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【突撃!ナレトーーク】第7回 近藤隆幸さん(後編)

ナレーター界を盛り上げるべく始動したメディアプロジェクト『HITOCOE』。

ナレーターのさかし(坂下純美)とあこ(甘利亜矢子)が、ナレーターの皆さんのライフスタイルや人生観、それぞれの働き方を紹介していきたいと思います!

今回は前回に引き続き、深味のある声が魅力的なパパナレーター・近藤隆幸さんです!

近藤隆幸さん
落ち着いた上品なイメージの声を武器に、声優・ナレーションはもちろん、元・理学療法士の経歴も活かしたボイストレーナーなど、各方面で活動中。同時に0歳と4歳(2022年5月現在)のお子さんのパパで、毎日仕事と子育ての両立に奮闘している。
<代表作>
【ナレーション】TNM & TOPPAN ミュージアムシアター『国宝 松林図屛風-乱世を生きた絵師・等伯-』『東博のミイラ デジタル解剖室へようこそ』、エクセルコダイヤモンド など
【声優】ウマ娘 プリティーダービー(アプリ)、約束のネバーランド(アニメ) など
〇Twitter…@Kondo1214
〇Instagram…@takayuki_kondo1214 
(ボイスサンプルは @takayuki_kondo_voicesample で)

前編はこちら!

声を鍛える方法!

さかし:今、ボイストレーナーとしてもお仕事されていますよね。

近藤:以前教わった先生に「とにかく声は鍛えろ」ってすごく言われたんですよ。上手い人はたくさんいるけど、男性は声質がとても大事ってそのときにすりこまれるように言われて、20年以上前なのに覚えています。
でも当時使えなかったんですよね、声の良さっていうものが扱えなかった。ハードは作ったんですけど、ソフトがないような状況。いろんなボイトレを受けたり、自分でもやってみたりしたんですけど、響く音が出るようになったなと思っても、扱えなかったんですよ。

さかし:どう使うか? 

近藤:歌を歌うときはいい声で歌うのに、ナレーションで原稿を読むときにはそれが使えないという人、いたりしますよね。歌声としゃべり声が違うというような。それに近いかも。
マネージャーと一緒にカラオケに行って「何でその声で原稿読まないの?」って言われたりもしました。やり方がわからなくて。
でも、とにかく講師の方に「男性は絶対声を鍛えたほうがいい」って言われたことが、今のボイトレ講師にも生きてるかもしれません。
なので、ボイトレをしながら、しゃべらせる、読ませるっていうのはすごいやるんですね。やっぱり声って変わるんです、鍛えていくと。 

それを実感したできごとがあるんです。
大学時代の演劇サークルにいたときは、ただ声を枯らして「俺は熱い芝居やってる!」っていうのが快感でやっていたんですが、専門学校でちゃんと基礎をやろうというときに先生に発声について聞いたら「俺は劇場で舞台立っててそれが訓練になってるから必要ないんだ」って言われて「なんやこの人」と思ったんです。
でもそのとき「お前1分間笑えるか」って言われたんです。「1分間笑い続けられるか、できないだろう。俺はできるぞ」みたいなことを言われてすっごいむかついて。「だったら俺5分間笑ってやる」と思って、そこから毎日、日曜日以外ずーっと笑ってました。毎日毎日。

で、やり続けたら声が変わってきたんです。吐く筋肉が鍛えられるし、体が単純に強くなりますよね。単純に響く音として出せるようになったんです。
なので、あれは良かった。
唯一その専門学校で学んだことは「5分間笑う」っていうことです(笑)

片岡:1分間も続かない子いますからね。

近藤:やってもらうと最初はみんな30秒でヒーヒー言ってます。30秒でもきついと思う。やり始めのころは、酸欠みたいになってしまって手の先が冷たくなったりしながらやってました。でも乗り越えていけるんですよ。

とりあえず5分やってみようと。始めは1分を5回とか、それを2分、3分、とちょっとずつのばしていきました。近所迷惑にならないように家でタオルを口に当てて笑ってました。でもこれがまたきついんですよ。口を塞いでいるんで空気吸いにくいし、笑い声出しにくい。 なので、当てながらのときは3分だけやっていました。

