人生初の彼氏がストーカーに変貌した話②
人妻がうら若き乙女だった頃にできた人生初の彼氏がストーカー化しちゃったお話です。
ストーカーと化するまでにも色々なことがあったので、記憶に濃い印象的なできごとをいくつかピックアップ、と思っていたら意外と長くなってしまったので記事を分けました。それではご覧ください。
雨の中、濡れながら抱きしめ合う二人の若者
まるでドラマのワンシーンですね。これが本当に自分の身に起きたことなのだからあっぱれです。人妻はもしかしたら前世が大女優だったのかもしれません。
もはやいつの喧嘩だったのかは覚えておりませんが、いつも通りメールでやり取りをしていたらいつも通り不機嫌になっていく彼。私はいつもやらかしてしまうようです。(なにを?)
普通に会話をしていただけなのになぜかいつも怒られる。内心「チッまたかよめんどくせぇな」と思っていてもそんなことはおくびにも出さず丁寧に対応するサービスクオリティの高い私。お客様のニーズに応えることでサービスが価値が生まれますからね。
いつもは好きだの愛してるだのと言っていれば次第に収まるものなのですが、どうやらこの日は違っていたようです。というか、彼が基本的に不機嫌になるときと言うのは決まって“会いたい(まぐわいたい)時”なのです。
さらに補足すると、当時の私たちは基本的に毎日会っていたんです。学校が違うのにも関わらず。毎日ですよ?
学校が終わって放課後待ち合わせて会って→彼がバイトなので1時間くらいで解散→バイト終わりに家の前まで来てちょっと喋る→彼帰宅、という流れがエブリデイです。
休日はといえばバイト先が同じなため基本的には一日中一緒でしたので、彼と付き合っていた期間中会うことがなかった日は修学旅行の日くらいなもんです。それすら帰ってこいとか無理難題を言い出してましたけど。
まぁそういうことで、平日だったか休日だったか覚えておりませんが、夜も更けて外出が許されない時間帯に始まった喧嘩だったので私は一層面倒くささを感じていたんですね。しかもこの日は雨が降っていました。
どうにかしてこの不機嫌ベイビーを窘められないかと考えあぐねていましたが、私がなんやかんや言い訳をして会おうとしないことに業を煮やした彼は伝家の宝刀を抜きます。
「今から死ぬ」
賢い皆さんならわかりますね。これもテストによく出題される問題です。メンヘラの教科書の3ページ目あたりにすぐ出てきます。
どんなに面倒くささを感じている私も、人の命がかかっているとあらば放っておくことはできません。
親にはコンビニに行くとかなんとか言ってすぐ帰るからと説得し、渋々ながらOKをもらい、家を出ます。そして私はここで閃きます。
“彼が死ぬと言い出したもんだから焦って家を飛び出した”という演出をしようと。外は雨が降っていますので絶好のチャンスです。
私はわざと傘を持たずに家を出ました。
公園に着くと彼はまだ来ておらず内心舌打ちをしましたが、いつどこから彼が登場するかもわからないので不安そうに待つ彼女を演じます。家に帰るまでが遠足であるように、外に一歩出たら演出が始まっているのです。
少しすると傘をさした彼がやってきました。この時点で私の勝ちです、なんせ私、傘さしてないんですから。
彼は私に近づくと、持っていた傘を投げて私を抱きしめました。ひとつの曲に例えるならば大サビの部分にあたります。
もうこうなったら言葉はいりません。雨の中に私が待っていて、それを傘を投げ出して抱きしめる彼。これ以上の仲直りはありません。
さすがに傘を投げ出すところまでは予想していませんでしたが、私が親の反対を押し切って彼の為に夜遅くに外出したことに満足したようです。
ひとりの命を救えたことに安堵した私は、びしょ濡れで帰宅しましたとさ。
別れはいつも突然に。ついにストーカーの道へ。
ついに最終話を迎えました。みなさん、ハンカチの用意はいいですか?
