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橋本健人、ようこそ新潟へ!:2024 J1 第27節 アビスパ福岡×アルビレックス新潟

これは新潟の素晴らしいサッカーだった。圧倒的なスタイルを見せつけた前半と守備を徹底してセカンドボールへの執着を見せつけた後半。素晴らしすぎる俺たちの新潟のサッカーの魅力全部入りという試合だった。福岡のハーフタイムの修正をさらに上回った新潟だったし、磐田戦のやらかしを即時修正して2試合連続で守備のシステムと意識を変えることができる松橋監督を始めとするクラブスタッフも本当に素晴らしいし、それをピッチの上で体現するプレイヤーのみんなも本当に素晴らしい。

そんな素晴らしい試合で素晴らしく輝いたのが徳島から新加入した左サイドバックの橋本健人である。J2の山口や徳島で主力として活躍していてJ2最高の左サイドバックと評判だったのだが、以前から新潟のサッカーに憧れていたとしか思えないフィット感がハンパない。

そんな橋本の新潟デビュー戦を振り返っておきたい。

まずはプロットから。

橋本のボールタッチ。基本的には大外で受けて捌き、得点に絡む場面では前線で躍動する
受けて戻すが基本だが、ゴール前では鋭いアーリークロスとグラウンダーパスの択を仕掛ける

試合開始直後から躍動する橋本

前半3:20のシーン。左サイド大外で受けてから福岡守備のブロックの間を通せないと判断すると逆サイドに待機しているマイケルにサイドチェンジを蹴り込んでボールをダイナミックに退避させる橋本。この時のキックは右足というのもポイントが高い。左足だけではなく右足も蹴れそうな雰囲気を出してくれる橋本。

前半3:35のシーンでは初出場開始3分で圧巻のプレーを繰り出す。ビルドアップの流れで福岡の523ブロックの背後でボールを受けるとライン裏に走り込む長倉目掛けてほぼ完璧なタイミングでハーフウェイラインから衝撃とも言えるスルーパスを通す。完全に抜け出した長倉はキーパーと1対1の状況となり狙い澄ましたコントロールショットを自信満々に蹴り込むがポストに直撃してしまう。ゴール未遂に終わったがいきなりとんでもないパスを見せてくれた橋本である。左足で外から巻く軌道のキックになるので守備に引っかかりにくくアタッカーは受けやすいという上質なボールを供給する橋本。前半35:10や38:30、後半46:30には自陣深い位置から最前線の谷口や長倉へ見事な縦ロングフィードを通してチャンスクリエイトしたりもする。

アーリークロスとグラウンダーパス

前半7:10のシーン。ビルドアップ時のフリーランでスルスルとハーフスペース高い位置へ上がる橋本。ダニーロがボールを持つと福岡の守備の死角となるスペースへ入り込み、ペナルティエリア手前でボールを受ける。この状態から狙い澄ましたアーリークロスを左足で蹴り込むと鋭いカーブで孝司目掛けて飛んでいく。ボールは福岡守備に弾かれてしまうが、スピードもコースも曲がり具合も素晴らしいキックだった。長倉との相性がメチャクチャ良さそうなキックである。

8:40のシーンでも似たような流れから似たようなアーリークロスを蹴り込んでおり、この時には孝司、谷口、長倉がボックス内に入っていてペナルティエリア手前正面には宮本が待機しているという状態を作れている。マイナスのアーリークロスを力強く叩き込めるだろうし、弾いたセカンドボールを宮本や秋山のミドルで追撃とすることもできる。こういったゴール前の一連の流れを作るために機能するのが橋本の左足アーリークロスとなる。30:15には相手陣内深い位置でセカンドボールを拾ってそのまま鋭いマイナスのクロスを蹴り込むこともできている。後半62:00には秋山のロブを相手陣内深い位置で受け取ってペナルティスポット目掛けて飛び込んでくる長倉へ鋭いグラウンダークロスを供給したりもする。

前半14:50のシーンではペナルティエリア手前からボールを受け取ってまたもアーリークロス!と思ったら同じキックモーションで長倉にグラウンダーのスルーパスを通そうとする。結果としては福岡の守備に反応されてしまったがこのキッキモーションには結構騙されるのではないだろうか。もしもスルーパスではなく孝司へのアーリークロスだったとしても決定機を創出できていただろうし、そのボールを蹴り込む余裕も十分にあった。18:10にもアーリークロスを上げる前振りを匂わせておいてから谷口にボールを預けて突撃してもらっていたり、29:30にはゴール正面において長倉がフリーで受けられる斜め楔を入れたりするし、46:05にはゴール前の密集で走り抜ける谷口目掛けて完璧なタイミングでチップキックによるスルーパスを通したりもする。

ゴール前の仕掛けが弱いと言われている新潟だが、橋本によるアーリークロスとグラウンダーの二択を突きつけることができるのは新潟の決定力を上げる大きな武器になるはず。橋本の騙しモーションで守備の反応をコンマ何秒でも遅らせることで大きな綻びを発生させることができるのかもしれない。

