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人生初の彼氏がストーカーに変貌した話

遡ること20年程前、当時は水も弾けるピチピチの女子高生だった頃の私には同い年の彼氏がおりました。

小中学生の頃の同級生とバイト先で再会、あれよあれよと付き合うことになったのが高校2年生の初夏のこと。

初めての彼氏ですからね、もちろん人生初めての目合い(まぐわい)もこの彼氏でございました。場所は夏の海、テトラポットの隙間、初マグワイアにも関わらず後ろからの入刀に挑戦したことは今では良い想い出です。
(マグワイアとは昔活躍した野球選手の名前です。参考までにお写真を載せておきます。)

マーク・デビット・マグワイアさん

マーク・デビッド・マグワイア(Mark David McGwire, 英語発音: /mɑrk ˈdeɪvɪd məˈgwaɪɚ/[1]; 1963年10月1日 - )は、アメリカ合衆国カリフォルニア州ロサンゼルス郡ポモナ出身の元プロ野球選手(一塁手)。右投右打。愛称はビッグマック(Big Mac)。

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話が大きくマグワイアに逸れてしまいましたね。
そんな甘酸っぱいような塩水の味がしそうな思い出のある人生初の彼氏ですが、この方は初マグワイア以外にも色々な思い出を残してくれました。

そのいくつかをピックアップしてみようと思います。

私と付き合ったせいで胃に穴が開いた事件

付き合いたて当初、というか付き合う前から彼がなんとなく「交際に前向きでない」雰囲気がありました。
彼はいわゆる普通の高校生(と書くと表現にトゲがありそうですが)とは違って、少々特殊な価値観の持ち主でして、大人びているというか、落ち着いているというか、とにかく「早く社会人になりたい」みたいなことを言っている人で、悪い言い方をすれば同世代をちょっと見下している節があったんですね。もちろんちゃんと友だちもいましたけど、同級生の中では少し浮いた存在だったと思います。悪い人ではなかったですけど。
前置きが長くなりましたが、まぁそんな彼なので「イエ~イ彼女出来たぜ!」となるわけもなく、なんならちょっと責任が増えたとかそういう感覚だったのかもしれません。
本題の胃に穴が開いた件ですが、彼はその頃どうやらお母様に私との交際を反対されていたそうな。え、今の時代にそんなことあるの?って感じでしたが彼がそう言うので「え…どうしよ…」と私も困ってしまいました。
後にこの“母親に交際を反対されている理由”の謎は解けるのですが、肌が水を弾くほどピチピチでウブな女子高生だった私はただただうろたえることしかできなかったんですね。すると彼は「まぁなんとかするけど、最近この板挟みの状況に悩み過ぎて胃に穴が開いたんだよね…」と告げてきたのです。
あまりにも突然の告白が続き、私の頭は真っ白です。母親には反対されてるわ彼氏の胃に穴は開くわでてんやわんや。しかし私にはどうすることもできません。
この件の結果がどうなったかと言うと「付き合ってても問題がないと親にわかってもらえれば良い」みたいな結論に至り、あっさりと幕を閉じることになったわけですが、これが起きたのが付き合い始めですからね。前途多難な交際になりそうな匂いがプンプンします。乞うご期待。


