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月の翳り、星ひとつ。繭期についての省察

 月の翳り、星ひとつってそういうことね……。

 納得と、禍根が深まる本作も元気よく感想を残していきましょう。
 真相に近づくにつれて予定調和の愛憎を摂取しすぎて、私はフォアグラになりそうです。

 LILIUM→マリーゴールド→TRUMP(TRUTH/REVERSE)→COCOON(月の翳り/星ひとつ)
 と見てきました。以降はこちらの作品とネタバレしまくりで感想録を残していくのでご理解の上お読み進めください。


クッション代わりの前回までの感想↓

 



感想


  
 視聴直後の感想がこうなっています。


 月の翳りから見たのですが、予想と一列ずつずれてましたね。てっきりアレンとクラウスの話→ソフィがギムナジウムにやってくるまで、くらいで分割されたものなのかと考えていました。実際は星ひとつの方はTRUMPと同一の時系列のお話でしたね。描かれるキャラクターの視点だったり、月の翳りで得た情報をもとに見ると見え方が変わるというやつのようでした。

 この順番で見てくださいの方がチラホラいらっしゃるのは、おそらく星ひとつにこれまでの要素が集約されて見られるようになる仕掛けがあったからなのだろうと予想してしまいます。うーん、私はまだ余地を楽しみたいので情報の確定を急ぎたくない気持ちでいっぱいなのですが、本作で大体の筋が見えてきはじめた頃合いです。

 と、同時に。舞台における物語の見方の練度が低いという自己の課題も見つけてしまいました。
 活字と違って人間の動作は意図して行われたものなのか、癖なのか、その時の気分なのか、感情が表に現れたものなのか。考慮する観点が多すぎて、考えるときの手札にしづらかったのですが、星ひとつはTRUMPでの語られなかった物語の余白を描いた作品だったのでそういうこともしてくるのかと、あたふたしています。まだメインストーリーを読み終えていないのに完結後の別冊ファンブックのアナザーストーリーを先に読んでしまったような気分。

 舞台に関しては滅多に見ないのでこれから頑張って色んな作品に触れるというよりも、全部あらかた見終わった後に、観劇に馴染みのある方の視点をお借りして感想を読み漁ることで補填していこうかと思います。
 私がTRUMPシリーズに手を出したのも演劇女子部というモーニング娘。さんが参加されている舞台作品で推しの小田さんが出演されているものを全部見終えてしまった流れから始まっているので。推しが出ているから見てみるか、の不純な動機からちゃんと舞台に触れたペーペーは残念ながら観察眼が鍛えられていないのです。

 ですがそれでも重大なワードやヒントを手にすることができたので、深まった人物像を見ながら整理していきましょうか。
 
 

人物整理

 

アンジェリコ

彼は自分が孤独ではないと信じていた

 前回見た『TRUMP』で私は彼のことをエリートならエリートらしい矜持があって欲しい。悪事を働く時に美学も知性も感じられないのは好みじゃないと言いましたが、この頃はまだ純粋さが残っていたんですね。
 貴族である傲慢さももちろん残ってましたが、ノブレスオブリージュなんて言ってそれと同時に責任も抱いていたようです。

 ラファエロへ向ける愛は倒錯的で、友愛というよりも執着に近い形を取ってるように見えます。ラファエロを否定する者はまるで自分のことを言われたかのように攻撃的になります。「潰してやる」の発言なんて阿久津仁ぶりに聞きましたよ。
 なぜこうなったかというと、ラファエロが全ての分野においてアンジェリコを上回っており、特級貴族であり完璧な存在として偶像崇拝することでアンジェリコはラファエロのことを自分と似た境遇に重ね合わせ、同一視していたからです。ウルがソフィを同じダンピールだと知って『君は僕で僕は君なんだ』なんて言っていましたが、アンジェリコの場合はラファエロが同じ特級貴族というところから『君と僕は同じだからね』なんて言いましたね。

