一人

他人との会食というものをしていません。
「会ってご飯食べながら話そうよ」、「今度飲みに行こうよ」、もうそういう会話ができなくなりました。

私は個人の演奏家で、おまけにジャズの分野でやっていると、普段から素浪人みたいなもので、群れ(バンド)で行動しません。基本的に自立した一人の集団で演奏しますから。

忘年会やその他「出席しないといけない会食」は、ほとんどありません。
ライブ後の打ち上げは、大きな仕事やツアーの時でない限りありません。ライブが終わったら、お店で軽く一杯ぐらい飲んで、「お疲れ様でした〜」と言って帰る。
レッスンも、執筆も、一人ですることばかり。支払いも個人で受けるし、そう考えるとよくこんな生活を20年もできているなと思います。両親は公務員でしたから、このような独力でその日暮らしの生活は、目にして育ってきていませんでした。

思い返せば、私は高校の時も一人でご飯を食べている時間が多かったし、登下校も一人でした。
高校では「誰と友達であるか」「どのグループに入るか」とか、そういう考えの子が結構沢山いて、よく一人で下校している私に「一人で帰ってる〜!」と笑いながら言ってくる女友達が数人いたのは、名前は覚えていないけれどその顔は覚えています。

一人に慣れているのは、おそらく子どもの頃からピアノの練習をずっとしていたからだと思います。
楽器の練習なんて一人じゃないとできないし、本を読むのも好きだったけど、それも一人じゃないとできないですし。

わりとよくお店の方に「西山さんのファンはお一人で来る方が多いですから」と言われるのですが、「え、それって普通じゃないの」といつも思います。
これはお店的には若干ネガティブな意味があるかもしれません。複数人でいらっしゃるお客様の方が、飲食に払う金額は確実に大きいからです。一人の方は、そんなに沢山飲まないし食べない。
でも私は、自分の今までをアウトプットしたら、おそらく大勢でワイワイと連れ立ってジャズを楽しむ方に向けてするような音楽にならないので、お一人のお客様ばかりというのは至極当然な結果だと思っています。
自分一人の心の内のために聴きに来て下さるというその行為は、とても大切なものですし、だからこそちゃんと誠実に演奏しないといけないなと気が引き締まります。

お一人だと喋らないので、飲食中も飛沫が飛ばなくていいですね。
こちらもなるべく空気の入れ替えには気を使って、状況を見ながら演奏活動を続けていきたいと思っています。

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Hitomi Nishiyama 西山瞳
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