普通にビンタされちゃった事件

タイトルからしてもう物騒。父さんにもぶたれたことないのに!!
今思えばこの時にとっとと別れておくべきでした。
付き合って数か月経った頃、ささいなことがきっかけで喧嘩になった私たち。喧嘩というよりほぼ私が一方的に謝る&彼爆裂不機嫌状態。デートの最中で帰ると言いスタスタと歩いていく彼を半泣きで私が追いかけます。なんて健気で可哀想な私。
彼は卑怯なことに途中から駅に置いてあったチャリに乗り、颯爽と私を置いて帰宅をキメやがります。頑張って追いかけましたがチャリVSミュールを履いた女子高生では勝負は決まったようなものです。
実は、喧嘩→彼不機嫌→私謝り倒すみたいな流れはこの頃すでに割とお決まりのパターンだったので、途中まで半泣きだった私も「クソッこいつチャリに乗りやがった」と思えるくらいには喧嘩慣れしてたんですね。早々に走って追いかけることを諦め自宅へと引き返す私。どの辺まで追いかければ自宅までの距離が無駄にならないかも計算済みで無事帰宅。
どうせ少し待てばなにかしらのアクションがありますからね、自宅待機です。
10分くらい待っていると予想通りにメールが届きました。
「今どこにいる?」
ちょっとしたメリーさんです。怖いですね。
この頃が今ほど携帯機器が発達していなくて本当に助かりました。私はすかさず「公園に居る」と嘘をつき、反省しているテイを装いました。帰宅済みなんて言ってしまえば反省しているかどうか疑われちゃいますから。
そそくさと徒歩30秒の位置にある公園にダッシュで向かい、彼の到着を待ちます。
落ち込んだ様子を演出しながらベンチに座っていると彼が登場しました。
無言で横に座り「なにが悪いかわかってるの?」と尋問が始まります。
「彼くんが嫌がることしてごめんなさい…」みたいな適当な反省を述べ、その場をやり過ごす私。納得したようなしてない様な絶妙な表情の彼。
すると「目閉じて歯食いしばって」と指示され、言われた通りにすると(言われた通りにするな)私の頬に物理的な衝撃が走りました。
ビンタです。
ポンタでもサンタでもありません、ビンタです。
タイトルに書いてたのでさほど驚きもないかと思いますが、その当時の私はまさかビンタが来るなんて思ってもみませんでしたからね。驚き桃ノ木二十世紀です。そしてあまりの急展開にポカンとしている私に彼が一言。
「目、覚めた?」
私はなにかの宗教に入ってしまったのでしょうか。はたまた逆に知らない間に何かしらの宗教にハマってしまっていたのでしょうか。
彼は私の目を覚ますためにビンタをしたと言うのです。
私はたれ目なのでよく人から「眠そうな顔してるね」と言われますが、さすがに寝てるか起きてるかは判別つくはずです。私起きてるくね?目、覚めてるくね?
愛のムチとでも言いたかったのでしょう、彼はこともあろうにビンタを正当化してきたのです。
今の私であればこの時点でやり返していますが、何度も言いますがこの頃の私は女子高生。困惑することしかできません。
次第に彼の態度は軟化していき、最終的には「ごめんね、ここ痛かったね」と頬を撫でる始末。これ、進研ゼミで見たやつだ!と今ならば思えるでしょう。DVの特徴というタイトルの教科書を開いたら2ページ目辺りで出てきそうなくらいお手本通りのDV彼氏です。
だがしかし私は女子高生。しかも初めての彼氏で初マグワイアの相手です。私と彼のどちらが間違っているかなんて判断できるわけがありません。とりあえず優しくなった彼の姿に安心してしまい、頭の片隅に残るハテナマークの存在をそっちのけに仲直りすることを選んでしまいました。
初めての彼氏がDV彼氏だなんて、この後の私は一体どうなってしまうのでしょうか?


ライバルは彼の許嫁!?危険な魔の手から彼を守れ!事件

TL漫画の書き出しのようなタイトルですね。我ながら素晴らしい見出しが出来ました。
彼と順調(?)に付き合いを重ねて1年が過ぎた頃だったでしょうか、いつも通りのメールのやりとりの最中に彼が突然言い出します。
「幼馴染がうちに泊まりに来た」
幼馴染とな。しかもどうやら性別は女の子。これは一大事です。しかもよくよく話を聞いてみると、なんとこの幼馴染は彼の許嫁なんだとか。
許嫁なんてそんなマンガみたいな展開あるかい、と心の中で突っ込みましたが、ここは一旦彼の話を聞いてみましょう。
この幼馴染、どうやら幼い頃に遠くに引っ越してしまって以来ほとんど交流はなかったそうですが、親同士仲が良くて勝手に子ども同士結婚させようみたいな約束をしているそうなんです。そしてその幼馴染は乗り気だと。
嘘みたいな話でしょう?そう、これ彼のついた嘘なんです。
これが嘘の話だと明かされたのはここからさらに1年後になるのですが、まぁこの時点で私は嘘だと気付いてました。気付いててあえて乗っかりました。彼の描く物語にね。
何故かというと、「なにそれ嘘じゃん?」と私が言ってしまえば彼はきっと激怒します。激怒して激昂して壊れてしまいます。なんにせよ面倒なことしか起こらない未来になるのは簡単に予測できます。
彼の嘘に乗るほうが面倒だったのか、それとも嘘を暴くほうが面倒だったのかは今では知る由もありませんが、当時は争いごとをわざわざ自ら起こすなんてもってのほかだったので、信じるフリをすることを選びました。
というわけで、彼の望む「突如現れた許嫁に嫉妬する彼女」の猿芝居がスタート!