 それが覆されるようにどちらかしか助けられない二者択一でラファエロはウルを選び、アンジェリコの愛着は、愛憎を伴った執着へと変容していくことになります。

 このあたりの精神的な移行はフロイトの思想が頭にあると理解が深まる気がしているんですが、どうなんでしょうね。実際に意識されて脚本になっているのかまでは知りませんが、ちょっと齧ってるだけでなんとなくわかったようなふりはできそう。
 イド、自我、超自我は繭期と関連づけると面白い見方ができそう。
 月の翳りでメインに扱われた高貴なる五家は防衛機制で見るといいでしょうね。

 アンジェリコはラファエロとギムナジウムで再会しましたが勝手な思い込みが激しいのは繭期になったからではなく、昔からだとラファエロは語ります。
 今思うと再会の握手のシーンもアンジェリコが手袋の衣装なのは後に敵対するのを示唆していたんですかね。
 ラストシーンの『昔の話だよ 泣き虫アンジェリコはもういない』は、ラファエロと共に過ごした幼少期の優しい思い出や記憶を捨てた心境を表しているのでしょうか。ラファエロに対する憧憬を捨てて、弱い自分から脱却する宣言と取れます。
 その方向がアレならちょっと待ってくれなんだよな。

 アンジェリコはラファエロと違い、フラ家の生まれであることに否定的ではなかったですし、ラファエロと自分を一緒くたに見ていた。孤独であることに気がつきたくなくて、誰かの何かであることに従順だったように思います。そこからアンジェリコ的にはラファエロの裏切りを経て変わったように見えても、結局自己を見つけられずにイニシアチブで無差別な集団を作ったところで「最後まで孤独に生きるしかなかったんだな……」と寂しくなっちゃいましたね。
  
 

ラファエロ

彼は宿命に囚われ続けていた

 ラファエロの宿命はデリコ家の長子ということですね。家督継承者としての振る舞いを父であるダリから求められ続けます。

ラファエロ ウルを守るんだ

 一見これだけを聞いてしまうと、ウルの秘密を守るんだと捉えてしまいそうになりますが、星ひとつまで見るとウルを守れるくらい強くあれとラファエロにも願っていたのでしょうかね。ダリの回想シーンで女性の声がこう言っていました。

ダリ、ラファエロをお願い
あの子があなたみたいな立派な貴族になれるように

 おそらく妻の遺言でしょうか。それを叶えるために過度にダリはラファエロにデリコ家に恥じないような振る舞いを求めました。我は守護者なりがここでも効いてきますね。ですが、ウルには優しくラファエロには厳しいその態度にラファエロは自分自身への愛を疑い求めるようになります。父の言いつけ通りにウルがソフィと関わることを咎めれば自分の寿命を持ち出して『これで兄さんは父さんを独り占めできる』なんて事まで言われてしまいます。不憫。

お前を守らないとお父様に失望されてしまう
だから俺はお前を守らねばならない

 ラファエロの行動は父に認められたいがためのものだった。そう思ってしまいそうになるこの発言。実際にウルは先にラファエロにぶつけた反抗期の言葉からそのように感じてたかと思われます。
 しかし、ラファエロは胸の内をこう吐露するのです。

この手を伸ばした先で俺は何を望む
そうだ俺はウルを守れるくらい強くありたい
それが俺が望む俺だ
お父様に言いつけられたからじゃない
赤ん坊のお前と初めて引き合わされたあのとき
長くは生きられないダンピールとして生まれてきた不憫なお前を守りたいと思ったんだ
いつも泣いてばかりいたウル
俺がこの手でお前を

 ちゃんとウルをラファエロは愛していたんですね。お兄ちゃん……。
 今回の話で個人的にいちばんの収穫はデリコ家の繋がりを、愛を感じられたことです。
 だけれども、ラファエロは愛されているはずの父に失望されたかもしれないと想起しながら炎に焼かれるのキツくないですか……?ダリ、ちゃんとラファエロにも愛ある言葉をかけてやって……そうじゃないと救われないよ(私が)。
 
