飛行機雲

負けた。

それを認めてからはあとは楽だった。自分が人生の成功者でもなく世界を革命的に変えられる力がないことも,あの子を幸せにできるような力もないことを認めることも,すでに分かり切っていたことなんだ。ふと見上げた空に一筋の白い線が引かれていた。それは,真っ青なキャンバスを2つの世界に分断する線でどこまでも続いていく。自分の中の小さなプライドが邪魔をして認められなかった世界を分かつ境界線は今は重たく冷たい壁になり私の前にある。夕暮れを告げる懐かしい音楽が流れ,子供たちはそれぞれ帰るべき場所へと帰っていく。私はそこから進むことも戻ることもできず,小さな公園のベンチで独りうなだれていた。

読んでくださり,ありがとうございます。