10月のいろいろ
今年は秋がないですね。10月頭は暑かったのに、月末には突然気温が冬になってしまった。10月からもう冬のコートを着ちゃいましたよ。
さて、今月のまとめです。
【映画鑑賞】
『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』
やっと観ることができました。ムビチケを買って、使うまでがこんなに長かったこともありません。(結局そのムビチケは、目的の劇場ではない間違った劇場でチケットを購入してしまっていて、映画館に寄付したことになりました)
一度観て、画面が暗かったこととディテールをもう一度確認したかったこともありIMAXでもう一度観ました。やっぱIMAXは綺麗ですね。
私が007を劇場で見始めたのはピアーズ・ブロスナンの時なのですが、その頃にTSUTAYAでレンタルして少しずつ過去作を見て、後から見てもショーン・コネリーがやっぱり一番格好良いと思いましたよ。ダニエル・クレイグは時代に合わせた独自のボンドをやっているのがすごく格好良いと思って、ショーン・コネリー以外でとても好きになったボンドでした。
とにかくスーツ姿が格好良いですよね。ムチっとした筋肉の感じ、これまでのボンドでそこまで強調されなかったじゃないですか。必ずタキシードの場面がありますけど、ダニクレのその格好良いことと言ったら。ドレスもスーツも洋服は体型で着ると言いますけど、それを体現した美しさで、どの女性陣よりも服をバッチリ着ているダニクレが一番セクシーでした。
ダニクレボンドは全て映画館で観て、全て楽しみました。お疲れ様でした。
『DUNE 砂の惑星』
全力で絵力に振り切った作品でしたね。デヴィッド・リンチ版のDUNEが全く意味がわからなかったので、ヴィルヌーヴの方が何が起こっているかわかりやすかったです。が、長い。まだPart 1なのね。
でもヴィルヌーヴがめっちゃヴィルヌーヴしていて、ハンスジマーがめっちゃハンスジマーしてました。
ヴィルヌーヴって嫌いな人も多いですが、「触感」にフォーカスしている人の印象があって、脚本も超面白い『ボーダーライン』、映画館で泣きまくった『メッセージ』、間と効果音ばかりの『ブレードランナー2049』、全て触感を楽しむ映画だったなと思います。私は自分に合ってる。惜しむらくは、ハンス・ジマーではなくヨハン・ヨハンソンが生きていて、このコンビでDUNEを、これからも沢山映画を見せて欲しかった。ヨハン・ヨハンソンのミニマルで触感をアシストするような音楽がベストマッチだと思います。
あと、ティモシー・シャラメは本当、人を狂わせる恐ろしい美しさがありますね… 何回か「危険!ピーッ!!」と頭で笛を鳴らしました。
シャラメ、危険!
『最後の決闘裁判』
超絶大傑作でした。今年一番かな。もう一度観るのはまだ無理ですが。
皆が観た方がいい映画ではあるけど、レイプの話なので、ちょっと過呼吸になるぐらいショックなシーンがありました。三幕目は女性にとって結構きつい内容です。
でも、これを今の時代にこの内容で映画にしたのはすごい。本当に素晴らしいことです。リドリー・スコット、本当にすごい人ですね。マット・デイモンとベン・アフレック、アダム・ドライバーも、皆クソ男役だけどとてもいい仕事をしたなあ。これを良いものにしようと配慮しながら尽力した男性陣には、本当に頭が下がります。今までわからなくても良しとされてきたことだから。
しかし、3時間近くある映画なのに、一瞬もだれない構成と美術が凄すぎる。他に並べている映画はどれも3時間コースの長尺ですが、この映画はカットも美しいし、緊張したまま、あっという間でした。
二幕目に描写がなくておかしいなと思ったところは、やはり三幕目にはバッチリ描写があって、「お前、聴こえてなかったのかよ…」と絶望的な気分になりましたし、とにかく三幕目は、現代でも近いことはしょっちゅうあることばかりで、心抉られました。この映画、皆さんぜひ観て欲しい。
ちなみに、リドスコ御大には、プロメテウス、コヴェナントともう一本ある予定だった、エイリアン・プリクエル三部作を完成させて欲しいです。(三部作って話でしたよね?)というかファスベンダーを下さい。
『燃えよ剣』
我らがひらパー兄さんこと岡田准一君の映画は、欠かさず観ます。
正直、私は幕末の話って好きじゃなくて、というか維新とか坂本龍馬に憧れてる語る人が昔から苦手。
けれど見たかったのは、岡田君だから。
そして鈴木亮平。『孤狼の血 LEVEL2』でタガの外れたヤクザの圧倒的怪演を見て興味を持ち、チラッと見た『TOKYO MER』で全力で良い人をやっていて(逆に怖いよ)、その後気になって配信で『変態仮面』を見て、〈なんでも仕上げてくる恐ろしい男…〉と、注目する存在になってしまいました。
ということで、面白かったです。長い話をギュッと映画にしているから、色々駆け足でいかないといけないことはわかるのですが、それに勝る役者力でした。鈴木亮平のカチコミ衣装姿はめっちゃ格好良かったし、近藤勇ぴったりでした。原田監督の作品っていつも早口で言葉が多いから、もうちょっと言葉を聞き取りやすいように音響効果でできないのかなあって、いつも思います。
しかし岡田君、この前実家でテレビの歌番組がついていたので見ていたら、V6で歌っていて、そうだアイドルだったこの人と思ったんですけど、歌って踊って笑っていても、目の殺気が消せてない!