 

ディエゴ

彼はその自由が偽りだとわかっていた

 月の翳りでは彼が最も運命に翻弄された人物でしたね。そして執着や依存を深めるヴァンプたちに自由の概念を与えんとした人物でもありました。
 ギムナジウムという閉鎖的な世界で、繭期という自己に感覚が向きがちな症状。ディエゴの強さはルールという檻の外から外れてるからこそです。

この手はなんだって手にすることができる
俺たちが何者であるのかどんな未来が待っているのか
今日という1日が生まれては死に死んでは生まれる
俺たちの未来は夕暮れを幾重に重ねた空の彼方にある
いつかそれを手にする時がきっとくる
俺たちの両の手はなんにだって届くんだ

 この鮮烈さにラファエロは憧れすらします。彼の持っているように見えた自由が、自分のこれまでの人生になかったものだったからですね。
 『夕暮れは今日という1日が死にゆく景色だ』とディエゴは言います。そして夜を迎えようとするときに夜空にはこう答えるのです。

星は死そのものだよ
月はそれを悲しんでるんだ

 タイトルのテーマを回収するキーパーソンでしたね。これによってこれまで見てきた星に手を伸ばす動作は死を掴もうとする行為としても見ることが可能になりました。
 今回はディエゴくんの持っている情報が見逃せないものばかりになっています。

 養護院、ダンピールたちの孤児院の存在。

俺のいた養護院よりましか
あそこにはあいつがいた
6つも年下のくせにいつも冷めた目で俺を見てきた
ソフィ・アンダーソン
俺はあのガキの目が嫌で養護院を抜け出したんだ

 ソフィと同じ孤児院にいたという事実が発覚します。孤児院、そうか。こういう場合って孤児院が大きな組織の管轄機関でグルになって人体実感とかしているパターンが多いんだけれども、それはいちばん偉い人が全員のイニシアチブ握ってたってくらいで済んでいるんだろうか。
 なんにせよ、ソフィをアレンの元へ誘導したと思しきところでアウトですね。そして16年前、ネブラ村、焼失事件。ふむふむ。焼失、となるとTRUMPのイニシアチブによって同族殺しが行われた可能性も浮上してきました。
 そして星ひとつの序盤で出てきちゃったあれとかね。ダミアンストーン……グランギニョル。本当に情報過多なので後で別個に整理しましょう。

 あとはグラント家侵入問題ですか。
 イニシアチブを握って養子にするよう命じていたんですね。初めの『自由が偽りだと知っていた』も、ディエゴはグラントの血を引いていないし、ましてやダンピールだった。ということは自分の命が短いことも承知の上でギムナジウムであの振る舞いをしていたわけです。イニシアチブによってこうありたい振る舞いをしてきた後に、迫り来る現実から逃避の行動がティーチャードナテルロの囁きに嵌って永遠の繭期を望むようになると。
 ディエゴが得てきたものは全て偽りの上に成り立ってきたもので、それをわかっていたからこそ自由な存在であろうとしたんですね。
 イニシアチブ発生の条件の解明に大きく役立つ情報でしたね。星ひとつの方で複数のヴァンプに噛まれた場合は階級が上の方が強く作用するのは分かりましたが、ダンピールが上位貴族を噛んでもイニシアチブを握られるんですね。階級や年齢はイニシアチブの発動に関係ないのか。それか、グラントが全て悟った上で騙されたフリをしたかですけど、ディエゴが強制収容クラン通称ヘルクランに送られた時に記憶を失ったか勘当をしているのでその線は望みは薄いのか。

 
 

エミール

彼はこの世界を希望だと言った

 やはり注目したいのはラファエロからウルだと思い込まれたことです。なんでまたそんなに確信して言い切ったんだろう。この感じ、クラウスがソフィにいい匂いがするストーカーしていた時のアクションと重なります。血の匂いとかそれ系でウルを感じていたんですかね。