付き合って2年が過ぎようという頃、私の気持ちは大きな変化を迎えていました。この男とはもう付き合っていけないと。
厳密に言うと1年半を過ぎた頃から別れたい気持ちはあったのですが、一度好きになった相手なので「もう無理ほんと別れたい」と「まぁなんとかやっていけるか?」の繰り返しで、自分の気持ちもよくわからなくなっていたんですね。半ば諦めの気持ちで、私の人生はこの人と結婚してこの人の子供を産んで育てるものなのか…という覚悟もどこかでありましたし、この人からは逃げられない、とも感じていました。
そんな最中、私は高校を卒業し地元企業に就職。学生から社会人になったため生活もガラッと変わり、且つ免許取得のため自動車学校にも通うというなかなかに忙しいスケジュールの日々を過ごしていました。
彼はというと4年制の学校に通っていたため生活が大きく変わるようなこともなく、ただただ私と会う時間が減り不満を募らせていました。
毎日のように私の帰宅時間に合わせて最寄り駅で待ち、そこからゆっくり歩きながら自宅に着くまでの時間を一緒に過ごしていましたが、1ヵ月もしない内に彼がネチネチと言い始めました。
「最近ゆっくり過ごせてない、一緒に居る時間が足りない、愛されていると感じられない」
これでも休日の彼と会える時間は全て彼に割いていましたし、そもそも生活が変わって1ヵ月も経ってないし毎日数十分とはいえ会ってるしもうこれ以上どうしようもありません。
私の職場はサービス業のため終業時間が遅く、どんなに早く帰れても自宅付近に着くのは22時を回った頃。さらに始業が遅めな分その時間を自動車学校の時間にあてていたためほぼ隙間のないスケジュールだったのです。そうなると、彼が私に不満を漏らすことで達成しようとしている目的はただひとつ。お泊まり(まぐわい)です。
翌日も朝早くから自動車学校、さらにはその後に仕事も控えている私としては一刻も早く帰って寝たい気持ちです。まぐわっている場合じゃない。というかそんな急に宿泊とか無理すぎます。
期待に添えないことを謝りつつ彼を窘めましたが、彼はとても諦めの悪い男。一緒に居たいと甘えてくるならまだしも、私のせいで自分は苦しい思いをしているんだと責め始めます。
このようなことを言われたのはこの日が初めてではありませんでしたが、いつにも増して疲れている私はいつにも増してしつこい彼についにキレました。
「もう本当に無理、別れる」
何度も見てきたキレ気味に食い下がる彼の姿が、この日はもうゴミのように見えてしまったんです。
私が何か悪いことをしたのか?これまで彼の為にしてきた努力はなにも伝わっていなかったのか?彼の思い通りにならない限り一生この生活が続くのか?
様々な思いが一気に私の中を駆け巡り、プツッと何かが切れてしまったんです。もう彼がどうなろうとどうでもいいと。
そんな私の気持ちなんて知る由もなく、彼は「だったら今ここで死ぬ!」と喚きます。これも散々見てきたパターンです。
今までの私だったら止めに入っていたでしょう。彼はそこにある木の枝を折り自分の手に突き刺そうとします(決して刺しはしない)が、完全に無視です。そもそも手に木の枝刺して死ぬわけがないですから。
無傷の彼は立ち去ろうとする私を追いかけ、尚も死んでやると脅し続けます。イライラしている私は「そういうのも無理!いい加減にして!」と追い打ちをかけるようにキレ、彼を黙らせます。
死ぬ死ぬ作戦が通用しないと悟った彼は、一転して平謝りモードに。ずんずんと早歩きで自宅へ向かう私の後ろを追いかけながら「ごめんなさい…ごめんなさい…」と謝ってきます。
私は彼の言葉を聞き入れず、自宅の前まで到着。このままでは普通に家に帰られてしまいどうにもできなくなると感じた彼は私の腕を掴みました。ストーカーの才能を感じます。
腕を握る力が強いため振り払おうにも振り払えず、とにかく話を聞いてくれと懇願されます。自宅の前で騒がれても迷惑なのでとりあえず話を聞くことにし、徒歩数十秒のいつもの公園へ。
死ぬ死ぬ詐欺をしたことを謝罪し、もうこんなことはしないと言う彼。お願いだから別れないでくれ何でもするダメなところ全部直す全部言うとおりにするからと。
正直ふいをついてダッシュでもすれば逃げ切れるかもとも思いましたが、変な終わり方をすれば何をされるかわかったもんじゃないので、一度彼の言い分を受け入れることにしました。条件付きで。
この条件が思いついたときの私は自分が天才過ぎて震えるほどでした。だってどうやったって別れることができるんですから。
