
春だ! 出雲市へ行こう!~序章~
寝台特急
それはかつて時代をつくり、人々を「旅」というロマンに誘ったもの。
そして時代とともに衰退し、2025年2月20日時点で定期列車はたった2種類となったもの。
その名は
「サンライズ出雲」
「サンライズ瀬戸」
東京から岡山間を出雲・瀬戸で走り、岡山駅で切り離されて出雲は山間部を走り抜けて松江・出雲市方面へ、瀬戸は真逆で瀬戸内海を渡り高松、時には琴平まで運転される。
それは鉄道ファンの憧れであり、旅行好きに与える可能性でもある。
しかしその切符、寝台券は土日祝日や春・夏・冬の長期休みになればなるほど取得難易度が非常に高いことで知られているもの。
さらには券売機での購入不可、インターネット予約サービスの運営はJR西日本であり東日本管内である関東では非常に使いづらい点から事実上購入場所がみどりの窓口に限られているという点でも異色の切符である。
私は今回、こんなレア列車の寝台券取得にチャレンジした。
旅行記の序章として語ろう。
私の「戦い」を―――。
2月5日(水)往路切符発売開始日
いざ戦場(みどりの窓口)へ!
9時6分、私はJR東飯能駅のホーム上にいた。
戦いの舞台、八王子駅のみどりの窓口へ向かうため、9時13分発の八高線・八王子行きに乗車する。
東飯能駅を発車した列車は八王子に向けて南下していく。
途中、列車内の電光掲示板では青梅線の遅延を知らせる表示が出ていた。
青梅線は八高線の途中駅・拝島で乗り換えできる。
この時にこの列車が影響を受けるかどうか、とっくに想像できたはずだった。
しかしサンライズ出雲への期待で頭の中がいっぱいだった私はそんなことなど考えられなかった。
拝島駅に定刻通り到着したものの、やはり遅れている青梅線からの乗り換え客を待つことに。
結果3分弱遅れて拝島駅を発車。八王子駅までに遅れは挽回できなかった。
そうなると危険なのがサンライズ出雲の寝台券を「10時打ちできない」ことだ。
「10時打ち」とは発売開始日の10時ちょうどに切符を取得するという、かつての鉄道ファンなら知っておきたいテクニックだった。
しかし、最近ではみどりの窓口の数減少により10時打ちができない場合がほとんどだ。
結論から言うと八王子駅でも10時打ちのための優先案内はしていなかった。
そうなると何が怖いって「サンライズ出雲の寝台券が埋まってしまうこと」だ。
サンライズ出雲はサンライズ瀬戸と比べても非常に取得難易度が高く、時期によっては発売開始数分でなくなるなんてことも普通らしい。
今回取得したい3月5日分はちょうど学生なんかは春休み開始頃であり、埋まる可能性は十分にあった。
不安をよそに八王子駅の改札を出場する。
とはいえみどりの窓口がない東飯能駅からみどりの窓口利用目的で八王子駅まで乗車した場合、駅で申告すれば乗車券代をJR側が負担してくれるのだ。
切符でそれを利用するためには自動改札機に切符を通すのではなく、有人通路へ行き「みどりの窓口を利用する」と申告しないといけない。
駅員にみどりの窓口利用目的で来たと伝えて有人通路を通過。
そのまま改札正面のみどりの窓口へ大急ぎで向かう。
いざ、勝負!!
窓口に入って目の前に発券機があった。
そこに「待ち人数7名」という表示があった。
開いていた窓口は3か所中2か所。
10時打ちはとても厳しい。
発券機横にあった用紙に希望の列車・席種を記入。
そして乗車券も往復でまとめて買うことを記入。
ソワソワしながら呼ばれるのを待った。
案の定10時を過ぎた。
1分、2分と時が経っていく。
サンライズ出雲は売り切れていないだろうか。
不安を募らせながら呼ばれるのを待つ。
そして私の番号が呼ばれ、窓口へ。
サンライズ出雲の切符であることを伝え、すぐに手続き開始。
「あれ? 席が選べない……」
係員がそう言うが
「取れるならどこでもいいです!!(焦)」
と伝えた。
そして数秒後……。
「場所は指定できませんでしたが、シングル禁煙が取れました」
往路分、何とか予約戦争(?)に勝利!!
往復乗車券について帰りのルートが岡山駅から新幹線ルートかと聞かれたので「明日もサンライズ出雲の切符取りに来ます」と伝えて往復在来線ルートにしてもらった。
往復サンライズ出雲はあまりいないらしい。
その後、支払いを済ませてその場で東飯能駅から窓口利用目的で来たことを伝える。
するとその場で係員が帰りに使う乗車票なるものと、行きの電車賃を返金してくれた。
乗車票は有人通路で!
