偉大なるモダンダンスの振付家への考察、マースカニンガムの置き手紙
モダンダンスを語るうえで忘れてはならない偉大な振り付け家がいる。
2009年に90歳で他界された、アメリカ人ダンサー兼振り付け家、マースカニンガム。
彼は、彼のダンスの“言語”を、たくさんのアーティストと一緒にコラボレーションして表現してきた。例えば、無音の音楽 4分33秒で有名なジョンケージによる作曲や、ポップアート界の巨匠アンディウォーホルによるステージセット、ファッション界では我ら日本代表コムデギャルソン川久保玲による衣装など。
(川久保玲とのコラボレーションに関しては、書きたいことが山ほどあるのでまた後日。)
前回の投稿で、言葉にできない“言語”への考察をしたんだけど、表現者ってそれぞれがテイスト=味 を持っている。
それを全部言葉で分かろうとするなんて、なんとも大それたことで、ようは感じてなんぼの世界なんだから、硬い頭を柔らかくしようぜ!って、いつも自分に言い聞かせている。
彼のダンス表現のなかで面白い手法は、ダンサーは作曲家の作る曲に合わせて踊るのではなくて、両者は無関係に、ただ同時に上演される。
それを彼は、非常にクレバーな例をあげて説明していて、
『例えば、今あなたがしていることと同時多発的に、今いる場所の外の通りから音楽や騒音が聞こえてきている。自分自身は思い通りのことをしているけれど、無関係な音は聞こえ続けている。』
これって日常では超自然な出来事だ。
ただ、ダンスの世界では、観客であるわたしたちは無意識に、ダンスは音楽にシンクロナイズすることを期待してしまう。
だからそこをあえてぶち壊す。
それを不調和と捉えるか、発見と捉えるかは観る人次第だ。
https://youtu.be/hWa_JjqhWmQ
マースカニンガム 制作の方法
彼はインタビューの中でこう答えている。
マースカニンガム
「私たちは、何事も言葉によって語られなければならない、という考えに慣らされています。
しかし、私にとっては動きが言葉の代わりになります。」
インタビュアー
「あなたの作品を観るにはダンスの知識が必要かしら?」
マースカニンガム
「そんなことはないと思いますよ。
むしろどんな作品が演じられるのか、全く知らない方がいいですよ。」
*****
「私はつねづね、人間についてこう考えています。
人の考え方は変わる、と。
私たちは変えることができるのです。
これまで知っていたのとは違うものに心を開くことができるのです。
私たちは日々同じことの繰り返しを強いられています。だから私は、可能な限り色々なやり方を試みているのです。」
言葉にならない“言語”を感じるのに、
知識がなくったっていいんだよ、と
届くべき人にはしっかり届くように
モダンダンスの巨匠は
そっと置き手紙をしていった。