独学で服作りしている私のこと⑤〜作品展をひらく〜
独学で服作りをしてきた私が個展なるものをすることになり、まず考えたのが「テーマ」だった。
ただ作った服を並べて売る、というのではなく何かテーマがあったほうが作るものにも空間にもまとまりも出るし、お客さんも絞りやすいのかな、と思ったのだ。
といっても大した考えもなく日々ミシンを走らせることばかり考えていた単細胞ミシン脳な私だったので、今までやってきたことから拾い上げることにした。
子ども服から大人服になって、パターンがそれぞれのサイズであったり、お揃いでのオーダーなどもあった事、立春が会期一日目だったので
「おそろい春衣」
というタイトルにした。なんとも単純である。
「おそろい春衣」に向かってひたすらミシンを走らせつつ、リピーターや顧客が皆無であったわたしはDMを作り様々な場所に置かせてもらうことにした。
DMのことや置かせてもらえそうな場所は、グループ展で知り合った先輩作家からアドバイスをもらったのだ。
自分で作品作りから宣伝まで行うのはとっても大変だったけれど、隅々まで自分でやるのは完璧じゃなくても楽しかった。ちなみにできたDMは画質はいまいちだし写真の構図もつまんない。おまけにPCのwordスキルしかないのに自分で作ったというかなりのむちゃぶり。
けれど、誰も来なくても、不格好でも、やってみたかった。
ドタバタと会期一週間前を迎えると、息子がインフルエンザになった。
冬の魔法なのか、わたしが出かけたりマルシェ出店の際はちょくちょく体調を崩していた息子。今回も抜かりなく熱を出してくれた。
今思うと、普段息子に向けていたエネルギーが違うものに注がれて彼はガス欠になっていた気がする。
元気だけど登園停止の息子を連れて搬入へ。おそろい服ということで、子どもが来ても楽しく過ごせるようにちょっとしたキッズスペースを用意してみようと空間づくりをしたところ、息子が楽しく遊んでくれて確認もバッチリ。
楽しみな気持ち半分、一体誰が来るのだろう・・・誰も来ないまま1週間終わったらどうしよう、なんて不安にも思いながら会期初日。
会場は2階。1階のドアを開け階段を登って来る足音でお客さんが来たことがわかる。
ドアは開かない。
一向に開かない。。
今日は0かなあなんて思っていたらかたんとドアの開く音が。
こつこつこつ
階段を登る音に胸が高鳴った。
現れたのは、きれいなボブヘアーのほっそりとした知らない女性。
友達でもなく、作家仲間でもなく、知らない女性。
「こんにちは。ご来場ありがとうございます。」
緊張と興奮を抑えながら挨拶をした。
服を見る人は声をかけられたい人とそうでない人がいるので、どうかなあと様子を伺いながら、頃合いを見て
「何でこちらをお知りになりました?」
と訪ねてみた。
「こちらのDMを見て、写真のワンピースが可愛かったので」
!!!!!!!!!!!!!
あのブレブレ写真のwordで作ったDMがお客さんを連れてきた!
衝撃と感激のビックウェーブをブサイクDMのサーフボードでサーフィンしている心の中を悟られないようにしながらも、しっかりとお礼を言い、
ワンピースはこちらにありますとご案内。
その方は最初のお買い上げの客さんにもなった。
忘れられないお客さん第一号から始まり、自分でもびっくりするくらい様々な方が来てくれる1週間を過ごした。
ネット販売やマルシェでは考えられなかった数多くの出会いと時間を過ごして1週間は終わり、また自分の中に新しい扉が開いた。
こうして私は作品展で洋服を売る作家になった。
写真はDMにしたワンピースたち。
ブサイクなDMの事を熱く語った割にデータをあっさりなくしていた。