[DX事例93]無人搬送車(AGV)がピッキング作業の生産性を向上する_株式会社MonotaRO
ITコンサル×パートナーCFOのタナショーです。
このnoteではDX事例やIT活用事例の紹介を通して、経営者の方がITを身近に感じたり面白いと思ってもらえることで、企業の成長に役立つ情報をお届けしていきます。
今回はインターネット通販を通した小売業界からです。主に間接材と呼ばれる資材の通販会社「MonotaRO」を運営する株式会社MonotaROの物流DXです。
物流倉庫を800台の無人搬送車(AGV)が走る!モノタロウのDX事例
モノタロウは工場や生産設備などの製造業向け間接資材の通販サイトですが、その規模は国内最大規模の通販サイトとなっています。
当日出荷が可能な製品も多数取り扱っており、国内に大規模な物流倉庫を3ヶ所構え、そこではDX技術を活用した取り組みが実施されています。今回はモノタロウの物流DXをお伝えしていきます。
①DXやAGVを使った効率的な物流「モノタロウ猪名川ディストリビューションセンター」
モノタロウは1,800万点以上の豊富な品揃えを用意していますが、品種が多すぎることから物流の効率化が課題となっています。そんなモノタロウは「お客さまへお届けする時間の短縮を実現」することを目的として2022年4月に猪名川DCが本格稼働しました。
使用延床面積189,000平方メートル、在庫能力60万点の広い施設内には800台もの無人搬送車(AGV)が導入されています。
猪名川DCは複数階の施設となっていますがAVG専用のエレベータを用意されています。AVGが1階の発着場から上階のピッキングステーションまで自動搬送をすることで、作業者の歩行を極限まで削減し労働生産性の向上を図っています。
ピッキングについても面白い趣向が凝らされています。ピッキング作業は人が行っているのですが、プロジェクションマッピングを導入しピッキング棚のどの位置の商品を取るかを照射で示すことができます。
従来のピッキングシステムは棚の縁等にランプがついており、ランプが光ることでピッキング場所を指し示すものが多いです。それらのシステムと異なり、プロジェクションマッピングを用いることで専用のピッキング棚でなくてもピッキングシステムを導入することが可能です。
本DC導入の背景として、作業者の歩行削減を大きな目標に掲げています。別拠点である尼崎DCではピッキング担当者が1日に10kmも歩行することがあったそうですが、このAVGを使うことで歩く距離を0にすることを目標にしているようです。また、AVGに置き換えることでピッキング業務が従来の最大2.25倍にも向上するということで、これまで以上に多くの商品を迅速にお客様のもとへ届けたいとのことです。
②一人一人に適した検索体験を開発「検索エンジニアチームの取り組み」
目新しいシステムや主要なDX技術というわけではありませんが「検索体験の向上」というユニークな取り組みでしたのでお伝えしていきます。
モノタロウは創立当初から150万点という大量の商品数を抱えていましたが、2022年には1,800万点と桁違いの量となったことから検索速度の低下や検索結果のマッチ度に課題がありました。
例えば「3m テープ」と検索された場合はブランドの3M(スリーエム)社製のテープなのか、3mのテープを探しているのかが分かりづらいという話が紹介されていました。事例では「3m テープ」の場合は3M社製のテープ。「テープ 3m」と検索された場合は3メートルのテープを求めているお客様が多いそうです。
モノタロウはユーザが求めている商品に最速で辿り着けるように検索エンジニアチームである「サーチチーム」を組織し、検索体験の向上に取り組んでいます。他社製の検索ソリューションだと1,800万点という商品数に対応できないこともあり、モノタロウでは検索システムを自社内で構築しているそうです。
また、社内のデータサイエンティストチームとタッグを組み、今までに蓄えられた検索結果のビッグデータを解析しながら最適な検索エンジンの改善にも取り組んでいます。2022年2月のタイミングでは商品検索の基盤システムの刷新も進めており、お客様の属性情報である「業種単位でのレコメンド商品の表示」をバージョンアップして、「一人一人の検索結果に応じたレコメンド商品の表示化」が可能になるとのことです。
モノタロウではサーチチームの人材採用や育成にも力を入れているようで、「お客様に検索をどう使ってもらうか」に興味を持って追求できる方や「モノタロウの検索を良くしよう」という人を募集し、お客様に最適な検索体験を提供できるように改善活動を進めています。
まとめ
いかがでしたでしょうか? モノタロウのDXに関する記事やIR情報が少なかったため、いつもの経営戦略とDXの関連性は割愛いたします
今回の2つの事例は内容は全く違うものでしたが、「物流を最適化し顧客への商品提供スピードを早める」と「検索体験を向上し顧客の商品検索を快適なものにする」という、どちらも顧客体験を向上するための取り組みでしたね。
モノタロウは多種多様な間接資材を取り扱う流通業者ですが、リアル店舗では抱えきれないような商品を取り扱う場合、やはりインターネット通販が有効です。ただインターネット通販になると対面で質問したり、実物を見て購入できないというデメリットがあります。
「実物が見れない」デメリットへの直接的な対策は難しいですが、今回のようにいかに素早く「目的の商品を見つけ出せるか」または「注文した商品を届けるか」という取り組みが有効な対策となってくるでしょう。参考にしてみていただければと思います。
タナショー
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参考にさせていただいた情報
株式会社MonotaRO「モノタロウ猪名川ディストリビューションセンターが本格稼働」
https://corp.monotaro.com/ir/upload_file/m009-m009_01/144_20220421_inagawadckadou.pdf
note「検索一筋10年のエンジニアが語る、1,800万点の商品検索パーソナライズ化への挑戦」
https://note.com/monotaro_note/n/n96d5874d3190
日本経済新聞「無人搬送車800台が棚を動かす モノタロウの物流倉庫」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC019P00R00C22A6000000/
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