できないにはできない訳がある⁉学習に苦戦する子どもの理解と次の一歩は??
できないには、できない訳がある。子どもに学習の困難さの可能性がある場合、経過観察で問題を先送りにするのではなく、子どもの困り感に気がつき、早期に支援することが大切です。そのために家族や支援者に必要な判断材料をお伝えします。
読み書き、学習に必要な能力とは
視覚や聴覚だけでなく、あらゆる感覚器官と情報を駆使して「読むために必要な力」、「それを文字として書くための力」に変換します。それが読む力と書く力を総合的に学習するための基礎となります。
かなり複雑だと感じると思いますが、私たちが学習する時にはこれらを総合的に使用しています。そのため、何らかの障がいがあるというお子さんにとって、学習に困難さが出てしまうのは、ある意味で仕方がないのかもしれません。
学習の困難さに気がつく(早期発見)
学習に困難さがある子どもは、皆と同じようにできることもあるため努力不足と誤解されやすいです。どの子どもも当初は勉強したいと思い努力しているが、努力が報われない中で次第に諦めていくことも多いです。学習の困難さには様々な程度と要因があり、他の発達障害の合併を伴うこともあります。
<学齢期>
離席、居眠り、不登校、多動やこだわりなどの集団生活が苦手な特性を伴う子どもは学習の困難さがある場合が多いです。そのため支援者でも学習の困難さに気づきにくいこともあります。また、学習に困難さがあるものの対人関係のいい子どもでは、周りが困らないので放置されたり、努力不足と誤解されて叱咤激励ばかりを受けたりすることがあります。
とりわけ主の訴えが学習の困難さでなくても、明らかな原因がない心身症状がある場合、「勉強は好き?宿題は簡単?」と聞いて、その返答の様子を見ておくことも必要です。親子ともにきっぱりと「全く問題ありません」と言える時は学習障害はほぼ除外できますが、それ以外は「読み書きの症状チェック表」を保護者または担任に記入してもらうことをおすすめします。
できない理由の理解を深める
今回は説明を省きますが、WISC-Ⅳ、標準読み書きスクリーニング検査改訂版(STRAW-R)、KABC-Ⅱを組み合わせることで、子どもの困難さを総合的に分析することができます。
学習困難の分類とその要因
➀読むことが苦手な子どもは書くことも苦手(読み書き障害)
文字情報を見て、速やかに音と画像イメージが浮かばない状態のことを言います。
全く文字が読めない子どもは少なく、努力して逐次読んでいます。一度に見える文字数を少なくしたり、文字の形や大きさ、配置を工夫したりすると読みやすくなります。すらすらと読めているようでも、読むことに精一杯で、内容を必要な情報として捉えることが難しい場合もあり、人に読んでもらうことで内容が理解できます。読めない場合、人より多く練習すれば解決すると安易に考えられやすいですが、実はすでに相当の努力をしているのにできないことが問題、ということが多いです。
②読めても書くことが苦手(書き障害)
読むことに困難はなく本を読んで楽しむことはできるが、書くことは苦手な状態です。書くことに努力を要する状態で、正確に書くということは読むことよりも多くの能力と正確性が必要になります。手元の文字を書くことはできても、黒板を写すことが極端に苦手な場合、早く書くのが不正確な場合、漢字が思い出せない場合など、さまざまな要因の組み合わせでさまざまな状態像を示します。
読めるのに書かないと怠けているという評価を受けやすいですが、書くことに注意を向けると、聞いたり考えたりする余裕がなくなり、かえって重要な情報を理解できなくなってしまいます。
③個別ではできるが集団での学習が苦手(集団学習が苦手)
人数が多い集団では刺激が多く集中しにくい場合は、音過敏や聴覚フィルタリングの困難などの要因が考えられ、静かな環境に整備することで落ち着いて学習が進む場合があります。個別検査結果と学校での成績のギャップが大きい場合は、環境要因を考慮する必要があります。
自閉スペクトラム症のマイペースの特性がある場合は、理解し納得し満足するためにはそれぞれのペースで学ぶことが大切です。アクティブラーニングのように、子ども同士で相談し、いろいろな考え方を話し合う方法は、定型発達の子どもにとっては授業に集中できますが、自閉スペクトラム症の子どもでは混乱して不安になりやすいです。勉強は好きでも授業は苦痛という場合は、その子どもに合った学び方を保障する必要があります。
基本的な支援に必要な心構えと考え方
学習の困難さがわかったとはいえ、支援したからすぐに良くなるのではなく、とても時間がかかるので根気強くお付き合いする必要があります。基本的な考え方として、「部分的にできるところから教えて全体を捉えていく」か、「概要や概念という全体像から教え、細かな部分を教えるか」という大きく分けて2通りあります。どちらにせよ、教えるときには分解することが大切です。
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