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【短編小説】未来のガラケー
2024年の現在、携帯電話はスマートフォンとして普及している。
いわゆるガラケーを使っているのは限られたわずかな人だけだ。
通話にしか使わない仕事をしている人、外回りの営業、医療機関や工場、倉庫内で動き回る人、データセンターといった情報管理に厳しい場所で作業する人などだ。
繁華街でたまに見かけるガラケーをいじっている人は大抵スーツ姿でいかにも今は勤務中ですという人ばかりだ。
そんなガラケー利用者に扮して街行く人にドッキリを仕掛けるのが一時期流行ったわけ。未来人の間で。わざわざタイムスリップして。
未来にガラケーなんて無いけど、技術の進歩でああいうガジェットを作るのは子供の工作みたいなものなわけ。
2024年でも昔のゲーム機やレトロパソコンが手のひらサイズでリメイクされたりしてるでしょ?趣味用に。あんな感じ。
ガラケーのパカパカする二つ折りのケース全体がカメラになっていて、こっちを見てる人を撮影して実況生中継するわけ。
時間を超えた生中継。
今起きていることを未来にお届けしちゃう。未来ってすごいでしょ?
そりゃ派手な格好していれば目立つわけで、そういう野暮は無し。
単純にガラケー使ってて一番反応ある人は誰だ!ってなったんだ。
優勝したのは「スティーブ・ジョブズのそっくりさん」だった。
元から似てる風体の人がみんな知ってる格好で駅前ロータリーでガラケーいじってたら、そりゃ見るよね。
みんな知ってると言ってもこっちの時代だと古い資料をあたらないといけなかったけどさ。
いつの時代でもあんな感じの服はあるよね。
でもさ、ちょっと、ズルだよね。
2024年の現在、繁華街を気を付けて眺めれば、ガラケーをいじっている人をそれなりに見つけることができる。
その中にはそんな暇な未来人が混じっているのかも知れない。