日外国人旅行者)と日本観光の未来〜インバウンド依存リスク〜
本連載では、訪日外国人旅行者(インバウンド)の需要拡大を背景に、日本観光業の未来について考察します。
本記事では、「インバウンド依存リスク」を取り上げます。
(1)はじめに
日本の観光業は、訪日外国人旅行者(インバウンド)の需要に支えられ、地域経済や文化交流の発展に大きく寄与してきました。
これまでの成長を振り返りつつ、未来をさらに明るくするためには、潜在的な課題を理解し、対応策を講じることが重要です。
本記事では、これまでに起きた事例から学びつつ、未来に向けた観光業の可能性を広げるための取り組みを提案します。
(2)お得意様は誰?国内観光が観光業の基盤
2019年、訪日外国人旅行者による消費額は4.8兆円に達しましたが、日本全体の観光消費額(21兆円)に占める割合は約19%でした。国内旅行消費が観光業を支える基盤であることが明らかです。
さらに、2024年7~9月のデータによれば、日本人国内旅行消費額は約7.3兆円、訪日外国人消費額は約1.9兆円で、インバウンドの割合は約21%に留まっています。
このデータは、国内観光の強さとインバウンドがもたらすさらなる可能性の両方を示しています。今後のインバウンド消費割合の増加が見込まれる中、両者をバランスよく育てることで、日本の観光業は持続的に発展していくでしょう。
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(3)事例①:新型コロナの問題
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2020年、新型コロナウイルス感染症の世界的流行により、インバウンド数は2019年の約3,200万人から2020年には約410万人(-87%)に激減しました。
観光消費額も約4.8兆円から約7,400億円(-85%)に減少し、観光関連産業に深刻な影響を与えました。
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一方で、その後の急回復は観光業の力強さを示しています。
(4)事例②:福岡の韓国人旅行者減少問題
2019年、徴用工問題を背景に韓国人旅行者数が減少しました。
韓国からの福岡県訪問者は2018年の171万人から2019年には122万人(-29%)に減少しました。地域経済への影響が懸念される中、福岡市は新たなターゲット市場(東南アジアや国内観光客)の開拓に乗り出しました。
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(5)今後想定されるリスクとリスク対策
観光業は多くのチャンスを持つ一方で、潜在的な課題にも向き合う必要があります。以下は想定されるリスクと、それを乗り越えるためのアプローチです。
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■今後想定されるリスクと対策
1. 自然災害
地震:日本は地震多発国であり、観光地の安全性が懸念される場合、訪日外国人旅行者が大幅に減少する可能性がある
台風・豪雨:気象条件による交通インフラの停止が観光スケジュールに影響
火山噴火:火山近隣の観光地で交通規制が生じる
✓対応策:災害時の迅速な復旧計画と観光客向けの安全情報の整備など
2. 国際情勢の変化
外交問題:特定国との関係悪化が観光需要に影響
テロの発生:安全性が損なわれることで訪日需要が減少
✓対応策:多国間の観光市場の開拓と安全対策の強化など
3. 経済的リスク
円高・物価高騰:旅行コスト増により、訪日需要が減少
✓対応策:旅行体験そのものの質の向上など
4. パンデミック(感染症の流行)
新型感染症の発生により、国際的な移動が制限される
✓対応策:マイクロツーリズムなど国内旅行客の獲得
5. 環境・気候変動
スキーリゾートの雪不足やビーチリゾートの環境劣化が観光需要に影響
✓対応策:サステナブル観光の推進と資源の保護
(6)まとめ
インバウンド需要は、観光業にとって成長の可能性を広げる重要なエンジンです。しかし、その成果が地域や事業の実力によるものか、円安など外的要因に支えられた一時的な追い風なのかを冷静に見極める視点も重要です。
"お得意様"需要をしっかりと基盤に据え、多様な市場に対応する力を高めることで、持続可能な観光モデルを構築する必要があります。
インバウンド需要と国内観光を両輪とし、多様性と持続可能性を軸に据えた観光業の未来を構築することが求められます。
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