2月のいろいろ(2024年)
毎年2月は、大雪やインフルエンザでツアー企画はキャンセルになるのが怖いし、そもそも寒いからイベントも少ないし、比較的暇な時期なんですが、今年はなぜか、色々と仕事が重なりました。
気づけば、映画館に一度も行っていない。
それどころか、毎月一回は必ず、息抜きに行っているお店が4カ所あるのですが(高円寺メタルめし、ブールマンを含む)、そのどこにも行きませんでした。その代わり、違う用事であちこち行っていたのもあるのですが、後述します。
お仕事
2/16は、栃木県総合文化センターで橋爪亮督tenor saxとデュオ、お昼のコンサートでした。立派なホールで、あたたかいお客様にも恵まれ、ホールコンサートですが、心の距離が近く感じました。宇都宮の皆さん、ありがとうございます。
この日のピアノがとても素晴らしい調整で、リハからずっと弾いていました。普段、本番前の弾く時間は疲れないように適当に調整するのですが、弾き心地が良すぎて、ずっと弾いていました。調整して下さった調律師さんとゆっくりお話もできて、また素晴らしいピアノ技術者さんに出会うことができました。スタンダードばかり演奏しました。
そして、maikoさんとのツアー。
2/22は岡山のバードへ。毎年、おかやまジャズストリートで訪れていますが、バードでちゃんとライブをするのは、なんと12年ぶりでした。
歴史あるお店ですが、現在の3代目マスターでベーシストである赤星敬太さんに代わってからお店の雰囲気が明るくなって、若い人も集まっています。時代に向き合って新陳代謝できる老舗って、素晴らしいですね。この日もお客様のあたたかい空気のおかげで、皆で良い空間を共有できた実感がありました。アンコールでは、赤星さんも交えてセッション。とても楽しい一夜でした。
翌日2/23は、神戸のギャラリージング。私もmaikoさんも、それぞれ度々出演しています。
この日、昼間に岡山〜神戸を在来線移動したんですよ。なので、ふと思い立ち、神戸元町のシャミアナに行ったんです。
シャミアナは北野店と元町店の2店舗あり、北野店はクレオールのすぐ近くにあったので、クレオール出演の際は必ず食べに行ってたんですね。
それが、シャミアナ北野店は5、6年前に閉店し、4年前にクレオールも閉店。シャミアナ元町店の方はやっていると聞いてはいたものの、元町まで来ることがなく、行けないことが気にはなっていたんですよ。
14時半にたどり着くと、お店はもうクローズしていたのですが、北野店のマスターがいらっしゃって、しばらくぶりに再会できました。カレーは食べれなかったけど、クレオールのことなどお話しできて、良かったです。
その後、ギャラリージングでのライブに行ったら、偶然ですが、かつてクレオールで聴きに下さっていたリスナーの皆さんが集結。いやー嬉しかったです。しかも皆さん5年ぶりとか、全員久しぶりなんですよ。私もシャミアナに引き寄せられたし、何か引き寄せられたのかなあ、なんて思いました。
ツアー三日目2/24は、京都ナムホール。
マネージャーがこの場所を少しでも良い音にしたいと工夫し、毎回音響の面で変化があるナムホールですが、今回はピアノの上の天井部分に反響板を取り付けたおかげで、ピアノが豊かに鳴るようになりました。
こんなに静寂の会場もなかなかなくて、曲を始める前や曲の最後の音を切った後のsilenceがどことなく湿り気を帯びて、とても重量感があるんです。
以前何かで見た、ロストロポーヴィッチが「演奏家は鳥の羽ばたく予感を感じなさい」ということをおっしゃっていたのですが、ナムホールでは、リスナーの方も、それを感じることができるんじゃないかな。本当に、良い会場です。次回は夏にソロで演奏します。
翌日の2/25は、故 井上淑彦さんのお誕生日で、毎年「井上淑彦ソングブック」ライブをコチでやっているので、今回は名古屋には寄らず、東京に帰ってきました。(名古屋は来月、牧山純子さんのデュオで行きます)
今年も昨年に引き続き、アコーディオンの佐藤芳明さんとデュオ。
今回はちょっと心がいっぱいになってしまって、途中まで我慢してたんですけど、最後の曲「ずっと…」で、演奏中にも関わらず涙が溢れてきました。
お亡くなりになっても良い曲が残って、それを皆でシェアして、井上さんのことを知らない方も一緒に愛しみその場を共有できるって、なんて素晴らしいことでしょう。無形のものを引き継ぎ心を引き継ぐって、とても人間らしい行いで、これを大事にしていかねばならないと改めて思いました。
お亡くなりになった後も、学びを下さる井上淑彦さんに、感謝。
その他
いつもなら、「映画」という項目を立てて観た映画を列挙するのですが、映画館に行ったのが、なんとゼロ。
今月は忙しかったので、映画館に行こうとも全く頭に浮かばない状態で。
配信視聴で『名探偵ポアロ:ヴァチカンの亡霊』と、『ヴァチカンのエクソシスト』の二本と、連載原稿を書くために来月公開の音楽映画『COUNT ME IN 魂のリズム』を観たのみです。
この『COUNT ME IN 魂のリズム』は、素晴らしかったですよ本当。皆さん観ましょう!
そして、とある事情で、出かけるたびにピアノの試弾に行きまくっていました。ショールーム、店舗、倉庫… いろんな方にお世話になって、結局月末には一段落しました。
それで改めて思ったことは、ピアノって、オーナーや技術者の鏡なんだなということ。楽器店の新品の展示でも、同じ機種で違う個体を散々弾いたのですが、個性も違えば調整具合が全然違うので、楽器店や技術者の思想が顕著に出るものだなと思いました。
途中でよくわからなくなって、相談しにファツィオリに寄ったんですよ。
いつもお世話になっている皆さんにお話ししたら、色々解決のための選択肢を教えて頂き感謝しきりだったのですが、社長に「今、ブルース・リウとブーニンが使ったばかりの貸し出し楽器が戻ってきてるから、弾いてみて」と言われ、そこにあったF308を弾いたんです。
散々色々弾きまくった後でこの楽器を弾いて、あまりの素晴らしさに感激しました。
楽器はもちろん素晴らしいのですが、それぞれのパーツを作り、整備した技術者がいて、その全員が見ている世界が違うということを、改めて思い知りました。
「楽器を買うって、技術者の技術を買うことなのだな」と、心底実感させらましたね。もう、「参りました!」っていう感じですよ。
でも、それがわかるぐらいには、私も経験が蓄積してきたのだな、とも思ったんですよ。これまで出会った様々な楽器に育ててもらって、今の自分があるし、ピアノ人生の長い階段の一つ目の踊り場まできたのかな、ということを考えたりしていました。
2月、これだけ忙しくて息抜きもしなかったのに、ずっと風邪も引かず体調も崩さず2月を走り抜けることができて、ほっとしています。
確定申告はまだしていない! 今年ほど確定申告したくない年もないですね。
2月はまだ2日残っているのですが、まだまだ忙しくて、お休みになった隙に書きました。
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