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早川史哉:2023 J1 第7節 ヴィッセル神戸×アルビレックス新潟
試合終了直前に劇的被弾ッッッ!!!!と思われたがVARのオンリーレビューでオフサイド。大迫はわずかに踵がオフサイド。いわゆる戻りオフサイドというやつ。
神戸は幻の勝ち点3で新潟は勝ち点1を押さえたという結果だったが、試合内容としては双方のスタイルが良く出てコントラストも強いナイスゲームだった。
繋いで地上戦の新潟と大迫へのハイボール一択な神戸。
大迫は言わずと知れたリーグ屈指のポストプレイの名手だし、そのポストプレイは世界でも通用するレベルである。中央でボールを収めてキープするのに必要なスペックとスキルの全部入りというフットボーラーだ。
そんな大迫全集中の神戸だったが、この試合で賞賛すべきは大迫へのハイボール一択というストロングを最後まで潰し続けた史哉である。
正直なことを言うと最後まで耐えられるとは思ってなかったけど最後まで耐えてくれた史哉が凄い。この史哉が凄い大賞2023にノミネートする活躍である。新井のインテリジェンス溢れるサイドバックも美しかったので書き残しておきたいところだが史哉のことを書き残しておく。
170cmのエアバトラー
早川史哉、身長170cmとセンターバックとしてはサイズが足りないと言わざるを得ないが、抜群の落下地点予測と身体能力でサイズ不足の要素を感じさせないセンターバックである。
このスタイルは筑波大時代から継続しているものだし、筑波大時代から見ている自分にとってはこの神戸戦は感慨深いものがあった。
そんな早川史哉170cm/70kgのセンターバックが大迫勇也182cm/71kgの日本屈指なポストプレイヤーを抑え込んだのかを確認して行こう。体重は1kgしか変わらないということを初めて知ったし、大迫の身長は出典次第で181-184cmで変動する。この試合の大迫が何cmだったのかは誰にもわからない。
この試合、大迫はボールタッチも多くチャンスメイカーとしての役割は十分すぎるほど果たしていた。最後の幻のゴールも大迫ポストプレイによる落としである。
まずは大迫のボール関与の分布を確認しておこう。
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前半13:50のシーン。神戸キーパーから大迫目掛けて飛んでくるボールに対してデンと史哉の守備コンビネーションで大迫を完全に沈黙させる。
デンが落下地点予測で密着するので大迫も負けじと体を押し返す。押し返すのだがボールは大迫とデンの前方に落ちてきて後ろから走り込んできた史哉が悠々と跳ね返す。これはデンと史哉の良いコンビネーションだった。
前半27:15のシーン。左ペナ角から上がったアーリークロスがボックス中央にスタンバイしている大迫へ向かって勢いよく飛んでいくが史哉が体を当てて万全の状態で頭を振らせない。とはいえこのシーンの大迫がとにかく高い。大迫半端ない。
前半28:25のシーン。神戸キーパーからセンターサークルに向かって高く蹴り上げられたボールを落下地点で構える大迫だが落下地点予測は史哉の方が上だった。競り合うことなくボールを完璧なタイミングで弾き返す史哉。
前半36:30のシーン。左サイド奥から超弾道で大迫目掛けて飛んでくるボール。競り合うのは史哉。いっせーの!でジャンプして体を当てて万全の体制でボールを扱わせない。大迫と同時に競り合ったら流石に勝てないが、それでも体を当てて万全の状態でボールを扱わせない史哉。その後は太田がボールを回収してカウンター発動に繋がる。
前半43:25のシーン。これは圧巻気迫の史哉だった。左サイドからゴール前ど真ん中目掛けてアーリークロスが放り込まれると勢い良く走り込んでくるのはボールが集まりすぎな大迫。だったが史哉の落下地点予測が完璧で跳んでくる大迫よりも早いタイミングでボールを弾き出す。デンとナイスタッチする史哉、ありえねー!PKくれよ!というジェスチャーをする大迫。素晴らしいほどに両極のジェスチャー。これは何度でも見たいサイズをひっくり返す史哉らしいスーパープレイ。
後半52:45のシーン。コーナーキックをゲットして蹴るのは島田のインスイング。ゾーンで守る神戸に対して島田が蹴り込んだボールはファーに構える史哉の元へ。高徳との競り合いでよろめいてボールに触れることはできなかったが、抜群の落下地点予測は守備だけではなく攻撃でも発揮されるということを再認識させてくれるものだった。
後半55:40のシーン。ペナルティエリア付近でワチャワチャしながら大迫がボールキープするが小見と史哉で挟み込んでボールを奪い切ると鮮やかな前後左右全方向のパス交換で一気にカウンターを当てる俺たちの新潟。最後は爆走太田が守備に絡まれてしまったが、史哉のボールハントから決定機創出という素晴らしい流れだった。
後半57:55のシーン。右サイドからのアーリークロスに合わせるのはやはり大迫。このシーンでは史哉が跳ぶタイミングがちょっと遅くて大迫にいい感じで跳ばれてしまう。この試合で初めて大迫をフリーにしてしまったシーンだったが、ボールはクロスバーの上を超えてことなきを得る。この時間帯から史哉頑張って!と心の中で連呼するようになる。
後半61:05秒のシーン。キーパー小島からボールを預かって守備がプレスに来ないと判断するやいなやドリブルで一気にハーフウェイラインまで運ぶ史哉。攻撃時においても状況判断ができる史哉である。