みどりの窓口を利用後、慌てて発車1分前に川越行きに乗車する。
帰りの電車内でホームページから座席表を見た。
シングルは上段・下段のいずれかになる(ただし一部に平屋アリ)
あわよくば上段が取れたら良かったが、ギリギリだったので下段だった。
まあ上段だと揺れが激しそうで酔うかもしれないし、下段の景色は独特でこれも良さそうだから別にいいけど。
東飯能駅に到着後、有人通路を通過しないといけない乗車票を見せるために自動改札機の脇へ。
すると不幸にも無人時間帯であったためインターフォン越しの対応を余儀なくされることに。
インターフォンを押し係員を呼び出す。
「乗車票で来て……」と伝えると「それは〇✕△■~」
近くにいた登山老人会らしき人たちの話し声が大きくて聞こえなかったので「すみません。聞こえないのでもう少し大きい声で話してください」と伝える。正直面倒くさい。
まあ要約すると「乗車票を回収しないといけないので精算機へ行ってほしい」ということだった。
言われるがままに精算機へ向かい、再びインターフォン越しに係員と会話する。
精算機横にある回収ボックスに乗車票を入れるよう言われ、指示通りに乗車票を小さなボックスへ入れる。
「入れました」と伝えると精算機から一枚の切符が出て来た。
「これで自動改札機を出てください」と言われたので御礼を伝えてさっさと出場した。
とても面倒だった。
明日は八王子駅で1本見送れば有人時間帯に帰着できるようなのでそれを目指そう。
2月6日
今日は早めに行こう
2月6日、復路の寝台券を取得するために再び八王子駅を目指す。
しかし昨日の反省を生かし、今日は1本早く乗ることに。
8時50分発、八王子行きに乗車。
今日は遅延もなく無事に定刻通り八王子駅へ到着した。
八王子駅有人通路から再びみどりの窓口へ。
とその前に少し時間があるのでお手洗いへ。
八王子駅は都内で雪が降ったり台風が接近したりするとテレビ局の中継でよく映るイメージがある。
そんな八王子駅前を見学した後、本題のみどりの窓口へ。
9時45分頃に入ったがなぜか今日は待ち人数が少ない。
昨日と時間はほとんど大差ないが、こういうこともあるのだな。
10時決戦!
待ち人数が少ないとはいえ10時を過ぎて帰りのサンライズ出雲が満席だったなんて言ったらとっても辛い。
だからさっさと番号を発券してしまった。
そうしたら案の定10時前に呼ばれた。
「あの~、今日発売の切符なんですけど……」
そうすると購入内容だけ先に確認された。
そして10時になるまで待機することになった。
周りにも10時を待つ人がおばさんと若者の2名。
運命の時間が近づき、私はひたすら祈っていた。
「係員さん、そしてマルス発券機、どうかサンライズ出雲の切符を私にお願いします」
「上段というわがままは言いません。とにかく予約戦争に勝ちたいんです!」
そして運命の瞬間!
「それでは10時になりましたので今日発売の切符の取り扱いを始めます」
早速番号が呼ばれたので急いで窓口へ。
「3月6日、上りのサンライズ出雲、出雲市駅から東京駅まで禁煙のシングルお取りできました」
予約戦争、今日も無事に勝利!!
ちなみに隣の窓口に呼ばれたおばさんは東京発のサンライズ出雲の予約に挑戦したようだが、禁煙希望だったのに喫煙になってしまったようだ。
乗車日が1日違うだけでも変わるものなんだなと感じた瞬間だった。
何とか往復共に寝台券を押さえることができた。
帰りも下段だったけど、それはそれで良い。
春休みともなれば予約するだけでも高難易度だから。
さあ、帰ろう
昨日乗車した八王子駅10時15分発を見送り、10時45分発に乗車する。
これで東飯能駅まで行き、10分ほど待てば有人時間帯になるからだ。
勝利の余韻に浸りながら、出雲市でどこへ行くか妄想を膨らませる。
正直言って神仏にあまり興味がないので出雲大社へ行くのはアレだなぁとか、どこかのローカル線に乗ろうかなとかいろいろ考える。
そうこうしているうちに東飯能駅へ到着。
10分ほど時間を潰した後、11時30分に有人時間帯になったので有人通路へ突撃!
乗車票を渡して改札を通過。そしてそのまま帰宅した。
さあ、旅の準備をはじめようか
これを書いているのは2月21日。
いよいよ約2週間後、念願のサンライズ出雲旅に出かける。
旅立ちは3月5日、帰宅は3月7日午前。
現地では一畑電車に乗るつもりだ。
ただ心配なのは雪害だ。
これを書いている時、日本海側に3連休の大雪予報が出ていた。
3月なら温かくなるから大丈夫だと思うが、サンライズ出雲が運休にならないことを祈っている。
最悪なのは3月5日の下りサンライズ出雲が動いて、3月6日の上りサンライズ出雲が運休になるというシナリオだ。
こうなると現地で最低1泊しないといけないし、3月8日には用事もあるので結構一か八かの旅程だ。
でも、行くからには楽しみたい。
さあ、旅の準備をはじめようか。