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【金沢ひとり旅】春はあけぼの

 朝4時55分。普段なら埴輪のような格好で布団を蹴飛ばし爆睡しているであろう私ですが、今日は違います。二度寝をしたい気持ちを抑えて布団から起き上がると、サッと身支度を済ませホテルの外へ。辺りはまだ暗く、頬に当たる空気がとても冷たいです。

 早起きのご褒美には兼六園の朝焼けを。

 歩きはじめて十数分。スマホの地図を頼りに入園口まで辿り着くと、そこに小さな管理室を見つけます。「この時間じゃ暗くてなにも見えませんぞ。」と門番のおじさん。予想外の冷たい一言にちょっと気分が沈みます笑

 庭園の中に入ると、周りが木々に囲われているからでしょうか。砂利を踏む音、川が流れる音、鳥のさえずり。すべての音がしんみりと耳に浸ってゆく感覚がします。それからしばらくーーー。
 園内を散策していると、先ほどよりも空が明るくなってきました。いよいよです。

 今から約1000年前。「春はあけぼの」という句が一つの書に残されたわけでありますが、私はこの時期に旅をするたび、清少納言を天才だと思うのです。だって、綺麗な朝焼けは、まだ肌寒い春の朝に凍える私を心の内からじんわり温めてくれるように感じるのですから。

 さて、つぎに訪れるときは自信を持って門番のおじさんにこう言うことに決めました。

「この時間じゃ暗くてなにも見えませんぞ。」
「ええ、でもこの時間じゃなきゃダメなんです!」

2023年3月ひとり旅日記より

2023.3.20
金沢・兼六園


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