PRADA FW21 MEN への考察
プラダの秋冬メンズコレクションが発表された。個人的にプラダは大好物で、現代風に言うなれば、”推し“という括りになってしまうため、毎度多少のプラスバイアスはかかるのはあしからず。
ラフシモンズがプラダのデザイナーとして招かれ、前回の春夏のウィメンズがミウッチャとの共同コレクションとしての初お披露目。そして今回は初メンズ。
I live in Antwerp ではあるものの、わたしは別に熱狂的なラフシモンズファンではなく、むしろただのプラダファン、数少ない女性デザイナーのメゾンとして、その実用性とデザインが好きだから。いつも最先端である必要はなく、たまに感じさせる懐かしいbackwards感は、女性ならではというか、ミウッチャのボキャブラリーの引き出しの奥深さを感じさせる。
話はもどって今回のメンズコレクション。
わたしは職人でジャーナリストではないので洋服の批評とかはするつもりはなく、感じたのは“魅せ方”が秀逸だったこと。
コロナ禍で多くのメゾンが、コレクションの発表の仕方を模索している。これまで通りのスペクタキュラーなランウェイショーを無観客で見せるメゾンもあれば、ルックブック(イメージカタログ)に落とし込むブランドもある。
プラダは前回のウィメンズ同様、基本的にはモデルが早足で歩き、たまに動きがスローモーションになったりディティールにフォーカスを合わせて、服の重さ/軽さだとか質感を伝える、みたいなテクニックは再度採用さてれいるのだけれど、今回のメンズはその一連の動画が、息継ぎを感じさせない一つのコンテンポラリーダンス作品を見ているような気持ちになった。
https://www.prada.com/be/fr/pradasphere/fashion-shows/2021/fw-menswear.html
半ばでモデルが音楽に合わせて軽く踊っている場面があるのだけど、そうやって音楽が聞こえたら勝手に体が反応したり、例えば、パーティーに行くためのタクシーをひろうために手をあげたり、待ち合わせに遅刻しそうだったら小走りしたりする日常で、それぞれの洋服の良さはキャットウォークの動きだけでは伝えきれない現実がある。風が強い日にたなびくコートの裾から見える裏地が美しい事もあるし、皿洗いするためにまくった袖の感じがカッコいい瞬時だってある。
わたしが“ダンスファン”であることが相まったことも加味する必要はあるけれど、今回のプラダのビデオプレゼンテーションは、途中に挟んだダンスの動き(しかもそれがやらせっぽくなくて多分モデルがその場の雰囲気で“適当に”踊った感がむしろ良い)の相乗効果で、洋服の魅力を良く伝えていたと思う。
新しいとか、古いとかじゃなくて、どうわかりやすく伝えるか。むしろ方法は未知数でランウェイよりもたくさんの可能性を秘めている。(もちろんランウェイをする事は一大イベントで、その一回限りのライブ感はわたしたちの大きなモチベーションでもあるで、またいつかショーが出来る日を夢見て) こういう状況だからこそ、原点回帰のときかもしれない。