インバウンドと日本観光の未来~MICEと観光とまちづくり
本記事では、アフターコロナで存在感を高める、"MICE産業"について考察します。
(1)はじめに・MICEって何?
最近、ニュースで、大規模なアリーナやコンベンションセンターの建設に関する記事を目にする機会が増えていませんか?
例えば、ここ数年で横浜みなとみらい地区など首都圏でもアリーナ会場が増えましたし、沖縄など地方でもMICE施設設置に関する話題が増えています。あなたのまちでも、そのような話が出ているかもしれません。
この背景にあるのが「MICE」と呼ばれる分野ですが、「MICEって何?」と思う方もいるかもしれません。
本記事では、MICEの基礎情報やそのインバウンド観光への効果を探っていきます。
(2)MICEとは何か?
MICEは、次の4つの要素で構成されるビジネスイベントの総称です。
Meeting(会議):会社や団体が主催する会議。
Incentive (報賞旅行):業績達成者や特定の貢献者への報賞として実施される旅行。
Conference (国際会議):学術や専門分野の国際会議やシンポジウム。
Exhibition (展示会・イベント):商業的な展示会や、音楽スポーツイベント。
また、「MICE」に関する議論を行う場合には、これらの4つの構成要素のどれを指すのか(または総体を指すのか)を明確化することが重要です。
(3)MICEの効果とは?
観光庁が掲げるMICEの主要な効果について、以下の5点にまとめます。
■ビジネスMICEの消費額
特に経済効果に焦点を当てると、海外からのMICE参加者一人当たり消費額は、一般観光者より1.5倍~2倍高いといった特徴があります。
アフターコロナでオーバーツーリズムの問題が顕在化する中、高い消費をもたらす顧客獲得の文脈では、重要な顧客層と言えます。
(4)ビジネスMICEの観光業への効果は?
特に、海外から来訪するビジネスMICE顧客が地域観光業へもたらす効果は以下のようなものが考えられます。
1.宿泊や観光が伴うことによる地域への経済効果
海外からの参加者が宿泊施設や地域の観光地を利用することで、地域経済への直接的な収益をもたらします。
特に、国際会議やインセンティブ旅行では、長期滞在や高価格帯の消費が一般的であり、観光施設や交通インフラの活性化に貢献します。
ポストカンファレンスツアーなどの追加消費も期待でき、地域経済全体への波及効果が高いです。
2.ユニークベニューと地域文化・歴史遺産の活用
海外からの参加者にとって、日本独自の歴史的建造物や文化施設で行われるイベントは特別な魅力となります。
地域文化や伝統を体験できる場としてユニークベニューが選ばれることで、地域のブランド力向上と観光資源の有効活用が進みます。
例として、京都や東京など各地域の歴史遺産や文化遺産を活用したセレモニーの開催などが挙げられます。
3.分散需要の創出
観光のオフシーズンや平日に開催される場合、地域の観光需要を平準化する役割を果たします。
海外からの参加者が滞在することで、閑散期の宿泊施設や観光地の利用が促進され、地域全体の経済安定に寄与します。
(5)MICE産業の課題と未来の可能性
MICEは高い消費比率を持つ一方、日本においては以下のような課題が存在します。
イベント会場の不足
大規模な国際会議や展示会に適した会場が足りないため、大規模MICEの受け入れが困難です。
特に、地方都市では事業採算の観点でインフラ整備が課題となります。
国際マーケットとの連携
国際競争において、日本のプロモーションやネットワークの繋がりには改善の余地があります。
地域リソースの不足
地域のプロモーション力や専門人材不足が課題となっています。
また、地方自治体や観光協会の連携も益々必要になります。
MICEは、日本の地域観光のハブとして大きなポテンシャルを持ちます。
地域産業活性化や国際化に貢献できるよう、日本全体でのサポート体制の強化が求められます。
(6)まとめ
MICEは、観光業界における成長の大きな原動力となり得ます。
地域の独自性を活かしながら、MICE産業の基盤を強化することは、地域経済の活性化や国際的な競争力の向上に直結します。
日本が「選ばれるMICEの地」として認知されるためには、課題を改善し、強みをさらに伸ばしていくことが重要です。
(7)観光MICE:集いツーリズム入門
MICEに関連する書籍は限られていますが、導入本としては、日本のMICE産業の第一人者である田部井氏の著書『観光MICE:集いツーリズム入門』(2017年)がおすすめです。
この本は、MICE産業の体系的な理解を深めるだけでなく、コロナ後の新たなビジネス機会についても示唆を与えてくれます。これからMICE産業に従事される方や、イベント関連事業に興味がある方に最適な一冊です。
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