当時自分は社会人を辞めて通っていて、高校卒業してきた子たちと一緒に学んでいて「一緒にするな、もう俺はこれで食っていくんだ!」っていう思いがあったからこそやり続けられた、っていうのもあったかもしれません。

片岡:モチベーションがすごかったんですね。

近藤:笑うっていうこと自体、別にそんな難しいことじゃない。ただきついだけで。なので、やるかやらないか。
ただ、学校でやってたんでめっちゃうるさいって言われました(笑)朝練をやってもいいって部屋を解放してるから笑ってたら、「いつも朝笑い声が聞こえるんだよね」って言われました(笑)あ、俺、俺って。そんなこともありましたね。 

さかし:これを読んだら読者の方、とりあえず1分間笑いますね。たぶん(笑) 

近藤:やっぱり一番は続けることですね。筋トレと一緒。筋トレも1ヵ月以上続けてようやく少し効果あるかないか、みたいなもんじゃないですか。
もしよかったらやってください(笑) 
今は継続してこの訓練はやってませんが、ゲームの案件とかで低音のモンスター系とか演じるときは、笑ってからスタジオに行ってます。

さかし:テンションも上がりそうですね! 

近藤:テンションも上がるし、ポジティブな気持ちになります!
あと、急に大きい声を出すと身体がビックリするのか、僕すぐしゃっくり出るんですよ。でも、笑って身体を起こしてからだと大丈夫なんです。
身体も自分を守ろうとするんだと思うんですよ。普段出さない声を出そうとするから。
なので、舞台をやったりするときは、笑います。体力もつくし、身体も鍛えらえるんで、すごくオススメですね。 

パパも大変…早朝収録をすることも

さかし:近藤さん、Twitterに朝早く「おはようございます。今から朝活です」って呟いて収録してるっぽいんですよね。投稿時間が午前4時とか!
お子さんいらっしゃるから夜は一緒に寝ちゃうんですね…。

※この記事とか午前2時ですよ…。

近藤:ほぼ100%寝ます。後で起こしてねって奥さんに言っておいて起こしてもらって、夜中1時から録り始めるときもありましたけど。

さかし:寝かせる担当はパパなんですか?

近藤:いや、奥さんです。僕は絵本を読み終わった途端に0歳児より早く寝てしまっていつも記憶がないんですよ。4歳の息子に「パパは赤ちゃんよりも寝るのが早いね」って言われます(笑) 
だからなるべく夜のうちに録って朝に編集という形にしたいなと思ってはいるんですが、収録が朝になってしまうこともあります。声が微妙に違ってくるので、やるとしても仕事を選んでいますが。
あ、でも逆にいいときもあるんです!ついこの間…今のところ連絡がないんで落ちてしまったのかもしれないですけど、〇〇さんみたいな感じのをお願いします、サンプルくださいって言われたんです。それが結構渋いお声で、ちょっと豪快なイメージな方なんですけど、寝起きで収録したらちょうどよかったんですよ!落ちてる感じがするのが。

片岡:ちょっと響きが喉に落ちてますもんね。

近藤:そうなんです、だからちょうどよかったんですよ。ものによっては使える。

さかし:だったらもしこの仕事決まったら、もう一回寝起きにやればいいんですよね。

近藤:そうですね。いろんなところに「ダメだろうな」って思っても出すようにしたら、意外にそれがサンプルとして使えたり、「意外にこれいけるわ」って思ったりとかしますね。そういうとき、片岡さんが聞けるようにオンライン上のサンプルフォルダに入れておくんです。「これいいな!」と思ったら増えるし、「これないな」って思ったら減ります(笑)

片岡:入れ替えがあるんだ(笑)

※このお話でお聞きしていた案件、決定いただいたそうです!

自分が持っているものを隠さず発信!

