ビジネスの源泉は足元の”地質”をデータ解析することから始まる!?〜DX事例20_応用地質株式会社〜
ITコンサル×パートナーCFOのタナショーです。
このnoteではDX事例やIT活用事例の紹介を通して、経営者の方がITを身近に感じたり面白いと思ってもらえることで、企業の成長に役立つ情報をお届けしていきます。
今回はサービス業としても異色かもしれません。地質調査や自然災害等の分析等を専門に行う調査事業会社「応用地質株式会社」の地質分析のDXについてです。
地質情報も災害情報もITで可視化? 「地盤3次元モデル化技術」と「スマート防災」
応用地質株式会社は「地質調査」。地面や地下を計測するシステムや機器の販売、データ管理システムを提供している会社です。
会社のTop Messageページでは「地質学、地球物理学、土質力学、土木工学、水理学、環境工学、生態学など、地球科学全般についての幅広い知識と豊富な経験を持つ専門技術者集団」とあります。「土質力学」という単語をタナショーは初めて見ましたが、ここまで学問色が強い領域であるにも関わらず2019年度は500億超の売上を出していることに驚きです。
「土木工学」というキーワードもあることから、建築業向けの地質情報の提供や、防災を目的とした危険地域の測定、防災システムの開発をしています。
そんな応用地質株式会社のIT技術を紹介します。
①地質情報とAI解析で地盤の3次元モデル化と災害危険箇所の抽出
応用地質株式会社にはレーダー・振動・放射線・地磁気などの様々な測定手法を使用した、多数の地質測定機器があります。
その中で微振動情報から地下の構造を測定する「McSEIS-AT」という機器を使用し、複数の同装置を設置し地盤情報収集ならびに地盤構造の特徴をAI機械学習させることにより、地下の構造を3次元モデル化しました。これにより、従来の測定データや測定図など専門家にしか読み解けなかった地質情報を、一般の方でもわかりやすく表現することが可能になりました。
更にみずほ情報総研株式会社とアドバイザリー契約を締結し、「災害が起きやすい箇所の抽出」技術の開発を進めています。衛星から得られた観測データや災害履歴、今回の3次元データからAI判定することで危険箇所を抽出しようというものです。
応用地質株式会社「2021計測システム総合カタログ」から抜粋
②八丈町をフィールドにしたスマート防災の実証実験を開始
こちらも協業の事例となります。東京都八丈町を舞台に、応用地質株式会社・日本工営株式会社・株式会社みずほ銀行・みずほ情報総研株式会社・株式会社BlueLabがタッグを組んで、防災IoTセンサを活用したスマート防災の実証実験を開始しています。
応用地質株式会社の製品である土砂災害の発生を検知するIoTセンサ(商品
名:クリノポール)および冠水や水路の増水を検知するIoTセンサ(商品名:冠すいっち)を設置し、土砂災害や増水の状況をモニタリングします。モニタリング状況はクラウドサーバに集約されており、安全基準を超えたら災害情報のアラートが発報されます。この実証実験では、IoTで得られる防災情報から防災対策や避難訓練、観光客の避難誘導に役立てられるかの検証が目的となっています。
応用地質株式会社「2021計測システム総合カタログ」から抜粋
DXと経営戦略の関連性、地盤情報ICTプラットフォームの構築
応用地質株式会社には「インフラ・メンテナンス事業」「防災・減災事業」「環境事業」「資源・エネルギー事業」がありますが、2018年12月期の決算説明資料において、全事業分野に関わる戦略的取り組みとして「地盤情報ICTプラットフォーム」の構築を挙げています。
応用地質株式会社「平成30年(2018年)12月期 第2四半期決算説明資料」より抜粋
上図にもありますが、先程紹介した3次元データやIoT機器のモニタリングデータだけでなく、応用地質株式会社が持つ広大な地盤調査データやその他様々なデータを取り込むことで、地質に関するすべてのデータを一元管理することを目指します。
更に、このプラットフォーム実現の先駆けとして日立製作所と協業し、道路地下にあるガス管などの地下埋設物情報を測定・3Dマップ化して提供するサービスを2021年4月に開始しています。このサービスにより、道路工事における応札時の見積り金額の適正化や工事図面作成の効率化に繋がります。
応用地質株式会社はこれらの地盤3次元化技術で新たな価値を想像し、市場を開拓するチャレンジを続けています。
応用地質株式会社「2019年 12月期 決算説明資料」より抜粋
まとめ
いかがでしたでしょうか?最近はITを活用したプラットフォームの開発が目立ちますが、「地質情報のプラットフォーム」というのはなかなか思いつかない発想でしたね。
ここ最近のタナショーのDX事例は、他社と協業してDXを行っていることが多いかと思います。タナショーはDXにおける協業はまさに「オープンイノベーション」なのだと思っています。
オープンイノベーション:他社と技術交換やアイディアのやり取りを行い、技術革新の模索したり、新規事業を創出する活動のこと。
DXは最適なサービスを開発するための「自社の大きな変革」ではありますが、自社のリソースみでやりきるのは難しかったり、予想以上に時間がかかったりします。DXこそ外部と連携し、お互い協力して技術を持ち寄り、客観的な意見をぶつけ合うことが成功の秘訣なのかもしれません。
コロナ禍で相変わらず外出がしづらい状況ではありますが、対面は無理でもオンラインで会話することは可能です。これもIT技術の恩恵ですね。密ではない他者と会話する機会をどんどん増やしていきましょう。
タナショー
参考にさせていただいた情報
応用地質株式会社
https://www.oyo.co.jp
応用地質株式会社「平成30年(2018年)12月期 第2四半期決算説明資料」
https://www.oyo.co.jp/oyocms_hq/wp-content/uploads/2018/08/20180820_2Q_em3.pdf
応用地質株式会社「2019年 12月期 決算説明資料」
https://ssl4.eir-parts.net/doc/9755/ir_material_for_fiscal_ym/69770/00.pdf
応用地質株式会社「2021計測システム総合カタログ」
https://www.oyo.co.jp/assets/pdf/products/OYO2021_Catalog_System_Products.pdf
応用地質株式会社「応用地質、日本工営、みずほ銀行 八丈町をフィールドにしたスマート防災の実証試験を開始」
https://www.oyo.co.jp/oyocms_hq/wp-content/uploads/2020/12/20201217_news-release_oyo.pdf
BUILT「応用地質がみずほ情報総研の支援で、AIを活用した「3次元地盤モデル」と「災害危険箇所抽出モデル」の開発に着手」
https://built.itmedia.co.jp/bt/articles/1902/14/news044.html#l_is20190213oyo1.jpg&_ga=2.253291529.1629311511.1610171429-994693302.1610171429
BUILT「応用地質がレーダー探査した「地下埋設物」を日立のAIで判定、占用者や施工者にクラウドから提供」
https://built.itmedia.co.jp/bt/articles/1909/06/news048.html
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