クロス、アーリークロス、グラウンダーを巧みに蹴り分ける橋本

スペースを効果的に活用する橋本

前半10:15のシーン。秋山のサイドチェンジをフリーで受けた橋本はブロックのスライドが間に合わない福岡守備の空白地帯を一気にドリブルで駆け上がる。最終的にはペナルティエリア手前まで運んで左大外の谷口にボールを預けることになったが、方向としてはゴールへ向かっていたので最終ラインの具合によってはそのままシュートという選択肢があったのかもしれない。こういうダイナミックなプレイを今後たくさんみせてくれることだろう。19:25にはマイケルのサイドチェンジを左サイド高い位置で余裕のドフリービタトラップを決めてみせたりもする。ビルドアップの流れの中でボールの逃し先になるのは当然として、大きなサイドチェンジをフリーでレシーブできるポジショニングができるのも橋本の大きな特徴の一つとなるだろう。

サイドチェンジのレシーバーとして機能する橋本

この試合ではビルドアップと攻撃面が特に目立っていたが、後半の要所要所でタックルによるボール奪取や出足の速いインターセプト、ゴールキックのターゲットとしてのエアバトラーなどフィジカル要素の強い守備面の良さも見せてくれた。

橋本健人、これは新潟のサッカーを進化させるフットボーラーになることだろう。素晴らしいパフォーマンスだった。

試合雑感

新加入の橋本がスタメンに名を連ねる。この試合の見どころはここに設定するしかないだろう。お披露目はもうちょっと先かと思っていただけに意外だった。

そして橋本が凄い。橋本が凄ずきた前半である。これは素晴らしい。ダニーロもノリノリで躍動しまくりで嬉しい。

試合としては福岡の523ブロックに対して宮本と秋山が交代しながらブロックの中で受けて前進してゴール前まで運んでタコ殴りというのが序盤だったのだが。

10分過ぎたあたりから福岡がどうにもならないということでプレスに切り替えるも状況を全く変えることができずに20分あたりでブロックに戻すのだが結局新潟のビルド&アタックを止めることができずに30分以降は523の形を維持することすらできない福岡というものだった。これは新潟が凄すぎる圧巻のフットボール。ゴールが決まっていないのが唯一にして最大の懸念点。

橋本健人、なんなんだこのスペシャルな左サイドバック。とにかくボールの脱出先としての機能が抜群すぎる。困った時に左を見ればフリーの橋本がいるみたいな感じで位置取りがとにかく上手い。新潟のサッカーに憧れ続けて両想いで加入したとしか思えないフィット感。

橋本は縦パスも通せるし運ぶこともできるっぽい。特筆すべきは左足のアーリークロスで、高木やハセモは同じ場所から蹴ると右足のインスイングになってしまうので合わせる難易度が高くなってしまいそうだが橋本は左足のアウトスイングになるのでキーパーが飛び出しにくくなる。そしてこのアーリークロスをチラつかせてから同じキックモーションで繰り出されるグラウンダーの斜め楔という超二択がズバズバ刺さっていた。涼太郎はインサイドキックの超二択でピッチを切り裂いていたが橋本はアーリークロスと楔の超二択でピッチを切り裂いてくれることだろう。楽しい。

後半も橋本とダニーロから目が離せないのだが、まずは先制点が必要というのはいつもの新潟らしさ爆発の展開。最終的にはいまや世界的なトレンドとなってしまった自陣に引き込んでからの反転カウンターという領域展開で谷口が必中をキッチリ決めてくれた。

そして試合終了。最終盤の長いアディショナルタイムに緊張感があったもののノーモア磐田ということで無事に勝ち点3ゲットだぜ。順位もジャンプアップしたっぽい。

後半の福岡はハーフタイム時の選手交代を絡めて442からのマンツーマンプレスでボールを奪いにくるという戦術変更をしてそれなりに流れを変えることに成功していた。前半あれほど輝いていた橋本もスペースがないとさすがに苦しそうだった。70分以降はスペースも確保できて再度ボールを捌くことができるようになった橋本。アディショナルタイムで交代となったが抜群のパフォーマンスとインパクトを見せつけてくれた。

京都戦に続き新潟の守備は今日も非常に良かった。とにかくセカンドボールへの執着が凄まじかった。全員があの執着だったからこそ終盤でも最後までやられなかったのでしょう。ノーモア磐田、ノーモアヴェルディ。

この福岡戦、特に前半は新潟のサッカーを説明するのに最適な試合となったことだろう。美しくて強いサッカーで誇らしい。後半は今までの新潟のダメなところが全部改善されている、即時改善することができるスタッフを揃えているということを証明したという意味で満点の試合と評価したい。

シーズンも終盤に入ってくる頃だが非常に良い状態で町田名古屋町田町田という対極スタイルとの連戦に挑むことができる。この新潟だったら全部勝ってくれることだろう。

本当に素晴らしい試合だった。

「これでわかった!サッカーのしくみ」をコンセプトにアルビレックス新潟の試合雑感を中心に書いています。