[DX事例90]建物内のすべての設備を連携することで建物の価値をアップデートする_清水建設株式会社
ITコンサル×パートナーCFOのタナショーです。
このnoteではDX事例やIT活用事例の紹介を通して、経営者の方がITを身近に感じたり面白いと思ってもらえることで、企業の成長に役立つ情報をお届けしていきます。
今回は建設業界からです。大手建設メーカーで創業から200年超の老舗企業である清水建設株式会社の建物DXです。
建物内の設備を連携することでソフト面での付加価値向上!清水建設のDX事例
清水建設はスーパーゼネコンと呼ばれる企業で、伝統的な神社建築や寺院建築の建築実績があり、他にも歌舞伎座の修復作業や広島原爆ドームの保存工事なども担当した実績があります。
そんな老舗でありながら匠の技術を受け継ぐ清水建設ですが、昨今はデジタル活用に注力しデジタルゼネコンへの変革を進めようとしています。そんな清水建設のDX事例をお伝えしていきます。
①パソコンのOSのようにアップデートする建物? 建物OS「DX-Core」
タナショーもいくつかの記事で取り上げていますが、ビルや建物内のDX技術としてロボットやデジタルサイネージなどのさまざまな技術が登場しています。
もちろんビルの施設はそれ以外にも、AIカメラや空調、エレベータや入場ゲートウェイなどの設備や機能がありますが、設備の数が増えるほど設備管理が面倒になってきます。
清水建設はこの設備管理の面倒さを解決し「建物内設備をIoT技術で繋ぎ、統合的に管理する」ことを目的とした建物OS「DX-Core」を開発しています。
建物OSは何だろう?と疑問を浮かべてしまうワードですが、これはパソコンの「OS」のことを指しています。異なるベンダーやメーカー製品の区別なく、建物内に既設してある設備や、新しく増えた設備をすべてDX-Coreに接続することで一元管理を可能とする。
究極的にはスマホ1つで館内のすべての製品やサービスをコントロールすることを目的としているそうです。
DX-Coreの機能である「館内にあるすべての設備を制御・コントロール」することのメリットはいくつかありますが、特徴的なものとして設備同士の連携をすることにより新しいサービス構築やUXの向上が挙げられます。
後述でもあげますが 例えば清掃ロボットとエレベーター、自動ドアなどを連携することで、複数階を横断した自動清掃が可能になります。他にも入退室管理や室内カメラ、空調・照明装置やエレベーターなどを連携することで、無人の場合に周辺設備の電気を省エネモードにすることで節電することが可能です。
建物の価値というものは基本的に一度建てたらそこで決定するものであり、大規模修繕や設備を拡張するなどのいわゆる「ハード面でのアップデート」をしない限り価値は落ち続けるばかりです。
それに対して、DX-Coreを導入することで既存の設備や機能を組み合わせることで新たな価値を生み出すという「ソフト面でのアップデート」が可能となります。
②ゼネコン会社が自動運転車?自動運転車が館内を案内
清水建設は2018年から施設構内や館内を移動する自動運転車の開発プロジェクトをスタートしており、2019年には一般へのデモ公開も実施しています。
DX-Coreの話の続きになりますが、現在館内用ロボットは「清掃用」「集配・配送用」「来客案内用」など目的別に多種多様なロボットが登場しており、なおかつメーカーも異なります。
清水建設はこれらのメーカーが異なり、操作方法も違う複数のロボットたちを統合的に制御する技術を開発し、技術研究所本館などに試験導入しています。
YouTube「建物エレベータとサービスロボットの統合制御技術を開発」より抜粋
上記Youtubeを見ていただければわかると思うのですが、複数のロボットたちがすれ違い時に衝突しないよう片方が待機していたり、ロボット単独でエレベータを使って移動することができています。
特にユニークなのが来客案内ロボットの取り組みで、ざっくり記載すると下記のようなことを自動実行します。
このように来客に関する業務を完全に無人化することで、省人化や生産性向上に寄与することができます。
自動運転車は外で利用するイメージが強いですが、館内や構内でのサービスロボットとしてのニーズもあり、清水建設は今後も自動運転車に力をいれることで建物の高付加価値を目指すとのことです。
経営戦略とDXの関連性について
清水建設は中期経営計画の1つである中期デジタル戦略2020「Shimz デジタルゼネコン」を策定しており、そこでは「ものづくり(匠)の心」を持った「デジタルゼネコン」を目指すとしています。
Shimz デジタルゼネコンでは3つの戦略を立てています。
①ものづくりをデジタルで:建築事業、土木事業においてデータ重視のものづくりを行う。プロジェクトの上流から下流まで一貫したデータ連携体制を構築する。
②デジタルな空間・サービスを提供:竣工中に作成したBIMデータや、建物OS「DX-Core」を使い入居者や管理者に新たなサービスを提供する。
③ものづくりを支えるデジタル:安全な作業を行うためのインフラ基盤、データマネジメント基盤、業務システム基盤を用意しものづくりを支える。
清水建設は今までもデジタル活用を推進してはきましたが、業務の効率化や建設事業の裏方の役割という部分が大半を占めていたそうです。
しかし、新型コロナウィルス感染症の脅威が発生した昨今、業務プロセスを抜本的に見直し、デジタル技術を活用した変革をしなければ業界を生き抜くことが難しいとして、清水建設はDXに本気で取り掛かっています。
清水建設は創業から200年あまり、リアルなものづくりを提供していた歴史を踏襲しつつデジタル技術を積極的に取り込むことで、リアルとデジタルを組み合わせた新しいものづくりを推し進めようとしています。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
今回は建物の機能を集約し、各種設備を連携することで「価値のあげにくい建物というハードを機能面(ソフト)をアップデートすることで付加価値を向上する」という取り組みだったかと思います。
箱物である建物単体では生み出しづらい付加価値でしたが、IT活用をすることで価値向上を狙うという良い事例だったかと思います。
次回の記事も楽しみにしていただければと思います。
タナショー
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参考にさせていただいた情報
清水建設株式会社「エンジニアたちはアプリのようにアップデート可能なビルを創る」
https://www.shimztechnonews.com/topics/engineer/2022/2022-02.html
清水建設株式会社「建物OS「DX-Core」」
https://www.shimz.co.jp/engineering/solution/dxcore.html
清水建設株式会社「シミズのDX」
https://www.shimz.co.jp/digital-strategy/
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