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世界一優雅な野獣 セルゲイポルーニンへの考察、美しきタトゥーのバレエダンサー

セルゲイ ポルーニン、
ウクライナ出身のバレエダンサー。
13歳で単身英国に渡り、
2009年、19歳という若さで英国ロイヤルバレエ団の史上最年少プリンシパルに抜擢される。
わずか2年後電撃退団。
国と年代と性別は異なるが、わたしの永遠のミューズ、シルヴィギエムも19歳でパリオペラ座のエトワールに抜擢された。で、彼女もわずか4年後、パリオペラ座を電撃退団している。
若くして才能を発揮すると、その才能は押さえつけられることによって、新たな行き場を求めるのだろうな。特にバレエの世界は規律が多く特殊な世界だと聞く。

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セルゲイの話に戻ると、彼が踊った”Take me to church” をYouTubeで見て覚えている人もいるだろう。

タトゥーの一流バレエダンサー!!
破天荒!!イケメンだしね!
ちなみにわたし自身、タトゥーを入れているので、それに対して抵抗がある訳ではなく、単純に伝統を重んじ縛りやルールがたくさんあるバレエの世界で、タトゥーを入れている彼にとても興味を持った。
以前、ダンサーの友達と話していた時に、彼は、“タトゥーは自分にとって人間の証、ステージ上では野生的動物でありたいから、自分は肌に怪我以外の傷は残したくない”って言っていたのが印象的だったので。

ということで、セルゲイ ポルーニンを知るために、彼のドキュメンタリーを見た。


ウクライナの決して裕福でない家庭で育ったセルゲイ。彼を有名バレエ学校に行かせるために父と祖母は外国に出稼ぎに出て、一家がばらばらになる。(劇中では、まるでそれは離れ離れの孤島と表現されていて悲しくなった。)
家族の絶大なサポートで彼は13歳の時、英語も喋れない状況で、単身でイギリスに留学した。そして彼が15歳の時、両親が離婚した。それまで必死に頑張ってきた理由、有名になってお金を稼いで、自分のために離れ離れになった家族を一つに戻したいという目標が絶たれた。小さい頃に背負ったその使命は、今後どう頑張っても果たすことが出来なくなった。才能の裏に隠された苦悩は、タトゥーよりも深く彼の肌にきざみこまれている。


話は“Take me to church” に戻るのだけど、
あのパフォーマンスは彼の引退作品のはずだった。光の中で踊る彼は、そのタトゥーももちろん彼の肌の一部で、それは彼のメッセージであって、優雅に宙を舞う野獣だった。

一度は引退を決意したけれど、バレエ人生を捨てきれなかった美しい野獣は、英国バレエ退団後踊っていたモスクワバレエ団に復帰する。
劇中最後に、セルゲイがはじめて父、母、祖母を彼のステージに招待するシーンがあるのだけれど、公演後、祖母がセルゲイに、
「疲れたでしょう、許してね。」
と、話しているシーンがあって、
この一言が、全部を語っているなぁ、と思い自然に涙が出た。

その後、彼はセルゲイポルーニン基金を設立し、恵まれない子供や若者たちにダンス教育の機会を提供している。

美しい野獣を知って、
持って生まれた才能をどう使うかも才能だ、
と、思い知らされた。


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