おばあちゃんのお菓子まき
「はーい電気消して準備してよー!」
2月3日 節分
兄と私が父親の田舎で暮らしていた頃の話。
夜ご飯を食べ終わりひとだんらくしていると
おばあちゃんの掛け声がかかる。
兄と私は部屋の灯りを全部消してビニールの袋を持ってスタンバイする。
真っ暗な部屋も目が少しずつ慣れて見えてくる。
私は、兄から少し離れた場所に立つ。
「いいよー!」
兄と私がそう言うとおばあちゃんは
「じゃあいきますよー!」と私たちめがけて
『鬼は〜外〜福は〜内〜!!』
と言いながらお菓子をバサーッ!!とまいていく。
兄と私は必死でまかれたお菓子をビニール袋に入れていく。
『鬼は〜外〜福は〜内〜!』
おばあちゃんは兄の方、私の方へとまんべんなくお菓子をまく。
それなのに素早い兄は、私の周辺のお菓子も
お構いなく自分のビニール袋に入れていった。
「お兄ちゃんばっかずるいっ!私のとらんといてーっ!」
「私のとかないもんねー👅」
いつも兄はこんな感じだった。
もちろん勝ち負けではないのだけど、必然的に兄の方が食べれるお菓子が多くなる。
私だっていっぱいお菓子を食べたい。
だからどうしても兄とやるとなると負けたくない気持ちになっていた。
「はーい!終わりー!」
おばあちゃんの掛け声で節分のお菓子まきが終わる。
電気をつけて兄と私は机の上にビニール袋のお菓子をひとつずつ置いて何個あるか数える。
私「1〜2〜3〜…13。。。」
兄「1〜2〜3〜…13〜14〜15〜…20〜21!!いぇーいお兄ちゃんの勝ちー!」
兄に数で勝ったことはなかった。
おばあちゃんは、いつも残念でしたーとニコッとしてくれた。だからといって平等に数を合わせることもなかった。
いつも兄よりお菓子を多くとれる事なかったし悔しい思いをするんだけど私は、このお菓子まきが好きだった。
普段食べないキャンディ包みされたクリームサンドのクッキーがあったから。
お花型のクッキーにバニラクリームが挟んであるもの。
お花型のクッキーにコーヒークリームが挟んであるもの。
そのクリームサンドクッキーを小さなお花模様がかかれたフィルムでキャンディ包みされていた。
そのクリームサンドのクッキーがほしくて必死だったのかもしれない。
お菓子まきが終わってテーブルにひとつずつ置く時、あっお花のクッキー♪と思いながら
ビニールの中を見てまだお花のクッキーある♪って嬉しかった。
おばあちゃんのお菓子まき。
節分と関係のないお菓子まき。
あの時は、当たり前にお菓子まきだったけど
今思えば、兄や私に少しでも楽しんでもらおうとおばあちゃんが考えてくれたのかな。
豆より私たちが喜ぶお菓子で楽しませてくれたんだ。
それからウチの節分もおばあちゃんのお菓子まきを受け継いでお菓子をまくことにしている。
去年は、私の都合でやらずだったから今年は、何日も前から息子にお菓子まくのやってや!と言われ続けていた。
節分当日。
塾に行ってていない姉を気にすることなく
息子は、1人参加のお菓子まきを楽しみに待っていた。
ご飯を食べたあと、
「はーい、電気消すよー」
息子は、大きな袋を持ってスタンバイ。
「いくでー!鬼は〜外〜福は〜内〜!」
お菓子をまくと息子は、大きな袋の口を開けてまいたお菓子をキャッチ!!
「鬼は〜外〜福は〜内〜!」
お菓子をナイスキャッチ!
息子「いぇーい!めっちゃ入ったー!」
私「なんか違う遊びになってるやん笑」
息子「ほとんどキャッチしてるで!」
楽しそうだった。
もしかしたら来年は、もうさすがにやらないよーって言われるかもしれない。
分からないけど子供たちのウチの豆まきはお菓子をまいてたなって思い出に残ってくれると嬉しい。
おばあちゃんのお菓子まき。
おばあちゃん、あの時は当たり前の光景でお礼を言うこともなかった。
私も子供たちにお菓子まきしてるんだよ。
その時に言いたかったよ。ありがとうね。
お花型のクリームサンドクッキー。
兄があげるわってめずらしくくれた。
嬉しくてひと口食べたらクリームが入ってなかった。
兄をチラッと見ると笑っていた。
やられた。
今は、キャンディ包みじゃなく個包装になって売られている。
だからこんないたずらもされることはない。
私の節分の思い出。
田舎のことを書いた記事です。