
[DX事例98]高所でのクレーン操作をリモート化することで安全な作業に変える_株式会社竹中工務店
ITコンサル×パートナーCFOのタナショーです。
このnoteではDX事例やIT活用事例の紹介を通して、経営者の方がITを身近に感じたり面白いと思ってもらえることで、企業の成長に役立つ情報をお届けしていきます。
今回は建設業界からです。大手ゼネコンの中でもスーパーゼネコンと言われる企業の一角である株式会社竹中工務店のリモートDXです。
リモート技術で危険な高所のクレーン作業を遠隔操作! 竹中工務店のDX技術
タナショーのDX事例でもスーパーゼネコンのDX事例は何度か紹介していますが、今回は大手5社で唯一非上場の企業である竹中工務店となります。
歴史を紐解くと創業のルーツは1610年(慶長15年)からという長大な歴史を持つ会社であり、東京タワーや東京ミッドタウンなどの建設を担当しています。
そんな竹中工務店ですが、従業員の働き方改革や業務効率の見直しのためにDX技術の活用を始めていますのでご紹介していきます。
①大型タワークレーン操作を遠隔操作「TawaRemo™」
工事現場やビル建設場所にはタワークレーンがよくありますが、タワークレーンを操作するオペレーター(クレーン運転士)の仕事はとても大変です。
竹中工務店ともなると取り扱う建築物も大規模のため大型のタワークレーンでの作業となり、必然的にオペレーターは高所での作業を行うこととなります。
オペレーターは最大50mも上空の運転席にハシゴで昇り降りし、一旦上がったら運転席で1日中作業を行うこともあります。お昼ご飯を運転席で食べることも珍しくなく、運転席も狭いため体調への負担が懸念される危険な作業でした。
竹中工務店は2020年6月からタワークレーンを遠隔操作できるシステム「TawaRemo™」を開発しています。
リモート操作ですので、もちろん建設現場に設置する必要はありません。発表当時にシステムを投入した現場では名古屋に設置した大型タワークレーンを、大阪の専用コックピットから遠隔操作をしています。

このシステムにより以下のことが実現できます。
・オペレーターは高所での作業が不要になり安全に作業をすることが可能。
・同じ場所にいながら複数の建設現場のタワークレーン操作ができる。
・複数の運転士を用意することで交代しながら作業をしたり、熟練から若手への指導教育をその場で実施できる
この取り組みにより生まれるメリットはとても多くあり、運転士への身体的負担の軽減や作業環境の改善も含めた働き方改革になるとして、建設現場への順次適用を進めているとのことです。
②ドローンを使用した外壁タイルの浮きを確認「スマートタイルセイバー™」
同じく高所での作業効率の事例となります。
建設物の外壁タイルは竣工後10年目で浮きや欠けがないか調査することが法律で定められていますが、全面足場を組んでの目視確認をすることになると高所での危険な作業になりますし、人手や費用も多くかかります。
竹中工務店はこの問題を解決するため、ドローンとAIを使った外壁タイル浮きAI判定技術「スマートタイルセイバー™」を開発しています。

スマートタイルセイバーは高所での外壁タイルをドローンカメラが撮影し、タイルの1枚1枚の精度で浮きが発生していないか。補修すべきタイルがないかをAIが自動判定することができます。
高所での危険な作業を回避し、AIにより有識者や若手の区別なく安定した精度で判定ができるとのことで、必要なコストを安価に計算することが可能です。
③電力線を使ってWi-Fi通信ができるIoTプラットフォーム「TSUNAGATE™」
今までも大手ゼネコン系のDXを紹介してきましたが、やはりDX技術を使うためにはインターネットに接続することが必要不可欠です。
とりわけWi-Fi接続するための電波が重要になるのですが、建設現場ではトンネルや地下など電波の届かない場所が数多くあるため、建設にかかる前に通信設備を配置する手間や費用が必要以上にかかることも多いです。
PLCという単語をみなさん知っていますでしょうか? Power Line Communication(電力線通信)という意味であり、簡単な表現になりますがPCをコンセントに挿すだけで充電とインターネットが使えるようになる技術です。タナショーも以前PLCのニュースを見た時は良い技術だなと思ったのですが、最近はあまり聞かなくなりました。
竹中工務店はこのPLC技術を利用し、建設現場で工事時に使う用途で仮設する仮設分電盤をWi-Fiスポット化する技術「TSUNAGATE™」を開発しました。PLC機能を搭載した仮設分電盤「TSUNAGATE BOX」を建設現場に設置することで、建設現場内にIoT環境が構築されます。

TSUNAGATE BOXでは電気が使えるのはもちろんのこと、Wi-Fi接続が可能。さらに「TSUNAGATE VIEW」という360度カメラと繋げることで、遠隔監視をすることも可能になります。
建設現場では必ず設置する仮設分電盤に通信回線を載せるという考え方はユニークですね。TSUNAGATEがあることで通信設備を別に用意することが不要となり、トンネルや地下などの電波圏外になりやすい箇所でも通信ができるようになりますし、設置に関するコストも削減できるという大きなメリットがあります。
経営戦略とDXの関連性について
竹中工務店は2021年「グループ成長戦略の実現に向けたICT戦略について」という発表を行い、業務および事業のデジタル化に向けた各種の施策を推進することを公表しています。同社は成長戦略のキャッチフレーズに「グループで、グローバルに、まちづくりにかかわる」を掲げており、その成長戦略の下支えとしてICT戦略があります。

主な戦略としては、デジタル化による「業務の効率化」、「事業の変革」があります。今回ご紹介したAIの活用や働き方改革につながるようなDX活用をしていくことで、新しいソリューションを生み出し竹中工務店が作り出す「まち」に新たな価値を生み出したいとしています。
さらにAWSを活用し、データ分析基盤とアプリケーション群の統合基盤である「建設デジタルプラットフォーム」の開発も進めています。

竹中工務店が行っている全ての業務や事業に関するデータをこの基盤に集約し、AIやBIM技術で可視化・分析予測をさせることで高品質かつ高速なものづくりが可能になるとのことです。
竹中工務店はDX活用やIoT活用を進めることでお客様の課題解決を促し、建築とそのプロセスにおいて最良の顧客体験とサステナブルな価値提供をするための活動に取り組んでいます。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
今回は「遠隔の作業をリモート技術で繋ぐことで、危険な場所での安全な作業や省人化ができる取り組み」だったかと思います。
以前もご紹介しましたが、やはりリモートでの遠隔操作は「安全な場所で作業ができる」「特定の人に集中する作業負荷の分散」というメリットがありますね。
危険な場所での作業だったり、地理の制約上1人〜少人数でしかできない作業があるようでしたらリモート操作できる仕組みが取れないか考えてみるのも一つの手かと思います。
次回の記事も楽しみにしていただければ幸いです。
タナショー
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参考にさせていただいた情報
株式会社竹中工務店「タワークレーン遠隔操作システム「TawaRemo」」
https://www.takenaka.co.jp/solution/future/tawaremo/
株式会社竹中工務店「外壁タイル浮きAI判定技術「スマートタイルセイバー™」
https://www.takenaka.co.jp/solution/future/smarttile/index.html
株式会社竹中工務店「建設現場をIoT化「TSUNAGATE™」」
https://www.takenaka.co.jp/solution/future/tsunagate/
株式会社竹中工務店「グループ成長戦略の実現に向けたICT戦略について」
https://www.takenaka.co.jp/newslog/2021/03/02/
株式会社竹中工務店「「建設デジタルプラットフォーム」の構築によるデジタル変革の取組み」
https://www.takenaka.co.jp/news/2021/12/01/