さかし:近藤さんは子育てにとても協力的ですよね!お子さんのことをSNSで発信してらっしゃっていつもツイートに癒されてます。

近藤:以前お世話になった作家さんと飲みに行ったときに、SNSをどう使うかという話になって、「もう自分の持ってるものは隠さずに発信したほうがいいよね」って。
自分がナレーターとしてやってこうと思ったときに、サンプルだけで「この人にお願いしよう!」ってものができればいいんですけど、そういうのもなかなか難しいかなって思っていて。それなら人間性というか、どんな人なのか分かればいいなと思ったんです。
子どもとの写真で「家族がいる人なんだ」と思ってもらえたら、家族のために本気でやってる人なのかなって感じてもらえるかなと思ってUPするようにはしてるんですけど。

さかし:実際、発信してみてどうですか? 

近藤:Instagramからお仕事いただいたことがあるんです。インスタにも子どもと一緒に遊びに行ったときの写真を上げたりするんですけど、ご連絡をいただいたきっかけが「お子さんと一緒に写ってらっしゃる写真を見て、安心してお願いできるかなと思ったので」って教えてくださったんです。
無数にいるナレーターの方のなかから選んでいただくときに、人となりが少しでも分かってもらえたほうがいいのかなと実感できたので、ポジティブなことや聞いていて気持ちが良くなるような、あぁいいなって思ってもらえるようなことを発信するように心がけています。
子どものこと以外でも、自分が「理学療法士兼ナレーター」だと発信していたら「実は自分も理学療法士やってました」とか「作業療法士やってました」っていう方とつながって仕事にもつながったこともあったので、やっぱり発信したほうがいいなって思います 。

仕事も子育ても全力で

さかし:ちなみに子育てどうですか?大変ですか?

近藤:0歳の娘が夜泣きするんですが、週に1回奥さんと夜の育児を交代しています。おむつ交換やミルクを夜中の2時とか3時にやっています。ほんと奥さんの大変さが身に染みて分かるので、きっとあこさんも大変だと思います。
※あこはインタビュー中、いつも0歳の子どもを抱っこしています。

あこ:なんかもう、病んだり元気になったりの繰り返しです。

近藤:ですよね。ママは大変だと思うし、すごいと思います。 

さかし:近藤さんは宅録も多くされているので、おうちにいらっしゃることが多いですよね?

近藤:そうですね。今日は奥さんが向こうの部屋で0歳の子を見ています。奥さんが仕事に行くときは、自分が見るっていうスタイルです。

さかし:奥様もお仕事されているんですか。0歳の子をお父さんがまるまる担当できるってすごいですね!

近藤:こんなに大変だとは思わなかったです。絶対会社のほうが楽です。間違いないです、本当に。
なので、ひとりで見ているときは「なんとか寝ないかな」って抱っこ紐しながらスクワットしてみたり。この状態で座ると起きるので、立った状態で作業できる高さにパソコンを置いて編集だけしたりとか、時間をうまいことコントロールしてます。
時間を無駄にしたくないっていう感じですね。

さかし:それができるのがすごい。家族も大事にしたい、でも仕事も家族を大事にすることにつながってるからバランスよく。

近藤:前にあまりにも仕事に必死にやりすぎたときに、息子に「パパいっつも仕事だよね」って言われたんです。結構それがショックで。本当に心からごめんと思ったので、なるべく日曜日は休みにしたいかなぁって。
ゴールデンウィークはレゴランドに行って思いっきり遊びましたよ!

さかし:仕事を残していると、どんなに楽しもうと思っても何か引っかかってるんですよね。

近藤:そうですよね。何か連絡あるんじゃないか、何か募集あるんじゃないかってやっぱり思っちゃうんですよね。 
でも下の子が保育園に入るまでは我慢と思っていて。そしたらもうちょっと活動できるかな。
前と後ろに子どもを乗せて自転車で町中を滑走するお父さんに僕もなりますよ(笑)

さかし:今しかないその時間を楽しんでください!

無駄なことはひとつもない

さかし:ここまでいろんな経験を積んできて、これは大事だなと感じていることはありますか?

