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[DX事例83]物流センターの業務や生産性をAIカメラでリアルタイムで可視化_パナソニック株式会社

ITコンサル×パートナーCFOのタナショーです。

このnoteではDX事例やIT活用事例の紹介を通して、経営者の方がITを身近に感じたり面白いと思ってもらえることで、企業の成長に役立つ情報をお届けしていきます。

今回は電機メーカーからです。今回はパナソニック株式会社の物流センターの生産性向上DXです。


AIカメラが作業員の行動を可視化して生産性を向上。パナソニックのDX事例

パナソニックは言わずと知れた電機メーカーですので、DXについても様々な取り組みが行われています。今回はその中でも、物流センター内の生産性向上に焦点をあてたDX事例を紹介していきたいと思います。

パナソニックは生産性向上のために、生産工学という意味を持つインダストリアルエンジニアリング(IE)を導入しています。IEとは工程管理技術の一つであり、生産工程や作業内容を科学的に分析して、業務内容の生産性やスピードを改善する手法となります。

いわゆるムリ・ムラ・ムダをなくすための技術であり、手法自体は1910年には登場しているようです。パナソニックはEIに対してAIやIT技術を活用することで、サプライチェーンの現場を更に効率化させる取り組みを行なっています。



①物流センター内の作業現場の人・モノの動きをデータ化「彩都パーツセンターの取り組み」

彩都パーツセンターはパナソニックのコネクティッドソリューションズ(CNS)社が製造・販売している製品の修理用部品の供給拠点です。ここでは業務用製品のパーツを約12万種類の在庫があり、月間3万件の出荷が行われています。

修理用パーツの拠点ということから大量の多品種・小ロット部品を抱えており、迅速な出荷のために過剰な在庫を抱えてしまい維持費のコストがかかるという課題がありました。部品の種類も多いことから、ピッキングの手間もかかっています。

そこで彩都パーツセンターは庫内にカメラを複数設置し、AIに分析させることで生産性向上・在庫適正化を図ろうとしました。2018年に始めたこの活動は最初、作業者にウェアラブルカメラを装着してデータ収集をしていましたが、現在は天井に360°視認可能なセンシングカメラを設置しています。映像から人・モノの動きをAIが分析することで、作業者の動きや動線や待機時間や、モノの動きを可視化することができるようになりました。

パナソニックコネクト「インダストリアルエンジニアリング」より抜粋

図にあるように、作業者の手の動きなども可視化されており、作業者単位の動きの傾向や進捗管理・生産スピードなどがリアルタイムで確認可能になっています。


あくまで分析のみになりますので、分析結果をもとに行う改善作業は別となります。パナソニックは長年自社が蓄えてきたIEの知見に基づき、各工程の基準を定め標準工数を決定。AIカメラを通して現場から得た実作業工数と標準工数を常に比較しながら、差異が発生する原因が「特定の作業者の動作」にあるのか「作業手順やマニュアル」に問題があるのかを分析し、改善を続けました。

結果としてボトルネックとなっていたピッキング工数が年率25%も向上しているという凄まじい成果をあげています。
また、分析を行うための作業工数自体も、当時のモーションカメラからの分析時代に比べると10時間→15分に短縮しているということで様々な意味で効率化・生産化に成功することができました。

パナソニックコネクト「インダストリアルエンジニアリング」より抜粋


②パナソニック流IE技術をパッケージ化「現場最適化ソリューション」

①の事例を外販化したという事例なので、こちらは簡単にご紹介いたします。
パナソニックは先ほどの事例をもとにパナソニックコネクト株式会社のサービスとして「現場最適化ソリューション」を開発しています。

上述のセンターでの改善活動のAIを流用しており、現場作業員の動作と模範的な動作を比較、改善箇所をフィードバックすることが可能となっています。サービスの機能として、「現場の生産状況の可視化」「生産計画や在庫計画の最適化」という機能があります。

「可視化」機能では、生産現場の作業状況や在庫状況、人・モノの動線などをリアルタイムでダッシュボード化ができます。
また「最適化」機能ではシフト作成や庫内オペレーション案の作成など、現場の出荷量や業務量から最適な計画を予測・作成することができます。

パナソニックコネクト「現場最適化ソリューション」より抜粋


「現場最適化ソリューション」は流通や小売業でも適用できます。
小売店舗内での商品在庫状況、客の来店状況、陳列状況を可視化。可視化された情報をもとに、適切な品出しや発注を行うことで過剰発注、廃棄ロス、在庫切れなどの販売機会損失を減らすことができるそうです。

パナソニックコネクト「現場最適化ソリューション」より抜粋


経営戦略とDXの関連性について

パナソニックは2022年2月に発表した「パナソニックグループのDX」 にて、パナソニックが行うDXを「PX =パナソニックトランスフォーメーション」と定義し、事業の競争力強化を目的としたDX推進を掲げています。デジタルと人の力で働き方やビジネス手法そのものを変革し、経営のスピードアップを目指すとしています。

パナソニック「パナソニックグループのDX」より抜粋

さらにパナソニックは2021年9月に世界でもトップクラスのサプライチェーンソフトウェア専門企業であるBlueYonder社を買収しています。BlueYonder社が持つ高いSCMソリューション技術を活かし、パナソニックの技術を組み合わせていくことで企業内ではなく、企業間をまたぐサプライチェーン全体の最適化、高度化を目指そうとしています。

最終的にはパナソニックのデバイス・センシング・ロボティクス製品から現場の情報を吸い上げ、AI分析。BlueYonderプラットフォームを通して、適切な判断や指示をリアルタイムで現場にフィードバックするという「オートノマス(自律的な)サプライチェーン™」を作りあげようとしています。

パナソニックコネクト「Blue Yonderと目指すオートノマスサプライチェーンの実現に向けて」より抜粋


パナソニックはこの「オートマスサプライチェーン」の実現を行うことで、社会課題やお客様の経営課題解決に貢献するための活動を続けています。



まとめ

いかがでしたでしょうか?
今回は物流倉庫業務の生産性の可視化という事例でした。
物流業界の自動化といえば、ロボットを使ったピッキングや持ち運びの自動化がメジャーではありますが、それとは別視点での生産性向上の取り組みだったと思います。

経営課題を解決するための施策や手段は一つではないように、DXを行うために使えるDX技術やIT技術も一つではありません
IT活用を考えたいときに自社に合うIT技術がどれだけあるのか。機能面やコストも含め、どの手法を取るのが自社にとって最適なのか考えてみると新たなヒントが出るかと思います。次回の記事も楽しみにしていただければと思います♪
タナショー

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参考にさせていただいた情報

パナソニックコネクト株式会社「インダストリアルエンジニアリング」
https://connect.panasonic.com/jp-ja/gemba-optimization-solution_industrial-engineering#case-study
パナソニックコネクト株式会社「現場最適化ソリューション」
https://connect.panasonic.com/jp-ja/gemba-optimization-solution#solution
パナソニックコネクト株式会社「Blue Yonderと目指すオートノマスサプライチェーンの実現に向けて」
https://connect.panasonic.com/jp-ja/blueyonder
パナソニック株式会社「パナソニックグループのDX」
https://holdings.panasonic/jp/corporate/about/dx/pdf/group-dx.pdf
GEMBA「物流拠点をDXする「パナソニック彩都サービスパーツセンター」 ――物をうごかす現場から、新しい価値を創造する現場へ」
https://gemba-pi.jp/post-248694

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