 ……っていう読み方をさせられているような気がしてならない。

 なんかこれは感覚的な話になってしまうんですけど、アクセントとして置かれた物に引っかかるように作られている感というか。お話の構造だけ見ると、月の翳り、星ひとつでこれはあえてだと思いますがラファエロとウルが重なるようなセリフがあります。好きでデリコに生まれたわけじゃないってやつ。そして対立構造を見ていくと、ウルがソフィに君さえいなければTRUMPは僕を選んでくれるという考え方が、アンジェリコがウルにお前さえいなければラファエロは俺を選ぶの思考回路と酷似しているんですよね。

 連作ということでそうしたのか、本当に兄弟関係の印象づけをしたかったのか。
 だとするならば、アンジェリコとラファエロが幼い頃から交流を持てていたのは、親が血盟議会の幹部同士だからだけでなくウルとアンジェリコの方にもルーツがあって……のような可能性もあるわけですよ、私としては(飛躍しすぎか)。まあ、ここまでされちゃうと血縁関係貞操観念どないなっとんねん。

 エミールくんに話を戻しまして。

 エミールは繭期の時と抜けたあとのギャップがありましたね。そして繭期が終わったあとのエミールにラファエロはウルを感じなかった。ここら辺は繭期の謎です。もう少しだけ詳しくと言いたくなりますけど、繭期の構造について最も突っ込んだ情報くれそうなのはこの作品だったんだよな。エミールとウルに近しい何かが存在していたのか、今後二人が出てくる作品があるのならば意識して見ていきたいものです。
 
 

ジュリオ

彼は全てに退屈していた

 まさか『退屈すぎて涅槃像』がここでも聞けるとは……!!感動でした。いちばん嬉しかったかも。

 ジュリオは共感覚の持ち主でしたね。元々そうだったのか、繭期で感覚が研ぎ澄まされたからそうなったのかまでは定かではありませんが、人に色が見えるタイプのようでした。
 アンジェリコ、ラファエロ、ディエゴは3人とも真っ赤で、いろんな赤が混ざり合った赤らしいですね。その理由は心が血を流しすぎ感情が赤く染まっているから、らしいです。3人とも自分の本来の心を殺して何かを叶えようと葛藤がありました。反対にエミールは色がないようです。色がないってどういうことだろう。
 キャラクターとしては状況判断が冷静で、五家の中では一歩引いた見方をしていたように感じます。

生きることは退屈だ
でも残念なことに死ぬことはもーっと退屈だ

 ここら辺の判断が正常なところがいい。
 
 

グスタフ

この傷はあの日の恥辱の烙印スティグマだよ

 いや厨二病。そう思ったのは自分だけですかね。
 そしてスティグマの言葉で私は沸き立ちましたね。LILIUMで送葬終曲「聖痕《スティグマ》」という曲をリリー・シルベチカ・紫蘭・マリーゴールドで歌っているんですよ。小田さんご自身も思い入れのある楽曲のようで、バースデーイベントで折に触れて歌われていたりします。あ〜いい。

 ごめんだグスタフ、君の話をしよう。

 感情としては変なやつに目をつけられて苦労するな。だったんですが、過去の自分の若気の至りを認め、口に出して謝罪する。これをしただけで好感度が爆上がりですよ。
 なんせ、この世界に出てくる大人たちはまぁー思っていることを口に出さない、伝えない、自分で背負いこむ、なんだってんだ!
 ちゃんと相手を見たコミュニケーションを取れているキャラクターは貴重なのでこれからも可愛がっていきたいと思います。
 
 

ミケランジェロ


 まともな大人が限りなく少ない中での良心ですよ……。ミケランジェロ、好きです。

 あとヴァンプの喉の渇きを抑える血のアロマ。この情報をくれてありがとうとなりました。地味にこの情報嬉しかったな。臥萬里くんだったりウルも使っていた血の香水もあるし、開発者とか開発動機とか気になる。
 
 