近藤:今までの経歴と、いろんなところに積極的に顔を出していたお陰で仕事などをやれているという部分があると思っています。若いころにもしアニメか何かで売れていたら今はないと思う。
博物館のお話も、自分が最後にヘルプで働いたのが4年前なんですよ。それも当時働いてた方が産休で「2ヵ月ぐらいやってくれない?」って声をかけてくれたおかげ。
時代が変わって、そのつながりで「ニコニコ公式動画で流す動画のナレーションをやってくれませんか?」ってお話もいただいたし。これがあったから僕はTOPPANさんとご縁ができたので。
だから、いろんなことをやっておいて良かったなと思います。どこでどうつながるかわからないですから。 

さかし:そのときそのときのことを一生懸命やってきて、どの経歴も大事に全部持ってここまできたんですね。 

近藤:そうですね。フリーになったので、やって後悔するようなことだけはしないようにしようって開き直ってるというのもありますけど、「もっとああすれば良かった!」って後悔で終わりたくないっていうのがある。「これが最後になってもいいや」ぐらいの気持ちでやる。 

片岡:さっきお話にありましたが、近藤さんはサンプルを募集するととにかく積極的に提出してくれます。前に与謝野はるさんにインタビューしたときも同じようなことをおっしゃっていましたが、そういう人って発注者側や制作側にものすごくありがたい存在に思われる。だから貸しになるんですね、ナレーターから制作側への。「なんかいい案件が回ってきたら今度候補出しとして近藤さんに振ろう」というふうにも思ってもらえたりするので、大切な姿勢だなって思います。 

近藤:ありがとうございます。それで成果が出始めたら、「あ~!やっぱりそうでしたね!」って言います(笑) 

さかし:挑戦する姿も、成果が出たところもお子さんに見てもらいたいですね! 

近藤:どうなんでしょうね。いつになったら分かるんだろう。収録するこの部屋を「仕事部屋」って言ってくれてはいるので、そうなるようにやっていきたいですね。がんばります。 

片岡:将来ナレーターになりたいって言うかもしれないですよ。 

近藤:言ってくれたときどう思うのかな。どう時代が変わっていくんでしょうね。 
僕、48歳で0歳の子持ちなんで大変なんです。娘が30歳のときには僕はもう78歳ぐらいになってるんで。なので、娘が結婚してバージンロードを歩くときに健康な体でいたいですね。

片岡:本当ですね。 

近藤:結婚式の司会をやってるときに、ご両親に「本当に大変でしたよね」って勝手に共感しています。「ご立派にお子さん育ちましたね」って勝手に思ってます。 

さかし:実感が(笑) 

近藤:息子が最近この部屋に入ってくるんですよ。せっかくだから声を録ってあげようと思って「何言いたい?」って言うと、「すぽーつかー」「だんぷかー」とか、何の脈絡もない(笑)で、最後に「ままだいすき!」って言って終わるっていう。
これを収録しておいて結婚式で流したら奥さん泣くかもしれない。

あこ:今聞いてても涙が出てきました私。 

近藤:とにかく子どもを一人立ちさせるまでは…なんとかナレーションの仕事と声にまつわる仕事で大学まで行かせるということが今の目標ですかね。なので、なんとかそのときにまだ生きていたい。
なので、今年の目標は、がんばってナレーションすることと、人間ドッグに行くことですね!

さかし:一番のミッションですね(笑)ありがとうございました!

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近藤さんは、周りの家族と自身の中身を大切に頑張っていらっしゃるんだなぁと感じました。その温かみがお仕事やサンプルの声にも感じられますよね!
今回は連休の家族サービスでお疲れのところ、お話を聞かせていただきありがとうございました!さらなるご活躍、お祈りしております!!by さかし

これからも「HITOCOE」ではナレーターに特化した上質な記事を連載予定です。今回の記事を気に入っていただけたら、スキやフォロー、サポート(投げ銭)を頂けると幸いです。いただいたサポートは、今後の活動費として役立たせていただきます。

【ライター】
さかし(坂下純美)

東京在住のナレーターで一児の母。都内スタジオでの収録を主に活動。1年ほど前に宅録を開始。Twitterで情報を集めながら日々勉強中。
〇HP…https://www.sakashitamasami.com/
〇Twitter…@sak1013

あこ(甘利亜矢子)
静岡在住のナレーター。司会業を中心に伊豆半島全域を走り回る日々。只今育児の為、司会業は育休中。宅録はスタートラインに立ったばかり。
〇note…https://note.com/amariayako〇Twitter…@amariayako

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