周産期に起こりえる母親の「ボンディング障害 」とは?
ボンディング障害(愛着形成不全)とは?
子どもが健康 ・健全に育つためには、特定の他者(多くは母親 )への「愛 着 」 を形成する必要です。ですが不適切な養育により、親への愛着の形成不全がみられる子どもの病理を「愛着障害 」と言います。
特定の養育者である親が存在するにもかかわらず愛着形成不全になる要因として、「我が子を愛おしく思い、親として守ってあげたい」と思うといった、親が子どもに抱く情緒的絆の欠如が挙げられ、このような親の状態を「ボンディング障害」とい言います。
特に周産期においては、その障害 は子どもの生死とも関わる問題であり、子どもは親への愛着を築く重要な発達 段階にあることから、予防的介入や治療が必要と言われています。
ボンディング障害が疑われる症状
ボンディング障害は、「妊娠中」にも、母親に併発精神障害がなくても、生じ得ると言われています。また、母性本能を当然のものとする規範から、症状表出は抑制される可能性があります。こうしたことから、妊産褥婦の精 神状態に関わらず、母子関係の観察、妊産褥婦の胎児・乳児に対する気持ちの聴取を丁寧に行う必要があります。
例えば、
①子どもとの情緒的絆が感じられず、子どもに無関心な様子。
子どもを抱く、授乳するなどの養育行動がみられない、子ども が泣いても反応がない等、母性本能が欠如しているように感じられる。
例えば、
②子どもを拒絶する様子。
妊娠中、妊娠を後悔している様子が見られる、おなかを叩く、「産みたくない」と言う等、妊娠・出産を現実的なものとして捉えたくな いような言動が見られる。産後、「子どもをかわいいと思えない」「子どもを育てる自信がない」等の発言がみられ、子どもの世話を拒否する様子が見られる。
ボンディング障害への対応
支援者は、妊産褥婦が乳児との「関係」について抱えているあらゆる心配について、妊産褥婦と話し合い、関係性改善のための情報と治療を提供する必要があります。母子関係に焦点を当てた早期介入には、ボンディング改善 への効果が認められています。
妊産褥婦にボンディング障害が認められる場合、うつなどの精神症状があればその治療を行った上で早期に地域支援に繋げ、母親の負担低減、母子関係への働きかけといった、「環境」「母親」「子ども」それぞれの要因を踏まえた支援を提供します。
保健師や助産師の家庭訪問による妊娠・育児・母子関係に関する情報提供・心理教育、産後ケアセンターやヘルパーの紹介等地域支援の提供は、それ自体による直接的介入効果のみならず、これらの支援者が母親の精神的な安全基地として働くことにより母親のボンディング形成に寄与するという意味でも、重要と言われています。
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