【2024】夏のあとがき
「アートはおもちゃです。子どもにおもちゃが必要なように、大人にはアートが必要なのです」
オノ・ヨーコがあるテレビ番組でそう語っているのを見て、僕は感銘を受けました。
”おもちゃ”は遊ぶためにあります。では、人はどうして遊ぶのでしょう。それはきっと生活や社会で繰り返される実務や義務感から、解放される時間が必要だからだと思うのです。
犬を野原で放すように、心も遊びにより解放され、走り回らせることでスッキリする。スッキリしたらまた日常に戻って、以前よりも張り切って生きることができる。
アートにはそういう役割があるのだと僕は信じています。社会にとって必要だから、アートが人間社会に生き残っているのだと。
’ひとひら’は今年『KAGAYAKI』と『MAGICAL』という2曲(本当はもう1曲あった)で本祭を踊り、夏シーズンを遊びきりました。中でも『MAGICAL』については多くの踊り子さんの性癖に深く刺さったようで、「魔法少女になりたい!」と光るマジックワンドを自腹で購入したり、それを見て子どもが「私もやりたい!」と泣き出したりと、大変にぎやかな場面となりました。
よさこい祭りの”関係者”として様々なチームを担当している感覚としては、全体として上意下達、与えられたタスクをこなすゲームをやっているチームが多いような印象を持っています。そういうゲームを選ぶ人が多い理由は、少し掘り下げて考えてみたいものです。
そんな中にあって、頭髪制限はないし、出席制限もなく、あるいは踊り子さんやスタッフが自主的に創作するのを許容している’ひとひら’は、ちょっと異質な存在かもしれません。そもそもずっとテーマを変えず巫女と神社のスタイルであるのは、かなり異質です。
異質であることは、むしろ誇るべき点だと感じています。他チームと比べる必要がない存在になりたいと思っているからです。
もちろんPDCAを回してチーム運営を良くしていくことは必要です。それを含めた上で「ここにしかない価値」をどれだけ作り出せるかが、チームの目指すべきポイントだと考えています。異質さは、メリットでしかない。
この例えはまったく分からないならスルーしてもらいたいのですが、我々はスーパーマリオのRTA(タイムアタック)ではなくて、マインクラフトの建築やどうぶつの森をやっている。F1やサッカーではなく料理や焼き物をやっている。オリンピックよりもパラリンピックをやっている。
そういう世界観が’ひとひら’の通奏低音として流れているように感じています。
アートは大人のためのおもちゃであり、それは人間にとって必要だから生き残っている。
今年も初めて踊る、初めてよさこい祭りに参加するという踊り子さんがたくさんいました。彼女たちがこの経験を経て、、、つまり心が解放されて走り回って、スッキリしてまた日常に帰ってもらったなら、一人一人の小さな心の変化は、きっと社会を少しずつ良くしていけるはずだと信じています。
よさこいチームを続け、新たに踊り子さんを踊らせることは、まさに社会貢献活動です。
今後も世相に媚びず、我々の思う美しい演舞とチーム運営を志していきます。ご協力いただきありがとうございました。これからもよろしくお願いします。
2024年9月 よさこいチーム’ひとひら’代表 西岡良治