音のない世界を、いまも胸に抱いて。
この場で生まれていく「対話」が展示物です。
その言葉に、一目惚れでした。
夏休み最後の日に、東京のダイアログ・イン・ミュージアム「対話の森」にて、ダイアログ・イン・サイレンスを体験してきました。
知った瞬間から、行こうと決めていました。
願いを叶えるように計画を立て、どきどきしながらチケットを購入し、迎えた当日。
大阪から新幹線に運ばれ、東京の電車網にもまれ、Googleマップに助けられながら、なんとか到着。
深呼吸して開けた扉の先に広がっていたのは、「人」が感じられる空間でした。
受付でスタッフの方の笑顔に触れて、かまえていた緊張はさーっと溶け、
荷物をおいて手ぶらになってから、しばらくあたたかくて光に満ちた空間を味わっていました。
「お待たせしました」
わたしを含めて6名の参加者と、1名のアテンドさん。
やわらかい「はじめまして」を終えたら、いよいよ、ヘッドホンをつけて、90分間の音のない世界へ。
あなたの楽しみを奪いたくないので内容ではなく感想を書きますが、わたしにとってそこは「安心」の場所でした。
初めての体験だったはずなのに、全く違和感なく「対話」ができたことにびっくりしたし、
音がないと、こんなにも身体への力の入れ方が違うんだと思いました。
「ここにいていい」をおびやかされることがなくて、対話から表現がうまれていくことが愛おしくて、たのしくて。
この世界よりもコミュニケーションが取りやすかったし、わたしがわたしの感覚を取り戻した気がして、すごく心地のよい空間でした。
そして、
あっという間の90分間も終わりかけのときに交わした言葉を、残させてください。
最後、アテンドのバンダナさんに、
「どうでしたか?」
と聞かれ、
あちらの世界にあまりにも違和感がなかったわたしは、
「ヘッドホンを外したとき、違う世界にきたみたいでした」
と答えました。
「音のない世界は、どうだった?」
と、さらに言葉を重ねてくれたアテンドのバンダナさんに、うまく言葉を伝えられないでいると、
「あなたは、安心した顔をしていましたね」
と伝えていただきました。
あぁ、そうか、と気づきました。
この違和感のなさは安心だったんだ、と。
生きているだけで、刺激が多い。
HSPという性質があるわたしは、世界や人と交わることに体力と気力を多く要してしまうことを、引け目に感じていました。
だけど、音のない世界では、無理な刺激が入ってこない。目の前の人やそこでの対話に集中できることが、安心につながっていたのだと思います。
そして、もうひとつ、気づき。
対話は、しゃべるだけではない。
その最後のやりとりは特に、縛っていたものをするするとほどいていくような言葉の渡し合いでしたし、
わたしの引け目も刺激への不安も全部、その笑顔で包み込んでくれるようなバンダナさんの笑顔と言葉に、強い肯定感をもらいました。
わたしを認め、あなたを知り、ちがいを受け入れる。
そこに流れていた時間は、間違いなく、対話でした。
終わってから、サポートをしてくださったスタッフのさとはるさんと、アテンドのバンダナさんと写真を撮ってもらい、ありがとうございましたを伝えてから、ミュージアムを後にしました。
しばらく余韻が抜けなかったわたしは、余韻を生活に活かすために、ささやかな目標を立てました。
あの世界で自然とできていたように、わたしがわたしを認め、日々できることから生活をする。
自然に楽しめるくらいのペースで人と関わり、気張らずにコミュニケーションをたのしむ。
刺激にうっとなったら、さなぎにこもるように、そっと心の殻を閉じる。
無理して言葉を発信しようとしない。
…書いてみて、心がまたすこし軽くなってきました。
夏の終わりの思い出をくれたあの世界を、いまも胸に抱いて、
秋をたのしみながら生きていこうと思います。
この体験が、ひとりでも、必要なあなたへ、届きますように。
【対話の森】
住所:複合施設「アトレ竹芝」内 アトレ竹芝シアター棟1階
(東京都港区海岸1-10-45)
開催時間:11時~20時 ※事前予約制
体験料金:大人3500円、中高生・学生2500円、小学生1500円(税別)
WEBサイト:https://taiwanomori.dialogue.or.jp/