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【短編小説】タイムトラベラーサトー

「サトーさん、本当にタイムトラベラーなんですか?」
「それ、部長から聞いた?」
「ええ。」
「もうそんな時期か。誰にも内緒だよ。」

 会社の懇親会で見かけるサトーさんはどこの部署なのか取引先なのか知らないけど、部長とよく一緒なので何かしら関係のある人だと思っていた。
 今日、部長に「サトーさんはタイムトラベラーだ」とこっそり教えられた。真面目な顔で言われて驚いたし、それ以外は教えてもらってない。

「過去に戻って何かを変えると未来も変わる。なんてお話あるよね?」
「はあ。」
「あれ、実際に起きちゃうと色々と困るから規制がすごいあるのよ。今の時代だと法律が出来る前の違反は取り締まれないけど、時間を戻せちゃうとそれも有効になっちゃうんだ。なのでうかつなことも言えないわけ。」
「ええ。」
「なので怒られない範囲であれこれして、こうやってご馳走になるくらいしかできないんだよね。この時代の食事、旨いからそれで満足だけどさ。」
「はあ。」
「刺身とか今のうちに味わっておいた方が良いよ。生魚、最高よ。」
 会社の懇親会で使う店の刺身なんてたかが知れていると思うのだけど、そう言ってマグロを口に運ぶサトーさんの笑顔には嘘が無いように見える。なんでそんなこと言うのか説明すると罰せられるのだろうか。

「おたくの会社のゲーム、ちょいちょいトラブル起きて詫び石出してるじゃない?でも時限で発効するイベントはわりと順調じゃない?結果的にそれがコレに化けてるってわけ。」
 サトーさんは遠慮なくイカ刺を箸ですくって食べる。

「そんな時期かってさっき言いましたけど、どういうことですか?」
「内緒が我慢できなくて話すのでなければ、どういう理由で他人に話すんだろうね?ま、今まで通りにしていればいつか分かるんじゃないかな。」
「そうですか。次回の懇親会には分かってますか?」
「さあ、どうでしょうねえ。あと次回の懇親会は僕、先週出席しました。」


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