路輪一人の・一人・映画・ごっつ

ウォッチメン

言葉がね、出てこないんですよ。

なんだろ、ありとあらゆる最上級の料理の素材が揃ってる感じ。

①・喜劇役者の最低のジョーク

悲劇を語る上で、喜劇はとてつもなく重要で、悲劇と喜劇はこの一点でのみ結ばれます、曰く「狂気」

その狂気を一身に背負った男、ロールシャッハ、彼は人類が今だなしえていない精神的超人の域に至った男で、その狂気たるや、キリストか、ブッダか、って感じ。いやもう、何あのカッコヨサ。最弱である、ってのポイント最高に高いです。うちねぇ、ずうっとこう、キモヲタヒーロー書きたくて考えてたんだけど、もう最上級がここにいて頭抱えているんです。もうロールシャッハは作れないからね!書いちゃいけないから。何を出しても「ああ、ロールシャッハね」って言われること請け合いだから。もう書けない、畜生。

②・人間の根幹は野蛮である

もう思わず拍手。やっとハリウッドがこれを言ってくれた。今まで何度も繰り返し語られていた事だけど、人間の根幹をじっくり見据えるとそこには、動物的な暴力性しかないんですよ。所詮猿山で、その猿山の中でうちらは暮らしているに過ぎないんですよ、人間を一体なんだと想ってるんだ、人間だろってバカか、人間は徹底して動物に過ぎないんだよ!

だから「戦争反対」とか「差別反対」とか言われると、すごい、すごい顔がロールシャッハになるっていうか、(・・・それが人間だろ・・・)っていう心の声が聞こえてくるっていうか、「人間は基本的にクッソ野蛮であり、差別をし、他人にマウンティングしたがる動物である。そういう動物が作り出した社会の中で、或る程度干渉を受けず、まぁまぁ生活していくにはどうしたらいいッスかね」って考えられる人が好きで、そういうのがライフハック、だと想うんだけど、作中でも語られる「クソリベラル」な人間達って、この点失念してるよね。人間は神の子!だから素晴らしいんだー!悪魔が笑うよ、多分。腹抱えて笑ってる。

③・コメディアンの暴力性

最高です。これが、「男」です。もうなんつうか、わかるの。わかるのよ、最高。ヒィ最高。所謂フェミからすれば発狂モンでしょうが、最高に心地よかった。男性というのは「破壊」そのものです。好きな漫画、銃夢、からこんな台詞を引用。「男の仕事というのは、言い換えてみれば破壊。自分だけの力で地球を破壊する、それが男の浪漫ってもんだ」もう、この時点でうちは腕を振り上げる、ウオオオオーーーーー!絶火ーーーー!おれだー!殺してくれーーー!尚且つ、男性はその上で、考える。戦闘特化型の男って最高ッスね、本当。戦闘特化型というのは、勝つために手段を選ばない系の男であり、そのための権謀術数というのは絶対的に持ってる。勝ち続けた人間ならなおさら。もう拳を握る手が震えてる。その上で、涙を流せる、ってもうコメディアン最高じゃねぇか、おい!!1111111

④・全編に通じる陰鬱な絶望と悲しみに満ちた希望

まるで現実世界じゃないッスか。そう想わないッスか。

冒頭に美しいカントリーが流れて、哀しみの歴史が流れる、そいつはとてつもなくメランコリックで(メランコリーそして終わりのない哀しみ、だ)死んでいったヒーロー達、ヒーロー達の孤独、そして誰も相互には理解しえない、という断絶の苦痛の記憶。それが、美しいカントリーで装飾されてしまっている、それをなんていうか、知ってる?過去っていうんだよ。過去は美しいんだ、何故?反エントロピーだからさ!

過ぎ去ったアメリカの記憶、犯罪と戦争と冷戦の記憶、沢山の血が流され、それでもその血と屍の上に成り立っているあの大国を、素晴らしい、とだけ礼賛するのは可笑しいのだ。死んだ人間、一人一人の顔を思い浮かべれば、その人達がこの世に存在しない事で、どれだけの涙が流されているか、だけど!

それを飲み干して立つのが現在、崩れそうな屍の上に私達は立っているに過ぎないんだよ、国っていうのは墓とそう違わない、死ぬ場所でしかないのだ。死んで戻る場所、それが君の国だ。それ以外に国の価値なんかない。そんな危ういものの上に私達は皆立っている、死んでいった人、流された涙、全部を背負って立っている、それだけが素晴らしいじゃないか。まるで、酸素が金に変わってしまうようなものだ。

だから皆、お互いを決して理解しあわない。人間が相互に理解しあえる事など絶対に起らない。精神の共有を行わない限り無理だ。だから衆愚は各々に囀るし、権力者は各々に貪る。ただ、人間が完全に一体になる方法が一つだけ、本当に一つだけあるんだよ。

・・・巨大な敵を作ることだ。

それが、「差別」の根幹であり「ナショナリズム」の根幹だ。「ファシズム」の根幹であり「ポピュリズム」の根幹なんだ。

巨大な敵を仕立て上げて、今正に「ツイッター戦士」になっている人々は、気付かないままに差別を行っているんだよ。巨大な敵などドコにもいないのだ。敵はいつも自分の中にいる。悪魔学で言えば、悪魔はそれをもっとも嫌うよ、だって彼ら自身、キリスト教に迫害され続けた者達だもの・・・。

だから最期に言おう、ロールシャッハは正しい。各々であれ、と彼は告げようとした。巨大な敵の空想に明け暮れるな、世界はそんな幻想ではない、と。けれど、世界は幻想に酔う。世界でもっとも売れた本が聖書であるように、人間には幻想が必要なのだ。じゃぁないと、ああ、ロールシャッハ、私達は生きてなどいけないのだよ、自分の人生に、自分の行った事に、自分の仕事に、何一つ価値を見出せないまま生きていくのなんか辛すぎるだろ、でも、貴方はそうやって生きていけ、っていうんだな。

この絶望が、哀しくてやりきれなくて、苦しくて、それでも心地よいのは、この感情が、正しく、メランコリック、だからだろ?

メランコリー、そして終わりのない哀しみ、より。スマッシングパンプキン。

不誠実な奴らを、晒しものにしてくれ、ビリー、私は、この感情を信じる。今夜、今夜!


#映画 #ウォッチメン

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