
#08 「NHK子ども科学電話相談」ラジオだからこそ本当におもしろい
学校が夏休みに入る頃、
車で移動する時はラジオで
「NHK子ども科学電話相談」をよく聴いていた。以前は「NHK夏休み子ども科学電話相談」だった。
学校が夏休みに入って甲子園が始まる前までの
特別編成番組だったから。
そういえば、
冬休みに放送されたこともあったように記憶している。
現在は日曜午前のレギュラー放送になったようだ。
わたしはこの番組が大好きだ。
どれだけこの番組がおもしろいか、
職場で同僚に熱弁を振るったら、
大抵の人にはドン引きされてしまうのだけれど、わたしは諦めず布教活動をする。
興味を示したり、共感してもらえる人の多くは、何かしら研究していたことのある人、
理科を専門とする学校の先生に多かったと思う。
自然科学に対する子どもたちの疑問・質問に、
それぞれの分野の専門家の先生たちが
真剣に答える、
それが「NHK子ども科学電話相談」
ただ、この番組はラジオ。
テレビではない。
ここが、この番組のおもしろいところ。
ラジオなので、
質問する子どもも、
答える先生も、
音声言語のみでやりとりをしなくてはならない。これは結構な縛りだ。
幼さゆえに、
的確な言語表現を持ち合わせていない場合、
その質問は焦点が定まらず
輪郭がぼんやりしているように感じられる場合もある。
専門家同士ならば、
専門用語をうまく使って、
イメージを共有しながら
話を進めていくことはできるだろう。
ただ、相手は子ども。
どのくらいの知識を持って質問しているのか
話し始めるまでわからない。
先生たちが
「どんな時にそう思ったの?」
「何を見て考えたの?」
子どもの疑問の本質がどこにあるのか、
ことばを通して探っていく。
その分野が大好きすぎて聞きたいことが溢れ出すように話す子ども、
電話の向こう側で親に促されてようやく口を開く子ども、
観察を重ね、自分でも調べてみたけれど、それでもわからなかったという子ども、
先生のことが好きすぎて、質問するためにより知識を深めてきた子ども、
とにかく色々なタイプの子どもが登場する。
質問の輪郭が見えてきたら、
先生たちの回答が始まる。
お話をして質問した子どもが
何を知っていてどのくらい理解できそうか、
会話の中できめ細やかに確認しながら
答えていく。
疑問を持つ子どもに、
科学的な真実が真っ直ぐ伝わるように、
それぞれの先生が
伝わることば・表現を選びながら、
真摯に答える。
図や動画を示しながら説明ができれば、
少しは楽になるのだと思うが、
ラジオなのでそれは無理。
ことばのやり取りだけで
同じイメージを念頭に浮かべながら
話をしていかなければならない。
結構な荒技だ。
子どもが理解・納得できたかどうかは
最後の挨拶の声でなんとなく伝わってくる。
疑問を解消したい子どもも、
子どもの質問に応えたい先生たちも
理解してほしい、理解したいと、
どちらも真剣なのだ。
子どもたちは、
先生たちに対して期待と尊敬を抱いて問い、
先生たちも、
子どもたちを尊重し将来への期待を持って応える。
科学への興味を共通言語として、
世代を超えて真理を語り合う。
科学と好奇心への愛に溢れた番組。
そんな、NHK子ども科学電話相談がわたしは大好きだ。