その条件とは「今すぐ別れない代わりに一週間考える時間が欲しい。その間は会わないし連絡もとらない。その時間を与えてくれさえすればまだ続けることを考えられるし、その時間すら与えてくれないならもうこの先は無理なので今すぐ別れる」でした。
もちろんどっちにしろ別れるつもりでしたが、自由な時間を確保できて尚且つ別れることもできる。この条件を飲まなければ彼は今すぐ別れることになるので、この時点で彼ができることは受け入れて引き下がるしかないんです。
いち早く帰れる且つ別れられるという2倍おいしい作戦です。受け入れるしかない彼は渋々ながら条件を飲み、帰ることに。
すると彼が突然「実は、あの幼馴染の話嘘だったんだよね」と告げてきたのです。驚きの事実で気を引きたかったのか、もう隠しても仕方がないと何かを諦めたのか、なぜ嘘だったことを明かす気になったのかは今でも謎です。
私は「へぇ、そうだったんだ」と返事をし、なぜか照れたようにヘヘッと笑う彼を一瞥しました。どの状況でなんの話で笑っとんねん。
家に入る前にそっとハグされましたが、心が死んでいる私は無表情で対応。ハグも何もかも今日で最後だからな、愚か者め。
やっとのことで帰宅できた私は、翌日の仕事のためにお風呂に入り速攻で寝ました。
翌日、朝から自動車学校の講習が入っていた私はいつものように支度をしいつものように出発。ルーティーンだった彼へのメールも今日からしなくていい!私は自由だ!と解放感を味わいながら講習を受け、仕事に行くためにバスに乗りました。
ふと携帯を開くと、恐ろしいほどの不在着信とメールの嵐。
「やっぱり無理、一週間なんて耐えられない」
「死んでやる」
「返事くらいできるはずだ」
「電話にでなさい」
「今からそっちに行く」
「これは結婚詐欺だ、訴えてやる」
「警察を連れて職場に行くから」
こんな感じのメールが続々と届き、返信しようにも電話が合間にかかってきて文字が打てません。
やっとのことで「無理ですさようなら」とだけ返し、携帯の電源を落としました。
待てど暮らせど私の元に警察は訪れませんでしたが、これで彼とは本当にお別れです。そして、ある意味ここからが本番です。
きっと彼はどこかで私を待ち伏せすることでしょう。ストーカーの始まりです。
翌日であるその日は私は休日だったため、彼が動ける危険性のある時間を避けて裏口から家を出入り。彼の姿がないことを確認しつつ1日をやり過ごしました。
さらに翌日、仕事帰りに地元の最寄り駅に着くと彼の姿が改札にありました。予想通りだったのでダッシュで迎えの車に乗り込みなんとかセーフ。無事クリアです。
さらにその翌日、わざと終電に時間をずらすも相手も学んでいます。今度は改札ではなく電車を降りてすぐのホームにいました。ダッシュしなければいけない距離が格段に上がります。
人の間をすり抜けながら彼から逃げ、あと10mほどで改札につくところでつかまりました。この日はアウトです。
謎のノートを小脇に抱えた彼は私を責め立ててきます。
「なんで電話に出てくれないんだ!メールも返してくれない!そもそも繋がらなくなった!このノートを読んでくれ!(?)」
実は私、彼が約束を破ったその次の日の休日に携帯を番号ごと変えたんですね。繋がらなくて当たり前です。
水戸黄門の印籠の如くその携帯を見せつけ「もう番号変えたから」と彼に告げると「ずるいよ…!」と彼が膝から崩れ落ちました。なにがずるいんだろうか。
そして今度はとにかくノートを読めと私にノートを押し付けてきますが、この状況が嫌になってきた私はついに泣き出します。掴まれてる腕痛いし普通に怖いし。
謝りつつも尚もノートを押し付けてくる彼、逃げられず泣く私、終電に乗っていた人たちはみんな帰ってしまい他に誰もいないホーム。
すると私の携帯に母から着信が。なかなか改札から出てこない私に異変を感じたのでしょう、助かりました。
状況を説明する間もなく、駅に入ってくるなり私の手を引き連れ戻してくれる母。謝りながらついてくる彼。数日前にも同じ光景を見たなぁと思いつつ、この日はこちらは車ですので圧倒的勝利です。じゃあなストーカー。
もちろん諦めの悪い彼なので遅れながらも私の自宅までついてきましたけどもね、今回は母というSPがいます。私はさっさと家に入り念のため父を起こし報告→母は彼に帰るよう説得→途中から父も参戦→なぜか土下座する彼→安心して風呂に入る私。
そんなこんなでちょっとした危機を回避(できてはいない)、安心安全な日々を取り戻せると思ったらそうは問屋が卸さねぇ。
もちろんこんなことでは彼はめげません。だってノートを渡せていないから。俺、まだあいつに愛してるって伝えてないんだ!!!
