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マコンドの会発足
去る2月15日土曜日、桜町にある純喫茶ルパンにて、『百年の孤独』の読書会であるマコンドの会が発足しました。主催はバタエフェです。
参加費1,200円。コーヒーお菓子付きで語り合います。
さて、バタエフェでは挫折本トップに挙げてきた『百年の孤独』の読書会、どうやって進めたものか悩ましく、ご参加の方から「全何回くらいになりそう?」と尋ねられてもろくな答えが出せません。
そんな行き当たりばったり、見切り発車でスタートしたこの回ですが、第1回は、今後の進め方の方針が見つかり、面白い話題も沢山出て実り多き回になりました。
1.マコンドって?
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さて、先程よりしれっと繰り返されているこのマコンドの会の名前ですが、そもそもマコンドとはなんでしょう?
マコンドとは『百年の孤独』の舞台となる町の名前です。
ホセ・アルカディオ・ブエンディアとウルスラ・イグアラン夫妻が生まれ育った村を出て、友人数人と冒険の旅の果てに定住することにした土地に一から作り上げた町の名です。もちろんこれは、架空の町なのですが、モデルは作者であるガルシア・マルケス生誕の地アラカタカです。(資料はアラカタと1文字脱字てす)コロンビア北部、カリブ海沿岸に存在する人口2000人ほどの寒村とのこと。是非インターネットで検索してアラカタカの写真などご覧下さい。イメージがつきやすくなると思います。
そして、『百年の孤独』はマコンドの町とホセ・ウルスラ夫妻の子供たちの歴史抄本の形をとった小説です。盛者必衰の理をあらわすこの物語は、吟遊詩人の歌にも似ています。それは、この作品がこの町へ都度都度現れるジプシー・メルキデアスによって記録されたものを夫妻の末裔が読んでいるものであるからなのです。
少し脱線しますが、ガルシア・マルケスと並べられることの多い同じく南米文学作家でノーベル文学賞作家でもあるマリオ・バルガス・リョサの『密林の語り部』を思い出しました。この作品で問いかけられる未開の部族の調査をすることで、彼ら独自の文化はそのままの形で保管されることが不可能になってしまうことの暴力性は『百年の孤独』にも通じるものがある気がします。
2.ガルシア・マルケスってどんな作家?
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先程も言いましたが、ガルシア・マルケスは1927年、コロンビア北部の寒村、アラカタカに産まれました。幼少期は両親の元を離れ祖父母に育てられています。語り上手の祖父母の話は、その後の創作活動に強く影響を与えています。祖母の話には民話や迷信、幽霊が多く登場したそうで、ついつい水木しげる先生やん!と反応してしまいます。さしづめ祖母はのんのんばあといったところでしょうか。
貧しい生まれの少年の心に世界は、外側に向けてだけでなく、死者の世界や目に見えないもの、この世のものではないものの世界にも広がったのでしょう。
ここで、以前読書会をしたフアン・ルルフォ『ペドロ・パラモ』と近い死生観というのか、死者と生者の世界の境界の曖昧さが指摘されました。
ガルシア・マルケスはフアン・ルルフォから影響を受けたことが知られています。ルルフォ原案でガルシア・マルケスとカルロス・フエンテスが脚本を書いた映画が存在する他、ガルシア・マルケス原作の『En este pueblo no hay ladrones(この村に泥棒はいない)』(1965年・日本未公開)では、ルルフォとガルシア・マルケスが役者として共演もしています。
そして、中でもガルシア・マルケスは『ペドロ・パラモ』がとても気に入り、暗唱できるまで読み込んだと言われています。この辺りは、読書会の時に咄嗟には答えられなかったこともあるので、ご参加の方々もぜひご注目ください。そして、良ければ『ペドロ・パラモ』もお読みになってください。岩波書店から文庫が刊行されています。なかなか読むのが大変ですから、人物についてメモを取りながら読むと読みやすいです。そうまでして読む価値があるくらい面白いですよ!
3.ガルシア・マルケスとバージニア・ウルフ?!