ドナテルロ


 グスタフ、ミケランジェロ、ドナテルロ。この3人の繭期時代が今回のCOCOONの事の発端みたいになっていましたね。
 初見では進撃のハンジさんみたいなことやってんなぁだったけど、子どもを巻き込んで違法薬物に手を染めさせるのはいただけないですね。

 きっかけは18年前のグスタフの繭期を目の当たりにしたことのようでした。
 繭期の感情と衝動に抗うことなく自己を保つ。理性的なドナテルロからしてそれが「美しい繭期」に見えたようです。

私は少年のままそこから抜け出せずにいた
あの繭期が永遠に続けばいいと思っていたんだ
あの月のように美しい繭期が
たんだん 血で翳ってやがる

『俺は繭期を肯定する』って言ってたくらいだし、モラトリアム極めてますよね〜。
 繭期愛好家ってこの世界にも裏社会とか危ないお薬とかあるんだな。まあ、衝動を抑え込まなくても許されるのは大人からしたら羨ましく見える物なのでしょうかね。現代社会でもお酒の力に頼って素直さを出したり、欲の免罪符扱いしてる人もままいますし。

 ただ、ドナテルロが呈した繭期の仮説はかなり近いところに来ていたと思います。そこだけは概ね同意です。
 精神的な繋がり、感受性が最も開かれているからTRUMPの思念をキャッチしてしまう。共同幻覚を月の翳りで見たのはそのせいかもしれない。繭期が強く現れる者とそうではない者の違いはTRUMPからの血の濃さとか、思い入れの深さとか。その視点を持つと結びつき大渋滞になりそうですが楽しそうです。もうすでにどなたかやってると思うので後々見たい。
 
 

ウル


 月の翳りでエミールを演じていた方が星ひとつでウルをされてましたよね?これは意図されてそう〜。なんでだ〜。
 とまあ、追々わかってきそうな疑問は一度置いておきましょう

 大事な要素はウルにはイニシアチブが2つ、生まれて間もなく刻まれていたということです。ほんとどこぞのポッターくんかよ。

 おさらいとしてイニシアチブは高位の者の方が強い効力を持つことがラファエロくんで証明されているので、おそらく噛んだヴァンプはダリと同等の存在(打ち勝ったのでやや低い?)であることがわかります。
 なんでわざわざ赤子を噛むなんてことをしたんだ。ヴァンプと人間の子どもで、愛した女性を出産で失ったからその恨みとか?だとすれば父親の器が小さすぎる。ペットボトルの蓋ぐらいしかない(ここまで勝手な妄想でディスってます)。

 だけど、父親に愛されていて、本当によかった。
 ただ、生きてるときに言わなきゃ伝わらないよ。
 
 

ソフィ


 今回はソフィというよりもソフィ周りの情報が増えましたね。いろんなところから目をつけられている(広義)。
 追加で描写されたところだと、ソフィがウルに自分の出自を明かすところが大事でしたね。これによってなぜウルに友達じゃないと頑なだったのに納得感が生まれました。ウルのことをたったひとりの友達だと言うにはちょっと明かしているものが弱く感じていたんですけれども、これで腑に落ちましたね。
 
 

臥萬里


 付け足された彼の情報結構大事でした。拾っておかなきゃ。
 人間のヴァンパイアハンターくらいの個性だった萬里くんでしたがそこに14年前のネブラ村の生き残りという生い立ちが見えたことでソフィ・アンダーソンとの繋がりが強固になりました。匂わせ人間が、本物だったパターン。やっぱりいろんなことを知っていたからこそ匂わせられていたんですね。危険が多い監視者に自ら立候補するまででしたから、何かしらの因縁が見えます。

 ここは人間側の繋がりを疑うのが妥当ですかね。
 ソフィを助けようとして、人間なことを踏まえるとイニシアチブではない約束や宿命で行動していたってことになる。よほどソフィと関わりある人、もしくは関わりある人のことを慕っていそうですね。血縁者……までいくのかな。うーん。もうそうなると収拾つかなくなりそうだから、師弟とかそっちの方面だと嬉しいですね。ヴァンパイアハンターの同僚とか、憧れの先輩なんかでも。
 そうだこれがあった。