岡田准一は早くジョン・ウィックに招かれるべきです。もしくはステイサムと共演するべき。世界は岡田准一を待っているよ!
『G.I.ジョー:漆黒のスネークアイズ』
「未曾有の忍者テロ」という宣伝パンチラインと〈岸和田城で撮影〉という情報で、意味わからんと思って観に行きました。
いやー、映画館の完全通常営業まで1年半ぐらい待ちましたが、やっとこういうラインの映画を映画館で見て「なんやあれ」と言えるようになったのだなあと、映画館に観にいってツッコミ入れまくこと自体が、物凄く貴重な映画体験なのではと感じました。
もう最初から色々ヤバかったのですが、とにかく西洋人の考えるトンデモ日本描写が詰まっていて楽しかったです。城を家にしていいのは上沼恵美子だけだよ! って、日本でマジョリティとして見ていると楽しめるけど、アメリカでマイノリティとして生きていると、こういう描写の積み重ねは弊害も生むのでは、と思いますけど。
エンドロールのアートワークでクラックラしました。最後の最後まで…
まあこういう映画は、こういう感じになるだろうと思って行っているので、思っていたよりトンデモだったらOKなんですけど、余裕でOKでした。
【音楽鑑賞】
今月はなんといってもショパンコンクールでしょう。寝不足です。
今回は本当に面白かった。何が面白かったって、予選を重ねるにつれキャラが濃い演奏者が結構残っていったこと。コンサバな解釈ショパンも勿論いいけど、新しい地平を切り開く人を探してたんじゃないかなと思います。
本選のガルシアガルシアさんの明るい爆発力はお見事でした。予選ラウンドのホジャイノフさんとか、新しい価値観の提示に本当にびっくりした。角野隼斗さんの聴いたことない感じの演奏も、時代が変わってるなあと思い知らされました。
今回すべてのラウンドの日本人奏者は聴いていますが、特に小林愛実さんの演奏が素晴らしい以上に大好きになりまして、コンクール日程通して、できるだけ生で聴きました。
音量感よりも優先するものがある、皆が一致する正解があるとしてもこの表現がしたい、と、非常に美意識の高い繊細な演奏を、強い意志で貫徹されていました。王道も大事だけど、自分のイメージと自分のできることを最大に考え抜かれた演奏だったと思います。
本選のコンチェルトは、1楽章が少し重めのテンポで始まり、2楽章は特にだれるのと紙一重のテンポで進んでいきましたから、彼女はリラックスし存分に歌っているしオケとのアンサンブルも良かったのですけど、これがどう評価されるのだろうかと不安でした。それが、3楽章の入りのキラキラと舞う生命感あふれる音の美しさを聴いて、ここまで見据えての溜めだったのかーと納得。そう、少しテンポを落として自由に伸び伸び弾いていた方が、彼女ならではの繊細な表現も聴こえやすくなっていたんですね。こういうヴィジョンで進行していたのだなーと感心しました。
小林愛実さんの音楽から芯の強さに惹かれ、音源を聴いて記事を探し出す毎日になりました。演奏を聴いて、人間として惚れちゃいました。反田さんと幼馴染とか、もう映画みたいですね。なんて素敵な人たちなんでしょう。
2次予選後に、通ったコンテスタントと落ちたコンテスタントの顔ぶれに納得いかないということがSNSでかなり話題になっていて、そう言われる要因は理解できるけれども、そこまで言うことないやんと思っていました。
私としては、クラシック界にも新人類がいて掻き回す存在がいるということを知り、どこのジャンルも同じように新人類が出てきたらアレルギー反応みたいなものがあるのだなあと眺めていました。女性の演奏に対して”魔性の”とか付けちゃう記事も見かけて、一昔前はこういう表現がよくあったなと思いました。(求道している演奏者に対して失礼なので他のワードを探すべき、今はこういう表現は避けますよね)
新人類といえば、この角野隼斗さんのインタビューとか、最高でした。
