わかりやすい天理教⑮「かしもの・かりもの」

「かしもの・かりもの」というのは、天理教の教えの中でも最も重要な、基本教理の一つです。

私たちのこの身体や、世界の一切は、神様からお借りしている物だ。

だから、神様から見れば「かしもの」であり、人間から見れば「かりもの」です。

それを「かしもの・かりもの」という言葉で表しています。

言葉にすればこれだけのことなんですが、何だかイマイチ、理解できないですよね。

それを今日は、なるべく分かりやすく、説明していきたいと思います。

①「借りている」って、どういうこと?

こんなお話があります。

キリスト教の方に「かしもの・かりもの」について説明した時、「Oh!キリスト教と一緒だね!」と仰ったというのです。

「だってキリスト教でも、この身体は神様からの゛Gift(贈り物)“だって教えられているからね」と。

それを聞いた天理教の人は返しました。

「確かにそれは似ていますね。けれど、身体がGiftであることと、かりものであることの間には、大きな違いがあるんです」と。

Giftということは、それはもう神様から人間にもらった物であり、人間の物です。

けれど、かりものということは、神様から人間に借りているだけで、結局それが誰の物かというと、神様の物です。

私たちは、神様の所有物を、借りて使わせてもらってるだけなんですね。

キリスト教では、自分の身体以外にも、動植物や、自然環境など、この世の全ての物は、人間の為に神様が創った物であり、そのまま人間に与えられた物だと教えられます。

なので、キリスト教の論理の中では、世界中の全ての物は、人間が自由に使って良いということになっています。

この考え方に基づいて、自由主義が生まれ、個人主義が生まれ、資本主義が生まれて、それが今の世界の中で、一番ありふれた、オーソドックスな考え方になっています。

日本でもこの「個人は誰でも、自分のやりたいことを自由に求めて、その為には、他の個人にさえ迷惑をかけなければ、何をやっても構わない」という考え方は、随分と一般化しましたよね。

でもそこには、他の人間には迷惑はかけちゃダメだけど、例えば自然環境に迷惑をかけてはいけないとか、動植物に迷惑をかけちゃいけないとか、そういう考えは入っていません。

だって、自然環境も、動植物も、自分の物、なんですから。

そういう考え方の上に、今の世界は成り立っています。

その結果として、環境破壊とか、地球温暖化とか、大量絶滅とか、色んなことが世界で起きてますよね。

でも、本当にこれで良いんでしょうか?

天理教では、自然環境も、動植物も、全部が全部かりもので、神様の物だって教えられています。

人間は、木を切って家を作ったり、動物を食べたりしないと生きていけませんから、天理教の人ももちろん木を切るし、動物を食べます。

でもそれは、自分の物だからじゃありません。

神様が、人間が生きていけるように、神様の物を貸して下さっているから、それを借りて、使わせて頂いているんです。

私たちは自分の物ではなく、借り物を使って生きています。

僕は本を読むのが好きなんですが、それこそ勉強をする為に学術書やビジネス書なんかを読む時には、次には大切な部分だけを読み返せるように、付箋を貼ったり、ページの端を折ったり、マーカーも引くし、自分の考えを書き込んだりもします。

それは、その本を、自分のお金で買った、自分の物だと思ってるからですよね。

けれど、時には、友達からおすすめの本を貸してもらう時もあります。

図書館で借りてくることもあります。

そんな時、端を折ったり、書き込みをするかって言われると、もちろんしません。

それどころか、ページを大きく開くことすら遠慮しながら読みます。

それって、その本が、借りている物だからですよね。

人の物だ、借りている物だって思ったら、大切に使おうと思う。

去年話題になったあおり運転の人が、試乗車でめちゃくちゃなことをしていたように、近頃では、そんな価値観すら少しずつ崩れてきているのかもしれませんが、でもこの考え方って、とても大切な考え方だと思うんです。

こんな考え方が、少しずつでも世界に広がっていけば、この世界って、だんだん良くなっていくんじゃないでしょうか。

借りている、って、僕はそういうことだと思うんです。

少し難しい話になったり、長くなったりしましたので、一旦ここで切って、続きはまたnoteを分けて書いていきたいと思います。

最後に、今のこの便利で発展した社会は、キリスト教の論理に基づいた、自由主義や資本主義の考え方があったお陰で在るものだと思いますし、僕はそこに、間違っているとか、批判したい意図は全く持っておりません。

そのことだけ、注記しておきたいと思います。

このnoteの続きは、「その②『心遣いが一番大切って、なんでなの?』」まで。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?