ジョブ型人事制度とは?
職務型人事制度との違いは?
一緒です。昔は職務型人事制度と言っていました。近年、政策的な後押しもありジョブ型という言葉が一人歩きしているところがあります。HRを専門とする方からするとバズワードと捉えていても仕方がないかと思います。職務型人事制度自体は欧米では以前から運用されてきており、特別新しいものではありません。何社かのHRを専門とするコンサルティングファームが職務価値評価のメトリックスを持っており、各国において報酬水準のベンチマークなどを行ないながら運用を支援してきました。よって海外でも事業展開を行う企業では日本でも職務型人事制度を早くから取り入れています。
何故、日本では広がらなかったのか?
シンプルに言えば、人物次第で等級と報酬を決めてきたからです。ジョブ型人事制度(ここからはジョブ型人事制度に統一します)はあくまでも仕事(椅子)にお値段がついてきます。成果主義などが流行った2000年代初頭においても評価の結果で報酬が変動することは良しとしても、仕事内容によって報酬が変動することはよしとならない傾向がありました。イメージしやすいように例を出すと、営業のAさんは等級4で入社10年の32歳、営業のBさんは等級2で入社3年の25歳だとします。Bさんの方がAさんより成果目標は小さいものの、売上実績としてはBさんを上回っています。ジョブ型人事制度は極端に言えば、AさんとBさんを入れ替えた方が良いと考えます。一方、日本の年功色が強い人事制度からの流れを汲んだ成果主義ではAさんの等級は据え置く、Bさんも等級は据え置き賞与で報いる、こんな処遇につながります。結局、当時の経営層も頭ではジョブ型人事制度が良いと思っていても一時凌ぎの対処療法でソフトランディングさせていたと言うのが実態です。この一時凌ぎの結果、異様に複雑な給与テーブルなどが生まれむしろジョブ型より複雑な人事制度が量産されたとも言えます。
日本でのジョブ型人事制度の運用方法は様々
とはいえ、一部の内資企業においてもジョブ型人事制度を上手に取り入れる企業もありました。職務評価の手法を取り入れつつ、ドライにアサイメントを行うと言うよりもむしろウェットにメンバーと向き合いながらなグレードから見た期待値を明確に伝え相互理解を深めていくアプローチをとっている企業などが代表的な例です。根底にあるのは組織として人を育てる意識の高さなのですがこのカルチャー形成の過程において人事制度が有効に機能していたりします。
今までご支援させていただいてきた企業をみる限り、ジョブ型もおおよそ以下のように区分できるかもしれません(ちなみに上記の例は3です)。
欧米型のジョブ型人事制度
役割等級を軸とした人事制度
1と2の良いとこどりをした人事制度
1はジョブディスクリプションを起こして職務価値を算定してグレードを決めていく本流の手法(比較的運用はたいへん)。2は役割レベルで判断する簡易的な手法(グレードの数を増やしにくいのが難点)。3は役割と標準化した職務価値の双方を活用する手法(運用が容易でグレードの数も一定数までは増やせる)。尚、この分類や事例は内閣府からもガイドラインのようなものが出てくるのではないかと思われます。
大切なのはミドルマネジメントの武器にできるか否か
ここまでジョブ型人事制度について経緯や分類などを見てきましたが、自社にどのように馴染ませるか(つまり運用できるようにする)をまず考えていただくことをお勧めします。そのためには人事だけではなく現場に移行シミュレーション(暫定グレード・給与の設定)の段階から関与してもらうことが大事です。この時に自組織においてバイネームで具体的に職務価値を見ていくことでグレード改定時のコミュニケーションをどのように行うかまで想像しておくことができます。①今年度の戦略・計画においてどのような成果や関わり方を期待しているのか、②その期待から見るとどのグレードが妥当なのか、③改定されるグレードにおいて適切な目標レベルはどのぐらいなのか、この3つをストーリーを持ってメンバーに語れると事業と整合の取れた人事制度運用へと繋げていくことが可能になります。
人事だけで運用しようと思わず、むしろ導入後は現場の運用の取りまとめや最終的な意志決定機関運営だけに徹しても良いと思います。