コミケはもっと臭くなったほうがいい。

夏コミに参加した。
1日目は一般参加で友達とコスプレ。
2日目はサークル参加。

私は小学校3年生くらいからコミケに行くようになった。
たしか15歳のときに初めてサークル参加をして二次創作漫画のコピー本を作った。アナログで描いた。

夏は暑くて懲りたので基本冬にのみ参加。
何年かコミケから離れていた時期もある。
活動に興味を失っていた。

同人誌で食っているプロはあのころからいた。
今では「まんがの活動を継続していればよかった」とよく思う。

しかしながら、昔のコミケは今よりも商業化されておらず、「ただコレが好き」という、純粋な熱量と狂気に満ちていた。
子供のころ、現場でその熱に触れて、「私もやってみたい」と思い、すぐさまサークル参加したのだった。

(その頃のコミケの雰囲気をリアルに描いているまんがといえば、「こみっくぱーてぃー」である。「げんしけん」はちょっと大学生活寄りなので)

昔、コミケに行っていた理由は同人誌が主で、コスプレには全く興味がなかった。
コスプレは大人になってから始めた。
コスプレを始めたきっかけはバイト先の友達に誘われたからである。
あのとき誘われなかったら一生アニメの格好はしなかったかも知れない。
そしてややこしくなるが、友達が私を誘ってくれたのは、コスプレが芸能に密接だったからだ。
コスプレイヤーはアイドル、という時代になっていたからだ。

いつのまにか、純粋な趣味のレイヤーは少なくなり、売名目的の商業レイヤーや趣味と実益を兼ねたレイヤーが増えていた。(私も商売をしているのでそれに当たるだろう。)

売れたレイヤーはいつしかウィッグを脱ぎ捨て雑誌でグラビアをやるようになった。
バズり合戦から過激な露出や問題行為、流行りジャンルの食い荒らしも増え、違法業者の盗撮がはびこり、掲示板やTwitterに写真を晒され容姿を叩かれる。

このへんで、仕事に集中したい気持ちもあり、界隈からいったん身を退いた。

数年後となる今夏の夏コミ、友達と一緒にちょっとだけコスプレ参加することになった。
浦島太郎で更衣室へ。
更衣室がかなり綺麗になっていて、テーブルと椅子があって驚いた。

そしてレイヤーは、どの子もみんな「顔整い」であった。
顔整い以外は、この数年で淘汰されたのかも知れない。

そんな中、崩れた顔を体を引き下げコスプレ広場に繰り出すと、可愛い女の子の群れの中に、女装したおじさんがいた。

おじさんは、誰にも見向きされていなかった。

私はそのとき、「コレがコミケだ。おじさんこそが、コミケの魂だ」と感銘を受けたのだった。

商業化の闇のなかにかき消され薄まっていく、コミケが持つ「好きの狂気と熱量」の臭さ。

誰かのためなんかじゃなく、頼まれなくても金にならなくても、いや金を払ってでも俺はコレをやるんだという、本気のマスターベーションから放たれる精液の匂い。今や懐かしいくらいだ。

私がかつて感じたあの本気の臭さが今のコミケにはない。そしてその匂いを薄めたのは、私のような人間たちだ。

Twitterでバズりまくっている同人作家のサークルを見かけた。
サークル主は21歳くらいの見た目のイケメンで、狭い1スペースを、これまたバズりまくりの女性コスプレイヤーとシェアしていた。

その人の作る作品の価値には何の関係もないのに、この事実だけで、なんというか、私はガックリと肩を落としてしまったのだ。

こんな女と上手くやれる若いイケメンが、同人でバズっているなんて……。
本音を言えば、作者は、二次創作漫画でしか人と繋がれないような、キモくて臭くて近付き難い中年の男性であって欲しかったのだ。

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