事業再構築補助金第12回・過剰投資案件は採択困難
(1)はじめに
2024年4月23日、事業再構築補助金の公募再開が公表されました。
この補助金は、コロナ禍で影響を受けた事業者の事業再構築を支援することを目的としています。
第10回申請までは各回で50%程度の採択率でしたが、第11回申請では約25%と半減しました。
背景として、行政レビューが入り、過剰投資誘発を防止するため、倒産事例が増えている、唐揚げ、脱毛サロンなどの審査が厳格化され、採択が難しい状況となっています。
このような事業は、いかに良い事業計画書が作成されたとしても、採択が難しいのが現状です。
そこで、本記事では、事業再構築補助金の第12回申請に向けて、過去の申請状況と第11回申請での状況の変化を整理し、特に、採択が難しいと思われる事業について明確化したいと思います。
これにより、事業者やアドバイザーの方々が、採択可能性の極端に低い事業に対する事業計画書作成やweb申請作業などに費やす実務コストを節約し、既存事業への注力や別のより効果的な事業再構築に注力できる一助になればです。
なお、個人的には、過剰投資の中でも、差別化要素を徹底的に追及することで成功するビジネスへ通じるケースも多くあると思います。
しかし、行政レビューで指摘を受けてしまった背景を考慮すると、第11回申請で過剰投資認定を受けて採択件数の極めて少ない事業が、第12回で多く採択される可能性は限りなく低いと言えます。
このような背景を説明し、以下で、具体的な説明を行います。
(2)事業再構築補助金行政レビューの背景
事業再構築補助金は、ポストコロナ・ウィズコロナ時代の経済社会の変化に対応するために中小企業等の事業再構築を支援し、日本経済の構造転換を促すための補助金です。しかし、新型コロナ対策としての役割が終わりつつある現状を踏まえ、制度の役割は終えたのではないか?実施するのであれば、"制度自体の抜本的な事業再構築"が必要と、2023年秋に実施された行政レビューで厳しい指摘を受けました。
(3)第11回は、採択率が約25%
過去の採択率として、第1回は低調な採択率となりましたが、その後は50%前後で安定的に推移。
しかし、行政レビューの結果、第11回申請時に採択率が大きく下がり、約25%と4社に1社の狭き門となりました。
そして、第12回申請は、約30%~35%の採択率と予想します。
(4)行政レビューを踏まえた中小企業庁の対応と、過剰投資案件
行政レビューを踏まえ、中小企業庁は今後の対応策を公表し、第12回公募要領(書面審査項目)でも、その影響が色濃く反映されています。
このような中小企業庁の対応から、第12回申請では、どのような事業内容を申請するかで、採択率が大きく異なることも想定されます。
そこで、以下で、事業類型別・申請金額別・業種別・事業内容別の分析を行いました。
(5)①事業類型別(申請枠)分析
どの事業類型(申請枠)が採択され易いのか?
環境など中長期的な将来の成長分野への投資案件は採択されやすい傾向があります。一方、産業構造転換枠(国内市場縮小等の構造的な課題に直面している業種・業態の中小企業等が取り組む事業)は若干採択率が低いです。
ただし、総じて、大きな差はないと言えます。
■第11回の事業類型別採択率
(6)②金額別分析
どのくらいの申請金額が、採択され易い/採択されづらいか?
基本的には、申請金額が大きい方が採択率が高い傾向にあります。
数百万円規模で投資を行うことも出来ますが、「事業の大胆な再構築」という趣旨や、補助金申請に係る各種実務コストも考慮すると、1,000万円以上の投資が望ましいです。
■第11回の申請金額別分布
(7)③業種別分析
どの業種が、採択され易い/採択されづらいか?
■第11回の応募件数と採択件数
第11回申請では、約9,200件の応募があり、約2,400件が採択されました。
例えば、製造業では、約9,200件の応募のうち19.7%の申請がありましたが、実際に採択された全約2,400件のうち、製造業として採択された割合は30.9%です。製造業は、他の業種に比べて有利であることが分かります。
■(参考)第1回~10回の応募件数と採択件数
(8)④事業別分析
最後に、具体的にどの事業が、採択されづらいかを分析します。
(参考)財政制度等審議会財政制度分科会資料
【具体的な分析】
具体的に、過剰投資の指摘を受ける可能性が高い事業の過去の採択率を分析。いくつかのキーワードごとに、過去の採択件数を整理しました。
このような事業は、定量的にも、採択の難しさが分かると思います。
(※分析過程)
過去の採択結果のうち、「事業計画名」に各キーワードが含まれているかで抽出。その他の要因は考慮していない点は留意ください。
【対策】
このような背景を踏まえ、まずは、新たに事業再構築補助金を活用して実施する事業が、過剰投資事業に該当する可能性がないか必ず確認しましょう。
過剰投資事業に該当する場合、採択可能性が極端に低くなる可能性がありますので、アドバイザーからのコンサルティングなども受け、申請を行うか否かを事前に十分に検討しましょう。
(9)まとめ
事業再構築補助金は、コロナ禍で影響を受けた事業者の事業再構築を支援する補助金ですが、第11回申請では、行政レビューの指摘を受け、過剰投資誘発を防止するための審査が厳格化されました。
その結果、唐揚げ、サロンなどの事業での採択率が大幅に低下しています。
本記事では、事業再構築補助金の過去の申請状況と第11回申請での変化などを整理し、事業類型(申請枠)別、業種別、事業別などの観点で、採択のされ易さ/採択されづらさなどについて分析を行いました。
第12回申請に向けて、事業者の方々は、自社が新たに実施する事業内容と照らし合わせ、採択可能性を慎重に見極める必要があります。
もし、過剰投資の指摘を受ける可能性の高い事業分野で申請する場合は、これまで以上に十分な準備と競合他社との差別化が求められます。
ぜひ、採択のために考慮すべきポイントを熟知しているアドバイザーを味方につけてください。本記事が、これから補助金を申請する事業者とアドバイザーの方々にとっての一助となれば幸いです。
以上、企業経営の参考にされてください。
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