見出し画像

第7回「袴田事件から考える再審制度」

 こんにちは?(こんばんは!)大阪公立大学・HR(人権)副専攻4期生によるポッドキャスト番組「ヒトケン」です。


 第7回となる今回は、「袴田事事件から再審制度を考える」と題して、2024年10月9日に無罪が確定した袴田事件をベースに、日本の再審制度の問題点を、大阪公立大学副学長の金澤真理先生にお話いただきました。まだ放送をお聞きでない方は、ぜひ下のリンクからお聞きください!


今回収録に参加したのは、ねね、しんちゃん、ぼーちゃんです。
ちなみに、今回の編集後記は、ねねが書いています。どうぞ最後までお付き合いください。

 さて、今回収録に参加したのは上の三人ですが、準備段階を含めると、実は第一回以来、はじめて4人全員が関わった放送でした。また、今回の放送のテーマは「再審制度の問題点」。これまでの放送と違い、学術的な話も含んでいたので、特に準備が大変だった回でもあります。そんな準備の中で、そもそも再審制度とはなんぞや?裁判制度とはなんぞや?と、頭に「?」を浮かべながら読み合わせた本がこちらの「再審制度ってなんだ?」(村山浩昭・葛野尋之編 2024岩波ブックレット)です。

「再審制度ってなんだ?」(村山浩昭・葛野尋之編 2024岩波ブックレット)
雑な写真でスミマセン…

とても読みやすく、分かりやすく、皆さまにもぜひ手に取っていただきたい一冊です。

 ところで、この編集後記を執筆しているねねは法学部の学生です。
しかし、再審制度の仕組みはおろか、制度上の問題点についてもほとんど知りませんでした。
ですが、別に私がモラトリアム人間というわけではありません。(たぶん)

事実、刑事訴訟法(再審に関する規定は、この「刑事訴訟法」に置かれています)の授業もきちんと履修しましたし、単位も取りました(大事!)。
この単位をいかにして取得したか、という話だけで一回分の放送テーマとなりそうですが、いったん置いておきます。ではどうしてほとんど何も知らなかったのか、というと、単純に授業でまったく扱わなかったからです。授業コマやカリキュラムの都合でしょうか。教科書でも、最後の数ページにちょろっと書いてあるだけでした。

ということで、他学部のメンバーと一緒に頭に「?」を浮かべながら頑張ったのです。

 そんな私が最も驚いたのは、現行法では、再審事件の処理を進めるかどうかが、個々の裁判官の「職権」に委ねられるということです。しかも、処理の期限なども定まっていないとのこと。そういう状況では、多忙な裁判官が、期限付きの案件を優先してしまい、その結果再審事件を後回しにしがちになるのも仕方が無いでしょう。そしてその結果、再審事件がいつまでも放置されてしまうというのにも納得がいきます。「イチケイのカラス」の入間みちおよろしく、「職権を発動」してくれればよいのですが、そうはいかないようです。

そのほかにも、証拠開示制度や検察官特別抗告の問題が放送では挙がりましたが、これが放置されているというのも、あまりにも不正義だと思います。


 それから、今回の放送や準備を踏まえて思うのは、司法制度のもろさです。私たちは、ともすれば裁判や捜査で間違いが起こることなどないと考えてしまいがちです。しかし、罪を犯すのが人なら、捜査するのも、裁くのも人です。そして人はミスをします。したがって、捜査や裁判手続の中で「ミス」があるのは、当たり前のことです。そもそも、日本では3回まで裁判を受けることができます(三審制)が、このこと自体が、判決が誤っている可能性を前提にしています。裁判が、いつも正しいとは限りません。

にも関わらず、その誤りを回復する手段としての再審制度には不備が多すぎる。素人目にも、あまりにお粗末に映ります。やはり、再審法の整備は急務です。

 …という編集後記を書いているうちに、再審法改正を見据えた議論が法制審議会で始まるということが明らかになりました。今こそ、立法当事者の方々には再審法改正のため、砕身してほしいところですし、私たちもとしても、最新のニュースに注目していきたいところですね!

 また、重要なのは再審法改正だけではありません。
再審無罪判決がでるということは、それがえん罪事件だったということです。再審法の整備と並行して、えん罪を防ぐ手立てを講じることも大切だと思います。

 長くなりました。もう締めます。
が、その前にもう少し勉強したい方向けに、本の紹介を。

まずは先にご紹介した「再審制度ってなんだ?」(村山浩昭・葛野尋之編 2024岩波ブックレット)です。150ページ程度の薄めの本ではありますが、袴田事件の再審開始決定を出した村山裁判官を始め、さまざまな立場の方が書いた本で、非常に興味深い一冊です。再審の仕組みからその問題点まで、多様な論点が網羅されているのが特徴だと思います。
この本は、今回の放送にご出演いただいた金澤先生の一押しでもあります。

それから、「人が人を裁くということ」(小坂井敏晶 2011 岩波新書)もおすすめしたいです。少し古い本ですが、著者は社会心理学者なので、えん罪が発生するメカニズムや裁判の本質について、法律の専門家とはまた違った視点からの考察がなされているのが特徴です。新書なので、こちらも手に取りやすいかと思います。
ちなみにこの本は、ねねのおすすめです。

どちらの本も大阪公立大学の図書館に入っています
公立大生の方はぜひ。
学外の方も、利用者登録をすれば借りることができます。

 この副専攻で勉強する機会を持たなければ、再審制度についてじっくり考えることは、おそらくなかったのではないかと思います。そう考えると、再審制度の問題点は、世の中の人にほとんど知られていないのでは!?という懸念が浮かび、次いで、なぜ知られていないのだろう?という疑問が浮かびます。

私見ですが、やはり「再審」を遠いものと考えている人が多いからだと思います。

インターネット全盛の現代。情報はちまたにあふれていますが、「知ろう!」と思う気持ちが問題に関わっていく出発点であることは、これまでもこれからも変わらないはず。

この放送が、その「知ろう!」と思う気持ちを持つキッカケを提供できたのなら、嬉しい限りです。

今年も終わりです。どうぞ良いお年を。


次回は「フィールドワークから現代の部落差別とまちづくりにつ
いて考える」回です。2024年に秋に、副専攻の授業の一環としてお邪魔したフィールドワークの模様をお伝えします!
配信日は1月10日。ぜひお聞きください!!

いいなと思ったら応援しよう!