
文字数、音数
原稿の依頼が増えて、9年ほど。
確定申告の季節のたびに、原稿仕事が多くなっているなと感じています。
子供の頃から日記をつける習慣があり、その日に起こった出来事を書きながら、もやっとした感情を言語化、明文化することで「自分の感情はこうだったのか」と発見をすることが自分自身の心に良くて、学生の頃からはそれを手書きからワープロソフトに変えて、続けていました。
その延長でブログを書き続け、たまにCDやライブのレビューなどもしていたので、文章を書く依頼が増えました。
仕事で文章を書くのはまた全然別で、かなりテクニカルなことだと感じ、しかし量産型ライターになるのも依頼される内容と話が違ってしまう。
そこで、小田嶋隆さんのコラム講座に通って、天才小田嶋隆の考え方の片鱗に触れ、まあ何も学べていないと思うのですが、「筋道を決めずに書き始め、筆を走らせ論考を飛躍させる」ことの愉しみについては、沢山受け取りました。文章を書くことは楽しいことだと、講座の中で改めて感じました。
依頼原稿、特に紙媒体だと、文字数という大きな課題があります。
短いもので150字ぐらい、私が書くコラムで長いものは5000字ぐらい。絞ったり膨らませたりする過程は、言葉の選択、事実と主観のバランスについて、深く考える時間になります。これは個人ブログや日記では考える必要のなかったことで、なかなかに鍛えてもらっている「レベル上げ感」があります。
言葉の選択は、イコール自分自身の思考にどれぐらいバリエーションとグラデーションがあるか。これは、読書を含めた総合的なインプット量と、脳内サーチ力が必要ですが、結局のところ人間としてのバリエーションがないとつまらないのかな、などと、現段階では考えています。グラデーションについては、随分気にするようになりました。気にしないと、簡単に見逃してしまいます。
事実と主観のバランスも、ブログや日記では考えたことがなかったですが、どういう類いの原稿で誰に向けているのかで当然変わってくるので、大前提として事実と主観のどちらにカテゴライズされるのか、常に考えるようになりました。演奏活動やレッスンにおいてもです。
これに関しては、思考の癖付けをすることで、随分、生きやすくなった気がしています。
商業媒体での適切な文字数についても、以前より気になるようになりました。
対象にあまり興味がなく、普段から文章を読む習慣がない人が読めるのは、せいぜい1000字まで。いや、もっと少ないですね。Twitterの登場で、文字習慣が短くなってしまいました。
各媒体が、記事に対して適切な文字数を発注し、タイトルをつけ、レイアウトをすることで読みやすくなっていますが、対して、自分のブログ的文章では、この文字数は内容を伝えるのに適切だろうかと。「多くの人に届けたい」か、「自分の排泄として出したい」か、考えて出すようにはなりました。
というような文章を書く生活がありまして、考えるのは、マイルスですよ。
音数、少ない。本当に少ない。
けれど、最高で、最強で、最尖で、最美な演奏。
文字数のことを考える時はいつも、マイルスの演奏のエコノミックさを、思い出すんですね。
時代により、どんなスタイルになっても、無駄がないだけではなく、それが人を活かす演奏になっている。
現代は、とにかく速く、音数多くプレイした方が映えるし、世の中そういう潮流になっています。
それはそれで良いんですけど、だからこそ、よりマイルスの強度を感じざるを得ない。
だらだらソロをしない、特に盛り上がりもせず終わって次に渡す。盛り上げてしまったら一人で完結しちゃうし、全部喋ってしまったら余韻が残らない。そのことについての判断が、美しすぎる。
現代において、音数が多いのは映えとして聴いてくれるでしょうが、文字数が多いのは、対象に興味のある人以外、おそらく読まれもしません。
しかし、文字数のことを考えると、マイルスのことを思い出すのですが、文字数ではマイルスを目指さない方がいいとも思っています。
シンプルにしようとして失敗しているものも沢山見ているし、めちゃめちゃ嫌な文章になったり、不要な簡略化もとても良くない。
文字数においては、適切な物量をキープしつつ、論考をわかりやすく整理し提示する、グラデーションもできるだけ簡略化しない方向で、がいいなと思います。「なぜ本が読めなくなるのか」という本が売れているのが事象としてかなり面白いのですが、私はまだ読んでません。
数年前、よく読む批評家が「過書字」という言葉を使っているのを読んで、その傾向が私もあるなと。今も日記をつけているし、ただの習慣の延長ですが、文章を書いていると落ち着く部分があり、困ったら文章にする傾向もあります。
ということで、今回は「スマホで考えながら2000字書けるか」ということを課題に、書いてみました。
実は、スマホで少し長い文章を書いたことはなかったんです。新宿あたりから始め、東京駅に出て新幹線に乗り、新横浜ぐらいで終わるかなと思ったら、静岡までかかりました。やはりタイピングではなくフリック入力で思考するのは、難しいです。
新幹線のぞみ指定席ですが、隣のスーツ着たサラリーマンは、どうやらドラムやってるっぽいです。
時々、地味に、エアでドラム叩いてる。
あんまりわからないようにしてるけど、その動きはドラムだ。
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