産後のわたしのはなし
産後うつは、約10人に1人くらいの割合でなるらしい。原因は大体はホルモンバランスのせいであって突然涙がでたり、何もかも手放したくなったり。
あー、そんな言葉聞いたことあるわ。大変だなあ。妊娠中のわたしはマタニティブルーズにもならず、なんなら、PMSにすらなったことがない。
そんな私の身体は、産後大きく変わった。
産後うつになった。
入院中に既に兆候があったのかもしれないが、自宅へ帰ってから一気に押し寄せた不安感。
新生児期は赤ちゃんと一緒に少しでも睡眠を取らないといけないのに、眠れない。
たった3000gしかない、我が子、可愛くて愛おしいのに、そのことよりも、息をしているかが気になって不安になって、眠れない。
わたしがしっかりしないと、と思って眠れない。
私の場合は我が子が可愛くないとか、泣き声が鬱陶しいとか、そういうのではなかった。
夫との関係性、つまりお互い親になったことで生じる、物事の捉え方の小さなズレに物凄い憤りを感じ、更に親になったことのプレッシャーがそうさせた。
私はこんなにこの子のことを考えて行動しているのに、なぜ夫は。と。
ただ、言えるのは決して、夫は悪くない。
私が、ほんの少しの些細な事にすらも敏感になっていたのだ。
夫は1ヶ月育児休暇を取ってくれた。家事をこなし、娘の面倒も見てくれた。なんなら私を笑顔にさせようと、クリスマスもお正月も美味しいご飯をつくり、毎日頑張ってて偉いね。俺が至らなくてごめんね。と言ってくれた。
両家母親たちは毎日のようにお手伝いと作り置きご飯を持ってきてくれた。家族皆がわたしをサポートしてくれた。
でも、だめだった。
わたしは産後うつになった。
いつしか、携帯の検索ワードが、
「産後 自殺」「産後 離婚」「産後うつ 治し方」で埋め尽くされた。
理由なく毎晩泣き叫びたかった。でも、娘も夫も起こしてはいけないから、部屋を移動してひたすら泣いた。何故か死にたかった。人生で初めて味合う絶望感だった。何もかもから解放されたかった。
私が死んだら、娘も夫もどうなってしまうのだろうか。きっとちゃんと育てられるから別に私はいなくても大丈夫なのではないか。そんな考えが離れなくて、その度に泣いて泣いて泣き疲れて眠ってしまい、でも10分でまた起きる、その繰り返しだった。
それまでの私はどこにいってしまったのか、子育てから解放されたいと思ってしまう自分に殺意が湧いた。
娘の寝顔を見ながら毎晩泣いた。
こんなに小さくて可愛くて、守らないと生きていけない命を手放したくなっている自分をひたすら責めた。
そんな私を必死になだめ、涙を拭いてくれる夫に、離婚したいと何度泣きながら言ったか分からない。その度、悲しそうな顔をしていた夫が今も忘れられない。
夫から、お散歩でもお茶でもいいから、少しリフレッシュしてきなよ、と言ってもらって、外に出たこともあった。
歩きながら大泣きした。周りの目なんてどうでもよかった。とにかく自分が嫌で泣いた。でも、1時間も歩いてると、帰りたくなった。
娘に会いたい。夫に会いたい。
帰宅すると、夫は女性のホルモンバランスの影響などについて調べたり、関連本を読んでいた。
その日の夜、夫婦で寝ないで話をした。
今の私の精神状態と彼の考えの差を埋めて、これからどうしたら良いかを話し合った。
私がまた泣いたり怒ったり、感情がおかしくなった時には、お互いどんな気持ちでも、先ずは必ずハグをするという約束をした。
お互いの行動にイライラしても、ハグを。
言いたいことがあっても、ハグを。
どんなにムカついても、ハグを。
ハグは人を救えるらしい。
その日から私の産後うつは少しずつ、治ってきたように思う。
約1ヶ月間、期間にしては短く思えるかもしれないが、本当に辛かった。
女性にとって、ホルモンバランスはとっても大事。今ではとてもよくわかる。
そして、何より感じたのはパートナーとの関係性の維持や愛情表現のバランスをどう取るか。
産後うつからの学びは沢山あった。
私に足りないもの、夫に足りないもの、私の素晴らしいところ、夫の素晴らしいところ。そんなの圧倒的に素晴らしいことの方が多いじゃないかと気づいた。
私たち家族は確実に強くなった。
そして、産後うつから明けた瞬間から、娘との接し方が大きく変わった。
尊い命、守るべき命に変わりはないが、彼女も立派な人間であり、強い。
わたしは彼女と一緒に成長していく。
わたしは彼女を最大限サポートする。
わたしは彼女ではない、わたしは私をきちんと大事にする。セルフハグする。
わたしは完璧ではないのである、理想を一旦、脇に置いておくこと。
そう思えた時から、スッと楽になり、育児が楽しくて毎日が辛くなくなった。
今では、娘の一挙一動に夫と笑い、涙し、幸せな気持ちになる。毎朝の娘が起きて、おはようと言うとニコッと笑うのが愛おしい。
娘の笑顔でどんなに大変なことも忘れてしまう。できることが増えると自分のことより、嬉しい。自分が褒められるより、娘が褒められることの方が何百倍も何千倍も嬉しい。愛おしい。
夫と私にとって世界一可愛くて、宝物の娘。
夫と手を繋ぎながら一番近くで、成長を見守りたい。
これからも毎日、だいすきだよと言ってあげたい。
大袈裟じゃない、
わたし死ななくてよかった。