[DX事例67]AIによる修学サポートで学生一人ひとりにあわせた教育を実践_金沢工業大学
ITコンサル×パートナーCFOのタナショーです。
このnoteではDX事例やIT活用事例の紹介を通して、経営者の方がITを身近に感じたり面白いと思ってもらえることで、企業の成長に役立つ情報をお届けしていきます。
今回は教育分野からです。石川県に本拠地を置く、工学系の私立大学である金沢工業大学の教育DX(Plus-DX)です。
デジタルを活用した大学・高専教育高度化プラン!? 金沢工業大学のDX事例
Plus-DXという言葉をご存知でしょうか?
上記の訳からも読み取れますが、Plus-DXは文部科学省が進めている教育DXの取り組みです。新型コロナウイルス感染症等による環境変化に対応し、デジタル(オンライン)とフィジカル(対面・実地)の両面で効果的な高等教育を目指す活動となります。
金沢工業大学はこの教育DXに積極的に取り組んでおり、2021年3月にはPlus-DXとして採択されました。今回は金沢工業大学のDX事例をお伝えしていきます。
①学生の入学から卒業までのデータをAIが分析して最適な修学アドバイス
教職員が学生に対して指導を行う場合、学生の修学状況や進路希望などの多面的な情報をもとに指導を行う必要があり、学生一人ひとりに合わせた修学サポートが難しい状況でした。
金沢工業大学は修学に関する様々なデータベースを統合し、AIが分析することで、学生一人ひとりに合わせ最適な修学アドバイスを行う取り組みを開始しています。
統合・AI分析するデータは「e-シラバス等のLMS(試験、レポート提出情報)」「修学・履修・進路・成績などの修学情報」などの大学在籍時の修学情報となります。これをもとに学期ごとに修学に対するアドバイスを行います。
学生個人のミクロ分析だけでなく、マクロ分析も行います。履修している各科目名とその成績および出席率から「学生が躓きやすい科目を特定」を、退学者、留年生の面談記録をテキスト解析し、「退学、留年に至った理由の明確化」を行うことで、より効果的な修学ができるシラバスに改良していくとのことです。
特にユニークなのが、大学卒業後の進路情報も分析対象にしていることです。卒業後に「どの企業に就職したか」や「平均年収」に関する情報を集め、当時の学生の修学状況との関連性を見つけ出します。そうすることで、学生が希望する就職や将来を叶えられるよう、在学中の要所要所で最適な修学アドバイスができるとのことです。
②離れた距離であっても対面と同等のコミュニケーション
遠隔地の教室や生徒同士をリモートで繋ぐ取り組みとなります。
コロナ禍においてリモートワークと同じくらいリモート授業というものも一般化しましたが、リモート授業では対面のような深いコミュニケーションができないという問題があり、学生の修学に悪影響が出やすい状況が続いています。
金沢工業大学はこれらの問題を解決するために、多地点等身大接続システムを設置しました。
上図にある通り、長大なディスプレイ上には接続先の人物が等身大で表示されます。このシステムは県内の私立大学 (金沢医科大学、金城大学、星稜大学、北陸大学など)にも導入されており、石川県内の私立大学同士での相互のコラボレーションに役立てようとしています。
また、金沢工業大学はヘッドマウントディスプレイも導入し、教育現場への活用を始めています。金沢工業大学は産学連携を活発に行なっていますが、コロナ禍で企業側と対面での議論をすることが難しくなりました。
特に、機械や制作物などは実物を通しての議論が必要なことも多いため、ヘッドマウントディスプレイとVR/ARコンテンツを導入しました。上図のような、CADデータ等を共有する場合や身体的な感覚を必要とする場合に、ヘッドマウントディスプレイを導入することで、リモートで実空間で行われる議論に近い状況を再現できているとのことです。
経営戦略とDXの関連性について
金沢工業大学は教育目標の一つに「自ら考え行動する技術者の育成」というものを掲げており、その目標の通り学生自身に考えさせるカリキュラムを用意していて、「金沢工業大学は日本一課題の多い大学」と呼ばれることもあるようです。
金沢工業大学はコロナウイルス流行による教育業界の変容を受けて、大学教育のあり方を根本から見直す機会と捉え、2020年12月には教育におけるDXを強く進めて行く方針を決定しています。
驚きなのが、令和2年度入学生から全学部・全学科を対象に「AI基礎」「ICT基礎」を必修科目としており、その熱量の高さが伺えます。
さらに、金沢工業大学はこれらの取り組みを通して、政府が提唱する未来社会「Society5.0」をリードする人材育成に力を入れています。
金沢工業大学は、「学生自身がAI/ICTについて学ぶ」教育課程を用意するだけでなく、AIやDXを活用して「学生の修学をサポートする体制」も用意することで、Society5.0社会・ポストコロナ社会で活躍できる人材育成に力を入れようとしています。
まとめ
いかがでしたでしょうか? 久しぶりのEdTechでしたが、今回は学生一人ひとりの学びに応じた教育を実現するためのDX事例でしたね。
「学生時代で学んだこと」は今後の人生に役立つことも多いので、今回のような学びをサポートするDXは大変意義のあるものだと思います。
特に金沢工業大学の教育目標である「自ら考え行動する技術者の育成」が素敵ですね。タナショーも「考え続けること」を会社の理念にするくらい大事にしているのでとても共感してしまいました。
未来を楽しくよりよい生活にしていくため、IT活用を実践できる人材がどんどん増えてくれたら嬉しいですね♪
次回の記事も楽しみにしていただければと思います。
タナショー
参考にさせていただいた情報
金沢工業大学HP
https://www.kanazawa-it.ac.jp/index.html
金沢工業大学「金沢工業大学における教育デジタルトランスフォーメーション-多様な学生の教育と時間と空間に制約されない学び-」
https://www.ssken.gr.jp/MAINSITE/event/2021/20210913-eduf/lecture-03/20210913_eduf_yamamoto.pdf
金沢工業大学「金沢工業大学の取り組みが、文部科学省のデジタル活用教育高度化事業に採択。AIによる学生支援、AR(拡張現実)などを用いた新しい学びの場の推進へ」
https://www.kanazawa-it.ac.jp/kitnews/2021/0313_dx.html
金沢工業大学【KITの新たな産学協同教育研究】未来社会「Society5.0」をリードする人材を目指す。社会課題の真の解決に産学連携で挑む「KITコーオプ教育プログラム」
https://www.kanazawa-it.ac.jp/kitnews/2020/feature.html
文部科学省「デジタルを活用した大学・高専教育高度化プラン (令和2年度第3次補正予算(案))」
https://www.mext.go.jp/content/20201224-mxt_senmon01-000011618_1.pdf
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