後半68:15のシーン。右サイド奥深くからハーフウェイライン付近まで落ちてくる大迫にマークしながらボールハントを狙う史哉だったが大迫にターンでかわされて大迫の眼前には広大なスペースと爆走武藤。デンもかわされて50m近くを武藤が走って懸命に走るヤンも追いつけなくて頭を抱えた5秒後に生まれた小島神。この史哉のワンプレイでSNSが荒れるという世界になって史哉の評価が消えてしまう未来があったかもしれないけど小島がそんな未来を潰してくれた。
#小島亨介 選手が #神戸 の猛攻に立ちふさがる。
— アルビレックス新潟 (@albirex_pr) April 9, 2023
首位 #神戸 に真っ向から挑んだ激闘。
見逃し配信は #DAZN で🤳https://t.co/TXEcE7LIeu#albirex pic.twitter.com/Syut1ylLTq
後半74:35のシーン。エアバトラーの真髄を見たワンプレイ。筑波大時代からこのプレイにワクワクしている。大迫ではなく武藤嘉紀179cm72kgとのエアバトルだが、大迫には頑張って五分五分という状況だったが武藤相手なら抜群の落下地点予測と跳び方で上から余裕で弾く史哉。落下地点予測して相手よりちょっとだけ早く跳んで体を上から被せることで相手を跳べなくする。正確な落下地点予測と跳躍力を備えた史哉だからできる芸当である。170cmエアバトラーの真髄を見た瞬間。武藤は助走を付けての跳躍だが史哉は垂直跳びでの対応というところも萌えポイント。素晴らしい。
その後の75:05のシーンでもゴール前中央に放り込まれる武藤へのアーリークロス、武藤は落下地点の目測を誤って僅かに空振りとなるが史哉はきっちりピンポイントで落下地点でスタンバイして弾き返す。以降の時間は神戸が大迫武藤の2トップの形に変えてきて大迫が降り気味にプレイするので武藤とのマッチアップが増えた史哉だったが対武藤に関しては全勝という圧巻のプレイ。ションボリしてイニエスタと交代する武藤。センターバックとしてJ1で戦えることを証明した史哉。これは大きな自信になったんじゃないかと思う。
後半90:00のシーンでも神戸キーパーから長距離弾道で大迫目掛けて飛んでくるボールを史哉大迫同時垂直ジャンプで完全勝利して弾き返す。これは熱い!大迫に駆け引きなしのガチエアバトルで完勝する俺たちの史哉が誇らしい!
そして試合終了間際のオフサイド。史哉本人はラインを上げきれず大迫にポストプレイをやられてしまったという自責の念があったのだろうか。ここまでの90分をほぼ完璧に対応していただけに屈んで頭を抱える史哉の姿に掛ける声も見つからなかったのだがVARはきちんと事実を映していた。完璧なまでの史哉のラインコントロール。大迫が戻りオフサイドにしかならない状況を作り出して、その後のケアもできるポジショニングをしていた俺たちの史哉が映し出されていた。大迫の踵がオフサイドという事実をVARは映し出していた。まぁ結果的には味方と交錯してしまったわけだけど。
J1でも輝き続けるエアバトラー史哉に今後も期待しましょう。
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— hitoshi (@hitoniph) February 18, 2023
試合雑感
屈強すぎる神戸に対して新潟は現有戦力で挑む。
藤原やダニーロが控えなので展開に応じてブーストという感じになると予想。サイドアタッカーはなんだかんだで豊富な俺たちの新潟。
神戸は433予想で中央の齊藤や蛍はボールハンターとして間違いなく有能。ということで新潟の中央攻めが通用するかどうかという見所が設定できる。中央で奪われてカウンターというのは避けなくてはいけない。まずは新潟が中央攻めするかサイドを多く使うかという部分をチェックしてみることにする。
そんな感じで試合開始。
神戸はスタイルで言えばゲーゲンプレス。前から3人4人で圧力を掛けて高い位置で奪ってショートカウンター方式。
最初は3人で前からプレスを掛けていたが新潟のビルドアップの方が優れていたので20分くらいから424のような形で圧力を掛けつつ端に追い込んだらバックパスを狙うという守備に変更。結果的にいくつか上手く引っ掛けて決定機に繋げていた。
神戸の攻撃は基本的に大迫に当ててセカンド回収。大迫もいやらしく史哉とマッチアップする様にポジショニングしてくるが史哉は大迫と互角に戦っていて偉い。大迫からしたら超計算外だったのではないだろうか。
神戸のビルドアップ、正直質は高くないので上手く嵌めたい。前半を見る限り守備もそこまで堅い印象が無いので先制点さえ取れれば試合をコントロールできるはず。大迫へのロングボールはずっと脅威になると思うけど。
新潟はいつもの新潟でいつも通りにやっているだけですので特にコメントないのだが新井は本当にインテリジェンス高くプレイしていて美しい。
ファウルやイエロー判定の基準で曖昧な部分というか難しい判定があったので後半荒れないことを祈る。ワンプレイで試合の流れがどちらかに一気に傾きそうな試合。
後半、神戸は攻撃時に最終ラインに必ず3枚残して新潟のカウンター対策を徹底して効果もかなり出ていた。後半の神戸は多くセカンドボールを多く拾って決定機も作っていた。
一方の新潟も守備の森を潜り抜けてゴール前まで運ぶというスタイル抜群の攻撃でゴールを狙うが神戸の最終ラインが堅かった。
試合としては双方スタイルが良く出た良い試合。事実を映し出すVARのおかげで勝ち点1も拾ったし3連敗しなかったことは良いことだ。
この試合、最後まで大迫でしたね。武藤もやっぱり凄いです。スペック差が非常に辛いのですがそれと真っ向勝負で負けない新潟も誇らしい。史哉最高!
高徳は新潟で引退してほしい。年俸1億4千万みたいだけど。
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