ソフィ・アンダーソン 姉さんに似ている

 この辺りは深掘りしていることでしょう、どこかで(まだわからないことをあることのように語るのはいけません)。
 
 

クラウス


 クラウスは舞台上にこそ多く姿を見せませんでしたが、人物理解の進度としてはなかなか収穫がありました。

いいですかアレン
あの空に浮かぶ星を手にできないようにルルミナも手にすることはできないんです
アレンあなたは手に入らないものを欲しがりすぎる
私には 欲しいものなどありません

繭期のあるヴァンプより

 そうだ。ご親切な方にメリーベルがルルミナに改名されたことを教えていただいたんだった。これはメタ的な事情なので考えるときに意味を含まないものして見ます。これ知ってるのと知らないのじゃだいぶ違うのでありがたい。今後はルルミナ呼びをしていきます。

 クラウスは手に入らないものがあるが、それが得られないものだと長い年月をかけて諦観してしまっていたんですね。死です。だからこそアレンが欲しいのにそう言えなくて、結果ソフィを捕まえたと。

彼は私にとってひとつの星なんです
この手に届くことのなかった星です
100年の時を超えてアレンが巡り合わせてくれた
もう誰にも奪わせはしない

 ソフィってクラウスのアレンの代わり、FARCEでTRUMPの代わり、ダンピールで人間ヴァンプどっちでもない。本物になれない人生すぎる。せめてせめて親からの愛情は偽りなく受けていて欲しいと願う今日この頃ですよ。

もうずいぶん前のことです
ある人が私に言ったんです
繭期とは私の心の写し鏡だと
だから私が私自身でいるためには
ここは必要な場所なんです

 あとはここです。初めアレンにこんなこと言われてたっけ?と思ってたんですけれど、文脈的にクラウスがTRUMPだとわかっていそうな発言ですよね。
 そしてこの世のヴァンプで最も長生きしている彼がもうずいぶん前って言ってるんだからもうずいぶん前なんでしょう。作品タイトルだけ見たヴェラキッカというやつが怪しいかもなと踏んでいます(と言っても30%くらいだけど)。

 ヴラド機関にあなたたちはニコの意志を継ぐものなのですからって言ったり、たくさん教えてくれてありがとうねとなります。だけどちょっと情報量が多すぎて整理しきれなくなってきたかも。
 
 

ダリ

 イス人間って手配してたんですね。バイト?

 とまあ、そんな新事実をさておきしなくちゃならないくらいにダリ・デリコについて言及すべきところが多い。

死ぬことのできないあなたに変わって自ら命を落とすという結果となった
彼らヴァンプの命運はTRUMP造物主であるあなたと共にあったんだ
血盟議会が結成したヴラド機関は何世代にもわたりあなたを監視し続けてきた
あなたの心の平穏がヴァンプ世界の平穏を意味したからだ

 血の戦争が起きたFARCE OF TRUMPについてこう語りましたが、血盟議会の下部組織がヴラド機関で目的はTRUMPの心の平穏を保つためというのがわかりました。ちょくちょくヴラド機関出てきてたので、これは助かりました。
 そしてヴラドってヴラド三世から取ってきたんですかね?(こういうのにすぐ気づくときにFGOをやっていた恩恵を感じる)ちょっと怖いなぁ。今回の血が流れるときに花びらが舞うあの演出が好きだったから、次見る話が串刺しとかだったら落差がひどい。

 諸々まとめると、TRUMPの心の平穏を保つためにヴラド機関は存在し、創設者はニコなる人物だということがわかります。

 それに対して、死することのできないTRUMPに代わり死を捧げるのがダミアンストーン。

イニシアチブによって古来より引き継がれる人格だよ
あいつらは思想や知識を植え付けられて自分がダミアンストーンという人物だと思い込まされている
いったい世界中に何人のダミアンストーンがいるのやら

