やめておけば、よかった06
06 クズ親、毒親
「へぇ、普通なら児童相談所に相談するけど、18歳だと無理なのか。18歳以上はこども人権110番か保護シェルターに相談か…」
今の時代、スマホで検索すれば答えがすぐ分かるからいい。レイくんと別れてから早速調べてみた。連絡が取れる時間帯が昼間だから、昼休みにでも連絡してみるか。
それにしてもあの生傷、生い立ち…私がぬくぬくと生きている時に、あの子はツラい思いをしていたんだ。知ってしまった以上は知らないふりは出来ないよな…。
スマホを見ながらソファーでダラダラしていると、メッセージが一通…。ゲッ、何でコイツから連絡が来るのよ…。
元カレ、不倫相手、二度と会わないと決めていた男、藤原…。
【明日、会える?】
「会えない、会わない。もう連絡するな」
お腹の中に赤ちゃんがいるのに、平気に連絡してくるとか本当に屑過ぎる。けど少し前の私だったら、この誘いに乗っていたかもしれない。
「レイくんのお陰かもね」
あの子を見ていると間違ったことが出来ない。今まで悪かった分、徳を積むつもりで善意を尽くさなければ。
「って、思って、張り切って頑張ったのに!早速すっぽかされたし!」
今日は調べたり連絡したり、色々進展があったから嬉しい報告が出来ると思ったのに。出鼻をくじかれた気分。あの子に限って約束を破るとは思えなかったけど、それは私の思い込みだったのだろうか?
「むぅ……今日はケーキ買ってきたのに」
深夜二時にハイカロリーモンスターだけど、食べたことないだろう贅沢品を上げたくて。所詮、彼も人間だったってことだろう。まぁ、こんなの約束を破ったうちにも入らない。
「ーーレイくん…?」
頬杖で悪態ついている最中、息を切らして来た彼の姿が。いや、それより顔が、腕が…痛々しく腫れていた。
「遅くなってゴメンなさい、ちょっと抜け出せなくて」
「いや、そんなこといい!それよりその傷…!」
どんな暴力を受ければそんな傷が出来るの?瞼が切れて酷く腫れ上がって、綺麗な顔が台無し。見ているこっちが苦しくなる。
「ーー昨日、金を取ったのがバレて…。戻すのが遅れたから、仕方ないんです」
キミが悪いんじゃないから謝るな、バカ。
「今まで顔だけは殴られなかったのに。客がとれなくなるから」
「……客って?」
「父さんが連れてきた人。その人達の言うことを聞いたら喜んでもらえるから」
この子は、不条理が当たり前で生きてきたんだ。全てはお父さんで出来ていて、お父さんの為だけに生きて、傷ついて、裏切られて、だからこんな苦しそうに笑うんだ。
「佐藤さん?」
私は思わず彼を抱きしめた。今まで指一本も触れるつもり無かったのに、無意識に抱き締めていた。
細かった。少し力を入れればポキンって折れてしまいそうなくらい、か弱い存在だった。それなのにこんなに痛めつけらて…。
「守って上げるから…」
この子は誰かが救いの手を差し伸べて上げなければいけないんだ。こんな気を遣わせた笑みを作らせたらいけないんだ。
……To be continued