ローザス ドラミングへの考察、混沌の中の法則性
ローザス(Rosas) はベルギー、ブリュッセルを拠点に持つコンテンポラリーダンスカンパニー。主宰で振付家のアンヌ•テレサ•デ•ケースマイケルはピナバウシュに続くと言われる才能の持ち主だ。そして創設メンバーには日本人の池田扶美代さんもいらっしゃる、国際色豊かなダンスカンパニーである。
30年の歴史のあるドラミングという作品は、ミニマル音楽の巨匠でアメリカ人音楽家のスティーブ•ライヒの曲に振りをつけたもの。
曲の特徴は、その民族的なドラムの音色に、ふたつの同一の音の流れが同期して開始され、一方がわずかに速度を上げることによって計算的なズレを生じさせる、といったなんとも数学的で詩的なアプローチ。そのズレがある時また調和する。
舞台上のダンサーは12人で、肌の色もそれぞれ。ライヒはドラミング作曲中アフリカ音楽を研究していたということからも、わたしの目に、ダンサーは舞台上を踊り飛び回る、ある種の部族のように映った。
この数学的な曲に、アンヌテレサはフィボナッチ数列というさらなる数学的アプローチで振付を加えている。
フィボナッチ数列とは、『どの数字も前の2つの数字を足した数字』ということらしい。
自然界にはこの数列が多く潜んでいて、木が枝分かれしていく時や、人間の気管支の枝分かれや、花びらの枚数など、多くが当てはまるらしい。。。
1+1=2
1+2=3
2+3=5
3+5=8
5+8=13
8+13=21…
ドラミングでは、交互に入れ替わっているダンサーたちが、実は、1人、2人、3人、5人、8人と、数列の方式を模して登場している。
むむむ。。。
考え尽くされている。。。
インタビューで池田さんは下のように語っていた。
『一見カオスに見えることの中に、美しい法則性がある……というと難しそうですが、例えば渋谷の交差点で、あれだけの数の人々がぶつかりもせずすれ違って歩道を渡っていく。そこにも“混沌と法則性”は見出せる。そうしたわたし達の日常にある様々な感覚の美しさを見て欲しい。』
ちなみに衣装は、ドリスヴァンノッテン。
なにを隠そう10年前、わたしは密かにリバイバル版の衣装を担当していた。
混沌の中の美しさに加担していた事実をひっそりと抱きしめて。