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先程のプロフィールにも影響を受けた作家名にウルフの名がありました。ウルフ?って不思議に思ったのは私だけでしょうか?マジックリアリズムの旗手ガルシア・マルケスが?ウルフと言えばモダニズム文学とフェミニズム。都市生活なんて遠い場所にありそうだし、マコンドの女たちは刺繍ばっかりしてるし……。
でも、ちゃんとありました!参加者の方がずっと話が進んだ頃にある妻の不満が爆発するシーンはフェミニズムだと話されていましたが、なんと序盤12ページにもウルフが存在しています。
ウルフの名作『三ギニー』は、サブタイトルを『戦争を阻止するために』とし、『自分だけの部屋』の続編として刊行されました。ウルフが、男性弁護士から戦争を阻止するために何ができるか?と質問され、3年越しに書いた手紙という形を取ったエッセイ(評論文)です。三ギニーとは、平凡社から刊行されたバージョンを翻訳された片山亜紀氏により、こう解説されています。
(女性の)「日々の生活に消えていく金額ではあるが、稼ぎ出すのにはそれなりの労力を要する」額であると。また、換算は難しいとした上で、さしづめ、現在の3万円といったところでしょうかと仮定している。
ウルフはそれを3つの非営利団体に1ギニーずつ寄付することで、戦争を阻止できるか実験的思考を展開させますが、3ギニーにそんな力はありません。
そして、姉妹編である前作『ひとりだけの部屋』には、「女性が小説を書くにはお金とひとりだけの部屋が必要」と語っています。
と、大雑把すぎる説明ですから、詳しくはぜひ本編をお読み頂きたいのですが、そのウルフが『百年の孤独』文庫版12ページにオマージュされているのを発見しました!
ウルスラがもしものためにと父から貰った金貨の内の3枚をベッドの下に隠していたのに、ホセがそれを易々と持ち出してメルキデアスの持ってきた道具の購入費にあててしまうのです。それによってホセはリポートを書いて当局に送り、人脈ができた上に、新たな興味関心を満たし得る学術書を貰い、天文学に没頭し、ついには「自分ひとりの部屋」まで手に入れます。汗水流して働く妻子を尻目にです。その時のウルスラの様子やこの不均衡は『百年の孤独』本文にてきちんと描写されます。
そう、『百年の孤独』はウルフから大きな影響を受けたガルシア・マルケスが書いているのです。疑いもなく!
4.マコンド会の続け方
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ここまでで大いに盛り上がり、No.4の資料にあるチョッキと帽子の話はまた次回ということになりました。そして、マコンドの会の方針が見えてきました。
『百年の孤独』は、もちろん1人でも読めます。案外スルスルと読み進めやすくもあります。挫折の原因は他の箇所にあるようです。どこまでも続く同じ名前の家族たちはそのひとつでしかないでしょう。
大きな原因は、この細かい描写を一つ一つ全てひろいあげて味わうには、読み進めやすさのスピード感が早すぎるのかもしれません。いちいち立ち止まって読みたいですが、1人だとなかなかそれが難しいですよね?
というわけで、マコンドの会ではそういう細かい部分を宝探しのように探して楽しんで行けたらと思います。長丁場ですから、時に体調不良や、生活環境で欠席せざるを得ない時期が皆様に起こり得ると思います。
そこで、連続開催ですが、欠席することがあっても、次回気軽に参加して、その上それでも楽しめるという形を旨としますので、どうぞ、初回に参加出来なかった方々も是非次回以降ご参加ください。
コーヒーやお菓子、資料の準備がございますので、前もってご連絡頂ければと思います。といいつつ、次回日程が決まっていないので、近くお知らせします。土曜の夜になるはずです。スケジュール決め前には、ここの土曜日にしてーって連絡も歓迎してます。
また、夜参加できない人のため、会場をバタエフェにうつし、昼の部も開催したいと考えておりますので、この曜日がいいよーってお声があれば嬉しいです。
皆様のご参加、お待ちしています!