 影武者みたいにダミアンストーンが跋扈していることから過激派組織っぽいですね。
 正直こういう宗教組織みたいなのに触れるの神経を使うから大っぴらに出てこないでくれと思ってたんですけど、やっぱりきちゃったか。
 ここまでくると、明らかすぎるくらい明らかだったキリスト教関連も拾っていった方がいいんでしょうかね。いや、私は信徒ではないのでやめておきましょう。本やアニメ、ゲームのモチーフになりすぎて手を出しているにすぎない思想が浅い人間の発言を不用意に電子の海に放流するのはストップがかかる。

 このTRUMPの平穏VS原初主義TRUMP崇拝の対立はもうグランギニョルってやつで描かれているんでしょうね(まだ見てないですネタバレも回避できてます)。この順番で見てくださいの方たちは、きっとこちらのエピソードを先に知っていた方が月の翳りがわかるよ、ということだったのでしょう(確信に近い憶測)。グロすぎたらどうしようと怯えてましたが、そんな話だったら観られそうです。

 あとは家族問題。私は今回ので、どうしてもダリに幸せ掴んでもらいたくなったのに、守りたかった星を失ってしまって……。このあとのダリのことが心配で胸が痛いよ。

俺もお前と同じだよ
かつてひとつの星を守れなかった
だから俺は決めたんだもう誰も失わなくて済むように今度こそ守ってみせると
ラファエロもウルも俺が守る

 星三つも失ってんじゃん……。恥晒しは俺かなんていうくらい自罰的なのに、イス人間侍らしてまで陽気に振る舞ったり見ていて痛々しいったらありゃしない。本当に想っているのに愛する息子たちがギャグにしか聞こえないのはこの行いもあると思う。伝わるように伝えてくれよ……。

お前には2つのイニシアチブがあった
ひとつは死に怯えて生き続けろという絶望の呪いだ
もうひとつはその呪いに負けるなという願いだ
負けるな 負けるな 負けるな
そう願うしかなかった
ウル ソフィアンダーソンはきっと
お前にとってのひとつの星だったんだ
お前のその手は星に届いたはずだ
だってソフィはお前を守ろうとしてくれたんだぞ
この首の咬み傷はその証だ
だから誰であろうとお前の死を嘆かせたりなどしない
いつも泣いてばかりの赤ん坊だったお前が よく頑張った
お前は負けなかった
これは絶望なんかじゃない
ここにあるお前の死は希望なんだ

 この言葉を生きているときにかけてやってくれ。
 同じくらい温かな言葉をラファエロにもだよ。

 そして冒頭のこのセリフ。

そうかあの匂いはスーの腹の中にいたお前の匂いだったんだな
生きることは呪いかウル
お前の父親は赤子のお前に呪いを残した
ヴァンプと人間の混血ダンピールのお前は
これから死におびえ続けて生きていかなくちゃならない

 お前の父親は、でダリがウルの父親でないことがわかります。
 じゃあラファエロとウルは血縁関係が一切ないことになりますね。ラファエロ……お前ってやつは。

 ここの関係図はぐちゃぐちゃなのでいずれ整理したいところではあります。もうそれも明かされた上での、だったのかな。スーって人名出てきてるから、こちらとしては「誰だよ」ってなっても、順番で見ている人には冒頭で引っ掛かるようには書かないと思うんだよな。

 ダリが息子二人失った後も、ウルにかけた希望の言葉が胸に残っている。そんな姿をどうか、どこかで見られますように……死ぬな!負けるんじゃないぞ!
 