こういうのを読むと、時代が変わっていくなあと思いますね。
彼の演奏はこのコンクールで初めて聴いたのですが、先達から「空っぽ」と言われていることは私も演奏を聞いて理解できるけれど、彼の演奏が若い人に支持されているのもとても良くわかる。ジャズでだって、そんなのジャズじゃないと先達から言われるものを沢山の若い人が支持して、フェスでめっちゃ踊っているのを見ていますから、今は今の理由があるんですよきっと。否定する先輩もいて、支持するファンも沢山いて、業界全体で喧々諤々やっている方がジャンルとして楽しいですよね。
今、ジャズでも若い人たち本当に頭良いというか、時代とちゃんと向き合って行動している。それは見習わないといけないところだと思います。
随分前に評論家さんからかけて頂いた〈ぶれず、頑なにならず〉という言葉、ショパンコンクールを追いかけて見ていることで、また考えさせられました。
そして何がすごいって、ファツィオリが1位を獲ったことです。入賞に3名ファツィオリがいた。これは長年のファツィオリファンとしても興奮する結果です。でも年間120-140台ぐらいしか生産していない会社なので、人気が出たら生産が追いつかないですね。
【その他】
素材博覧会に初めて行きました。
ビーズとかリボンとか革細工の材料とか、ハンドメイドのグッズの出店が大量で、楽しかったです。
こんなのとか
色を選んで作るこんなのとか
とにかく楽しかったです。
色々仕入れたので、何か作ろう。
【お仕事】
岡山で行われた「おかやまジャズストリート」に参加しに行きました。
天気も良く、小規模でもフェスが開催されることがとても嬉しかったです。
ライブの他にも色々と仕事していました。
ファツィオリジャパンの紹介で、某所に演奏に行きました。宝くじでも当てて、自分のファツィオリが欲しいです。
今月の配信を聴いて下さった方はご覧になったかと思いますが、ピアノ部屋にステンドグラスのランプを入れました。去年閉店したクレオールには沢山のステンドグラスがありましたが、ああいうものが欲しいなあと思って少し前から探してたんです。お家でとても豊かな気分になれます。これはいい。
今月のMikiki連載はこちらでした。今月書き物はこれだけ。
さて、10月に緊急事態宣言は解除され、少し仕事が戻ってきているように見えます。
文化庁の芸術家支援策「Arts For The Future(AFF)」に採択されて開催されるイベントが多くて、この秋、小さなジャズフェスなどが沢山開催されています。
SNSでの仲間のミュージシャンたちのお知らせが流れてきて、よく見るとAFFのロゴが入っている。仕事が戻ってきているというよりは、AFFの補助金を使ってで新たに作られたイベントが林立している感じです。
ライブへ来るお客さんはそこまで戻ってきていないので、このAFFバブルが一旦収まった後どういう状況になるのか、想像がつきません。一時的な補助金を貰ってのイベントは、ほとんどの場合、収益を上げて2回目を開催するような予算組みで進んではいないと想像します。
補助金があること自体はありがたいですが、今日もある所で別の職業の方に「芸術家個人への休業に対する補償はなくて、これから開催する新規事業にしか補助金出てないのよ」と言ったら、驚かれました。感染症対策には全くなっていませんし、休業対してに補償を出すべきだとずっと思っています。何より、新規イベント事業に対して補助金を出すのは、感染症対策と矛盾している。
本当、一寸先がわからない状況なのですが、真冬に感染症がまた広がるかもしれないので、いろんな準備はしておこうと思っています。あと、言うべきことも言うべきところに言わなきゃですね。選挙もあるし。
来月はライブは少なめ、アウトリーチ公演で沢山の小学校へ行きます。子どもたちにジャズを楽しんでもらえるよう、皆で一緒に楽しめるプログラムを考えています。