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小説

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2020年5月の記事一覧

おもてなし

私の行きつけの店で、いつもいいようにしてくれる店の主人がいる。

その店は、有名なクチコミサイトでの評価は常に星4位上をとっていて、行くたびにお店はほぼ満席状態だ。これだけ繁盛しているお店でも、私が予約の電話をすれば必ず席を取っておいてくれて、おまけにちょっと高めのいわゆる裏メニューを出してくれる。
私が会社の上役に昇進したときのお祝いにこのお店を使って以来の付き合いだ。はじめはちょっといいお通し

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レジ

レジ

「久しぶり」
そう呼びかけられて、ふと前を向くと知った顔があった。僕の自分勝手な自己陶酔の果てに悲しみと青春の痛みを与えてしまった彼女が。
気怠いコンビニの深夜バイトが始まった冷たい春の夜の初めに彼女は現れた。

「引っ越ししてここ近所だからよく来るんだよね。」
そんなことを言っていたかもしれない。そんなことがわからなくなるくらい僕はショートした機械のように停止する。大学から近いからという理由

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