今後の展開・期待

 さて、今回COCOONを見て大きく三つの謎解きルートの分岐が生まれました。

①ヴラド機関とダミアンストーンをめぐるグランギニョル

 これはもうグランギニョルを見たら解消できそうですね。
 もっと言えば、血盟議会にいるダリの若い頃とかも見られそうなので、デリコ家やスーというウルの母と思わしき人間の深掘りもしてくれそう。ウル父親であるイニシアチブを刻んだヴァンプの正体も教えてくれ。

②ネブラ村消失事件

 萬里くんとソフィが関係者らしい。14年前ってことは萬里くんも幼いはずなのでヴァンパイアハンターにはなってない頃と予想。だから人間の村なのかな。
 そして些細なことで書くタイミングを失っていたのですがTRUMPのときはガ・バンリ表記だったのに、星ひとつでは臥萬里になったのは理由があるんですかね?

 あとはソフィの家族のことが知れるかもしれないチャンスが到来しました。
 これまで見てきた中で、どれも名前に意味を込めたキャラクターばかりだったじゃないですか。主人公の名前の由来、気になりません?ソフィ自身は父も母も死別したと聞かされて知らないようでしたけど、もしネブラ村で暮らしていたならそこが語られてもおかしくないはず。一番欲しい情報かも。期待してます。
 多分こっちはスペクターになるんだろうか。

③クラウスと繭期

 まあ先に挙げた方でもクラウス出てきそうですが、心の鏡って言ったの誰?がそこそこ大事な気がしてるんです。アレン以外でちゃんと言われた言葉を覚えているというのが貴重なので。
 まだ見てないので残りがヴェラキッカと黒世界なんですけれども、この時系列からさらに過去に向かうなら消去法でヴェラキッカなんですよね。
 家名ということならやはり特級貴族に近い存在だと思うんですよ。
 これは考察ではなく個人的な期待なんですけどね、繭期という言葉がまだ生まれてないくらい昔に行われたクランの起源の話だったら面白いですね。
 前にも話しましたけど私はこのTRUMPシリーズの大きなテーマが家族、血の縁だと感じているので。まずは家庭という箱庭で起きた精神異常に着目するところから始まっていると嬉しくなります。
 これはクラウスが不老不死という存在で家族や血の繋がりに意識が希薄になり、その不安や孤独感、不信感なんかが血族全体に悪い方向に作用していると考えたら面白いからです。これは根拠ではないです。個人的なストーリーとしての好みの問題です笑


 黒世界は鞘師さんだからリリーの話なんですよね。
 LILIUMでサナトリウムという永遠の繭期に閉じ込められた彼女でしたから、どこかに身を置くよりも旅に出そう。朗読劇という性質も加味すれば筒井康隆の旅のラゴスのような、時雨沢恵一のキノの旅のような。オムニバス形式ですかね。
 それとも黒世界から黒百合の花言葉『恋、呪い、復讐』を描いててもいいですね。いやよくない。私は、リリーにシルベチカを忘れて欲しくないんだ……ウッ(発作です)。
 もっと妄想を膨らませると、まだ終わらない繭期の状態を黒と例えた線、初めて誰かを殺めて時間が経った黒を表した線。パターンはだいぶ考えられるので楽しみにしています。

 

おわりに

 長い、長すぎる!!
 作品を積み重ねるごとに伸びていく文章量。追いついてません。

 COCOONを終えて見る順番を
グランギニョル→スペクター→ヴェラキッカ→黒世界
 にすることを一度考えたのですが、あえてこのまま行きます。なぜならグランギニョルがマリーゴールドで言ってた少年少女失踪事件が絡んでいる可能性が高くなったからです。シルベチカ指数が上がったので取っておきます。

 ここまで書いて12,000字を超えました。
 シルベチカ……あなたの痕跡を私はまだ探し求めているよ……。

 そして私、ようやくみなさんのおっしゃってくださる繭期を理解しました。村上春樹の小説が好きな人をハルキストと呼ぶように、TRUMPシリーズに傾倒していることを繭期って呼んでるんですね?
 自分が繭期になるかは大枠を把握してから考えてみます。
 と、こんな感想を書いて全く信じてもらえそうにない発言を残して今回はこの辺りにしておきましょう。

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