彼:「幼馴染がいちいちくっついてきてうっとおしい」
私:「彼君は私の彼氏なのに!どっかいけ!」

彼:「なんか一緒の部屋で寝るとか言ってくる」
私:「なにそれ!そんなのダメだから部屋に鍵かけて!」

彼:「部屋のドアに鍵ついてない、これ俺がどっかに泊まりに行かないと無理だ」

ハイ、困りました。これは暗に私に「どこかに一緒に泊まりに行こう」と誘っています。そして私からそれを言い出させようとしているんですね。
何度も言うようですが、この時の私はうら若き女子高生です。放任主義の親の元に生まれていたら話は違ったのでしょうが、彼氏がいる娘が突然「今晩友だちの家泊まるわ」と言って許してくれるような親ではありません。
彼氏がいる女子高生の宿泊なんて、彼氏と泊まっていやらしいことをするに違いありませんし、実際そうしますからね、この娘は。
親の許可が下りないなんて百も承知の私は、彼の誘われ待ちの言葉になんと返事をしようか頭を悩ませます。
ひとまずどこか行けそうな友だちの家はないかとかの話をして、お泊りルートを回避します。ですが、彼はそんな手が通用する相手ではありません。
次第に苛立ちがメールの文面からにじみ出るようになり、ついに脅しが入ります。
「このまま俺が幼馴染に襲われても知らないよ?」
架空の幼馴染に襲われる妄想まで出来たらもう立派なものです。彼の作る物語はほぼ完成していますが、ここで終わらないのが彼です。
本来彼の描いたストーリーは、ここで私がどうにかして彼と一緒に一夜を過ごせるようにし、一晩中まぐわい放題、というものだったのでしょうが現実はそう簡単にはいきません。
私は親に喧嘩を売ってまで彼と一夜を過ごしたい気持ちはありませんので、一応宿泊の許可を打診してみたところ、普通に却下されたのでサッと諦めました。
どう足掻いても宿泊は無理と諭し、もちろんネチネチ文句を言われ一悶着ありましたがなんとか彼はまぐわい三昧を諦めてくれました。
すると浮上してくるのが幼馴染襲撃問題です。このままでは彼はどうやら襲われてしまうようです。
2人で色々な打開策を考えましたが、結局は物理的に侵入を阻止できるよう、紐をなんかしらしてドアが開かないように結びつけるみたいな作戦でその日は眠りに就くことに。架空の幼馴染の侵入に怯えるというシュールな展開。良い調子です。
そして翌朝、目覚めた彼から衝撃のメールが届きます。
「ズボンが半分ずり下ろされてる」
なんと、幼馴染は紐トラップを物ともせず彼の部屋に侵入(という設定)。それだけでなく寝ている最中の彼に跨り結果として最後までしてしまったと(という設定)。
これを彼は「全て自分が寝ていて無意識の間に起きたこと」と言いますが、そんなわけあるかい、と私は湧いて出る疑問を彼にぶつけます。
まぁそもそも架空の幼馴染との妄想のお話なのでそんなわけもどんなわけもないんですけどね、そこまでして私のせいで事件が起きたことにしたいのかと思ったら嘘を暴いてみてやりたくなりまして。
Q1.なぜ部屋に侵入できたのか?
→紐の結び方が甘かった
Q2.上に跨られて気付かなかったのか
→一日つきまとわれた疲れでぐっすり寝ていた、気付かなかった
Q3.てか最後までってどういうこと?出たんか?
→私とまぐわっている夢を見ていた、感覚的には出てたと思うしその跡が残ってた
他にも色々聞いたと思いますが重要なところだけ。特に2と3はあり得なさすぎる。睡眠薬でも飲まされてたんか。
ここまでくるともはや彼がなにを望んでいるのかわかりません。作品を完成させたいのか、どうにかして私の嫉妬の炎を炎上させたいのか。
この事件の結末は、なぜか私が彼にビンタをしてくれと頼まれて軽く叩いて仲直りして終了。そもそも喧嘩してないけど。
彼はこの度の事件を勝手に浮気にカウントして勝手に反省して落ち込んで私にビンタさせておしまいとしたのです。これがもしドラマだったら「この作品は視聴者次第で解釈が決まる」系だったかもしれませんね。ミステリー的な?
ここまで書いてみて思いましたが、彼もやばいけど彼と別れない私も相当やばい。やばカップル。


思っていたより文章量が多くなってしまったので、続きはまた書きます。
この彼が最終的にストーカーになったと言われても驚きもなにもないと思いますが、もうひとつふたつほど記憶に残る事件がありますので次回記事にご期待ください。

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