ガスメーターのIoT化でプロパンガス配送の”ラストワンマイル”を最適化せよ!〜DX事例19_日本瓦斯株式会社〜
ITコンサル×パートナーCFOのタナショーです。2021年あけましておめでとうございます!
このnoteではDX事例やIT活用事例の紹介を通して、経営者の方がITを身近に感じたり面白いと思ってもらえることで、企業の成長に役立つ情報をお届けしていきます。
今回は出川哲朗扮するニチガス・ニ・スルーノ三世のCMが印象的な日本瓦斯株式会社のガスの点検メーターのオンライン化DXについてです。
自宅のガスメータをIoT機器でオンライン化。最適なガス配送を目指す
日本のガスは主にLPガス(プロパンガス)と都市ガスの2種類に分かれますが、今回はLPガスに関する話となります。LPガスはガスボンベを自宅に設置して使用しますが、ガスの充填量が減ってくると新しいガスボンベに交換する必要が出てきます。
この業務をガス配送と言いますが、業務の要となる「ガスボンベの交換タイミングを見極め」るのが難しい状態でした。今までは月1回の有人による点検はしていたものの、交換時期の予測を外してしまうことで「ガス切れ」を起こしたり、「ガスがまだ十分に残っている状態で交換」をしてしまうデメリットがありました。それに対応する形でニチガスは下記の取り組みを行いました。
①ガスの残量を自動計測するスマートメーターの導入
ニチガスは2019年からIoT通信技術のソラコム社と共同開発を行い、ガスの使用量をリアルタイムに計測できるスマートメーター「スペース蛍」の導入を開始しました。この装置はこれまで人間が月に1回、顧客宅で計測していた検針データを、遠隔で1時間に1回自動計測をします。また、ガスメータの開閉線の作業も遠隔操作が可能です。
これにより、今まで有人で行っていた検診業務・開閉栓業務のオンライン化や、ガスの充填量を正確に把握することが可能になりました。
日経XTECH「PoC倒れはこう防ぐ、ニチガス和田社長が説くDX実践の6カ条(下)」内の資料より抜粋
②ガス充填センターも無人化。配送にかかるコストを徹底削減
スマートメーターだけではなく、ガスボンベの充填、保管についてもDXを行っています。ニチガスは川崎に世界最大のLPガスの充填基地「夢の絆・川崎」の建設を進めています。同施設は2021年の3月に稼働予定ですが、既存の旗艦充填基地である千葉工場の約5倍の充填能力、約200万世帯をカバーするスペックがあります。
この施設の特徴的なポイントとして、DXを駆使した無人化を目指していることが挙げられます。運ばれてきたボンベは、運搬や充填、配送エリアに応じた仕分けといった一連の作業が自動で完結するようになっています。
日経XTECH「PoC倒れはこう防ぐ、ニチガス和田社長が説くDX実践の6カ条(下)」内の資料より抜粋
これらの取り組みに合わせ、自社システムのAI機能を組み合わせることにより、ガスの使用量から正確なガス交換タイミングの検出、更に配送員の最適な配送ルートを算出することが可能となりました。
DXと経営戦略との関連性
ニチガスはDXを全社的な取り組みとして行っていることを強くアピールしています。「ガス会社から、総合エネルギー企業へ」の変革を掲げ、代表取締役社長である和田眞治氏みずからがDXの必要性を説く形で基調講演を積極的に行っています。ざっと見ただけでもIR資料のほぼ全てに何らかのDXやIT活用事例についての掲載があり、その熱量の高さが伺えるほどです。
そんなニチガスの取り組みは非常に多岐に渡り、全てはご紹介できないのですが、ざっとまとめるとこうなります。
特筆する点として、上図に登場するプラットフォームはITを活用して収益を上げるためだけではなく、そのほとんどが外販しておりライバル事業者でも利用可能なことが分かります。前項で紹介した充填基地「夢の絆」も他事業者に対して充填機能を提供予定だとのことで、それをニチガスは「共創」という言葉で説明しています。
HP上では「DXで培われたテクノロジーを他事業者との差別化に使うのではなく、他事業者との共創のために提供することにより、複雑化多様化する地域社会の活性化に貢献する」とあります。ニチガスは今回紹介したLPガス以外にも都市ガス、電気でも、ライバル事業者が利用できる共通化されたプラットフォームを持続的に開発・提供し、総合エネルギー会社への転換を目指しています。
まとめ
いかがでしたでしょうか?今までのインフラ会社のITはコストダウンがメインになりがちでしたが、DXとなると付加価値を向上させたり新しいサービスを作り出す活動が多かったりします。
今回の事例も、ITとデータを活用して新たな収益源を生み出す良い事例だったかと思います。タナショーも記事を作っているとき、何度も「ニチガス凄い!」とつぶやいていました(笑)
ユーザーニーズで考えていけば自社の業務や商品サービスの中から、収益化につながる大事なデータが眠っているかもしれません。是非皆さんの会社にもオリジナリティあふれるデータが眠っていないか探してみてください。
タナショー
参考にさせていただいた情報
日本瓦斯株式会社HP
https://www.nichigas.co.jp
日本瓦斯株式会社HP「ニチガスの取り組み(事業内容)」
https://www.nichigas.co.jp/corporate/business/
日本瓦斯株式会社「2019統合報告書」
https://ssl4.eir-parts.net/doc/8174/ir_material_for_fiscal_ym2/74893/00.pdf
日経XTECH「エネルギー業界の風雲児、ニチガス和田社長が語る「企業経営とDX」(上)」
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00896/080500003/?P=2
日経XTECH「PoC倒れはこう防ぐ、ニチガス和田社長が説くDX実践の6カ条(下)」
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00896/080600005/?P=2
ZDNet Japan「DXに積極的なニチガス松田氏に聞く、価値を生む「データ活用の実現」~データ活用が進まないと悩む企業への処方箋~」
https://japan.zdnet.com/extra/domo_202006/35155517/
日経新聞「ニチガス、LPガス1万8000社のデータ一手に 」
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO60412160W0A610C2TJ1000/
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