そんなわけでさらに翌日、彼はまた駅で待ち伏せをします。
そしてそんな行動を先読みしていた私は駅をずらして通勤し、彼との遭遇を華麗に回避。何度も同じ手にはひっかからんのだよ。
さらに翌日、この日はなんと職場の先輩(男)が私を家まで送ってくれることに。新しい恋の予感です。
職場から車で40分ほどかかるのにわざわざ送ってくれるなんて…///と胸をときめかせつつ、万が一にでも他の男と一緒にいる状態で彼と遭遇してしまっては本当に危険なので、家の裏口側のちょっと離れたところで降ろしてもらいました。ちなみにこの職場の先輩とはこの後なにも起きません。
裏口から帰宅し、家の外を見ると彼の姿がありました。一体いつからいるのでしょう。考えると怖くて仕方がありません。
この日は私が駅までの迎えを必要としなくなったため、父も母も出かけてしまい自宅には私一人です。さすがに家に侵入してくるようなことはないかもしれませんが、他の誰かが家にいるかいないかで安心感が格段に違います。
少しすると、いきなり家のチャイムが鳴りだしました。それまで人気のなかった家になんとなく人の気配を感じたのか、彼が動き出したようです。
もちろんチャイムを無視して居留守をきめますが、人がいることをわかっているかのように何度もチャイムを鳴らしてきます。そして同時に、家の固定電話にも着信が入りだします。ここまでくればほぼパニックホラーです。
申し訳なさを感じつつも母に帰宅してもらえるようお願いし、母帰宅→彼を説得→彼渋々帰宅、といった感じでなんとか事なきを得ました。
これは放っておいてどうにかなる問題ではない、と母から助言を受け、変な気を起こしにくい日中の時間帯に彼と話す機会をつくることにしました。
もちろん直接会うのは怖いので電話ですが、思い返せば「彼に別れたことを納得させる」ということをきちんとしていなかったことに気付きました。(約束も破られているしそもそも納得もクソもないなと今なら思います)
次の休日、緊張と少しの怖さと面倒くささと色々な感情が入り混じる中、いざ彼に電話をかけました。
蚊の鳴くような声で、モソモソと「あまりにも辛すぎて学校もバイトも行けていない…」などと今の状況を私に説明してきます。私のせいにされたところでなにもできませんし、私に罪悪感を抱かせる辺り何も変わってないし、なんならそういうところが本当に鬱陶しいとしか感じませんが、この電話の目的は“別れたことを認識させ、今後関わってこさせないこと”ですので、ここで私がキレてしまってはこれまでの二の舞になるだけです。
とりあえず相手に思いのたけを全てぶちまけさせ、すっきりしたところで改めて今後会うことはもうないということを伝えて納得させなければいけません。
ひたすら続く彼の弱音を聞き続けていると、話が進まないことに疑問を感じ始めた母が電話を替わるように促してきました。母のターンが始まります。
母は彼に言い聞かせるように、これ以上食い下がられてもどうしようもないことを伝え、まだ若いんだからこれからいくらでも良い出会いがあるとかなんとか年長者なりのアドバイスをしてくれました。
すると今度はなぜか彼の母が登場です。急展開に驚きを隠せない私と母ですが、彼の母は「ずいぶんショックみたいで学校もバイトも行けてなくて…」と彼と同じ説明をしてきます。さすが親子です。
親ならばこちらサイドを説得するより彼の行動を制してほしいものですが、そんなことは口が裂けても言えません。
my母も彼母の登場に少し動揺していましたが、母同士で話し合っても結局は本人たち同士の問題ですねという結論に至り、再度私と彼で話すことに。
再び受話器を持つと、彼は一縷の望みをかけ私にお願いをしてきました。
「もう一度付き合って欲しいとはもう言わない。けど、最後に一度だけ思い出の▲▲に一緒に行って欲しい」と。
この場所、別れる1か月ほど前に行った地元から数十分の観光地で、私からすれば思い出もクソもない場所でした。家の近所ならまだしもちょっと遠出くらいの距離に彼と行くなんて無理。なにされるかわかったもんじゃねぇ。ということで、彼のしつこさと思っていたよりも長く続く電話に疲れて呆れ始めていたため「いや、そういうのも本当に無理」と冷たく返し、彼の最後の望みは儚く散りました。
終始ぐずぐずとモソモソと喋っていた彼でしたが、私の態度が冷たくなったことにスイッチが入ったのか「俺のことをバカにしてるのか!!」と急にキレだし、なんと電話も切れました。
え????これで終わり??????
そうです。これで終わりなのです。本当に終わりなのです。
なんとあっけない終わり方でしょう。
何度も食い下がり、母という最終カードまで切り、どうにかして最後まで諦めず様々な切り口で攻めてきた彼ですが、なんと最後の最後は謎の逆ギレで幕を閉じました。
その後は何度か街で彼を見かけることはありましたが、一方的に遠くにいる彼を見つけるくらいで対峙することはなく、2年後には赤子を抱き女性と仲睦まじく歩いている姿を目撃するまでになりました。幸せなようでなによりです。
そんな訳で、人生初の彼氏がストーカーに変貌した話を2回に渡ってお送りしてまいりましたがいかがでしたでしょうか。
思ったより長くて自分でビビっていますが、良しとしましょう。
また書きたいことが思いついたら書きますね。それでは。
PS.真相は定かではありませんが、付き合いたて当初の「彼母が反対していて胃に穴が開いた」はきっと嘘だったでしょうね。