外野フライ
「ナイキャッチ。」
監督がぽんと私のお尻を叩いた。
私は背筋に悪寒が走り、顔を引きつらせながら言った。
「ちょっと、セクハラしないで下さいよ。」
「ん?男同士だってやるぞ?テレビで見るだろ。」
私は顔を背け歯軋りした。
都合のいいときだけ男女平等みたいに言いやがって。
普段は『やっぱり女は男みたいにいかねーな』だのなんだのぬかしてるくせによ。
私が男だったらこんな思いせずに済んだのに。
ただ野球がしたいだけなのに。
なんでこんな我慢しなきゃいけなんだ。
監督も女だったらいいのに。
選手が女なんだから監督も女でいいだろ。
なのにどこのチームも男ばっかり。
それは『指導者は男がやるべきだ』っつー男どもの自尊心のせいだ。
女でも野球はできるけどやっぱりその上には男がいる、男がまとめてるっつう事実を作りたいんだ。
雑誌やネットには、『女子プロ野球 かわいいランキング』なんてのがあふれてる。
結局男はそういう目でしか女を見てない。
でも私はプロになった。
他所でごちゃごちゃ言ってる連中とは違う。
次の目標は、監督になることだ。
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