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テレビの受信方法を考える
はじめに
本記事を書いてるのは1月中旬、これから春の新生活に向けて準備する方も多いだろう。新居でテレビ見るのはどうしたらいいのかという心配もあると思う。最近はネット配信が増えたとはいえ、まったくテレビが必要ないというわけにもいかないだろう。
野球中継などはタイムラグや安定性、あるいは放映権の面でまだ放送に分がある。アニメの場合は配信でだいたい間に合うが、放送より配信の開始がかなり遅れる場合もある(配信の方が早いこともあるが)
ここではテレビの受信方法について考えたい。なおネット利用が関わる場面もあり、回線選びの参考になることもあるだろう。
自分でテレビの受信方法を用意する必要があるのか?
冒頭に春の新生活と書いたが、そういう場合は集合住宅(マンション、アパートなど)であることが多いだろう。いきなり話が終わってしまうがその場合は受信方法は基本的には考える必要はない。下記の1〜3のいずれかの方式でちゃんと受信設備はついていて、きっちり管理されてるはずだ。壁の端子にテレビの線をつなげば映る。ただ「BSやCSがない」ということはよくあり、そういう場合の対策だけ考える必要がある。
逆にそういう環境で育った人が、いざ一戸建てマイホームというときにはどうしていいかわからないことがあるだろう。
一戸建ての場合、中古を買ったなら前の持ち主がつけたアンテナや配線がそのまま残っている場合がある。それならそれを利用すればよいだろう。ご丁寧にアンテナを撤去していた場合(あるいは残っていたアンテナや配線が使い物にならなかった場合)は新築同様施工しないといけない。
新築を建てる、あるいは買う場合は以下の点を考慮しつつ工務店と相談してどうするかを考える。
見たいチャンネルが見れるか。BS/CSの対応は?
経済性は?
ネット利用との兼ね合いは?
その地域の電波事情は?
受信方法は?
テレビの受信方法もいくつかある。
アンテナを設置して直接受信
ケーブルテレビによる受信
光回線による受信
では順に説明する。
1.アンテナを設置しての直接受信
これが基本的な方法。新築の一戸建てならこれを業者に頼む。
集合住宅の場合はすでについてるので、読み飛ばしてよいがBS/CSがなくて追加したい時は必要となる。
地上波は魚の骨型のアンテナ(または平面アンテナもある)を送信所(首都圏ならスカイツリー、京阪神なら生駒山)に向けて設置する。送信所が複数あり全部見たい場合はそれぞれの方向に向けて設置することもある。大阪だと生駒山に向けたアンテナとサンテレビ用に神戸の摩耶山に向けたアンテナの2本が立ってる家が多い。
衛星放送(BS/CS)は丸いパラボラアンテナを設置する。BSとCSはここではあまり違いは考えなくていい。リモコンの押すボタンが違うくらいの感覚でいい。BS=無料、CS=有料というわけでもなく、有料のBSもあるし無料のCSもある。
地上波とBS/CSのそれぞれのアンテナで受信した信号を混合して1つの同軸ケーブルの配線にまとめ、各部屋に分配する。各部屋ではそれを今度は分波器で地上波とBS/CS信号に分け、テレビの端子につなぐ。nasneのように分波器使わずそのまま刺してもよい場合もある。
アンテナだけでなく各部屋への配線ももちろん必要である。一戸建ての新築時なら一緒に施工されると思うが。
実際の施工・設置は業者に頼んでやればいい。自分でできるひとはここは見ないはず。
すでに地上波は見れるようになってて、BS/CSを追加したい場合は全部の部屋で見れるようにしたいなら上記のように配線に混合する。1台だけでいいのならその部屋のバルコニーなどにパラボラアンテナを設置し、その1台に直結でもよい。ただし南西方面に向けて設置できる必要がある。
またBS/CSのない集合住宅で追加する場合も同様に1台に直結となる。家全体の配線は同じ棟内でつながってる共有部なので、勝手にそこに混合してはいけない(賃貸であれ分譲であれ同じ)
なお地上波の室内アンテナというものがあるが、あまり安定して受信できるものではない。どうしても工事が不可の部屋で電波的に恵まれた状況で使うものである。ノイズにも弱く、蛍光灯のオンオフでテレビにノイズが入ったことがある。特に位置が低いとまるでだめ。なるべく高い位置(3階以上がよいが、2階なら棚の上とか天井に近い位置で、なおかつ窓に近い方)がよい。低い位置は電波をさえぎる障害物が多いからである。3階の窓から送信所(大阪なら生駒山が、首都圏ならスカイツリー)が見えるというシチュエーションならまあまあ使い物になるだろう。
メリット
一度施工したらその後の費用はかからない。台風や地震で壊れない限りは何十年も使えるものである(放送の規格がガラッと変わらない限り)
自分に必要なアンテナを選べる。例えば地域によっては隣接県の電波が飛んでる場合があり、いろんな方向にアンテナを何本も立てて混合するように施工することもできる。BS/CSが不要なら施工しなくてもよい(NHK受信料に関わる)
BS/CS有料チャンネルが必要ならスカパーやWOWOWと個別に契約すれば良い。無駄な抱き合わせはない。契約期間の縛りもない。
デメリット
最初の施工は(アンテナ設置、各部屋への配線)結構費用がかかる。もっとも各部屋の配線は以下の2〜3でも同じものが必要なので条件は同じ。
台風や地震、大雪などで壊れることがある。壊れないまでも向きがずれることはある。
家の美観を損ねる。そのために禁止されてる地域もあるとか。ただBS/CSのパラボラアンテナは無理にしても地上波アンテナは屋根裏に隠して施工という手はある。平面タイプのデザインアンテナを壁かけにして目立たせないという手もある。
地形的な制約で不可能なことがある。山間部に限らず、横に高架があるとかビルの谷間だとかで受信環境が悪く、以下の2〜3のいずれかの手段が必要なことがある。
県によっては地元の民放局が少なく、下記のようにケーブルテレビが事実上必須な場合もある。
BS/CSアンテナは家庭用のためあまり大きいものは設置できず、雨や雪で受信できないことがある。もっとも以下の2〜3の方法でも完全に対策できるわけではない。
CATV特有のコミュニティチャンネルなどは利用できない。まあなくてもどうってことないものではあるが。
2.ケーブルテレビによる受信
上記の手段が取れない場合によく検討されるのがケーブルテレビ(以後CATVと表記する場合あり)である。全国的にはJ:COMのシェアが大きいが地域により違いがあり、公営の場合もある。
集合住宅の場合は全戸一括で導入されてることが多い。地デジ化の際に営業しまくったのかな。住人にネット接続手段を与えるのにテレビの配線さえあればいいので、オーナーさんにも都合がいい。「Wi-Fiつき」な物件はその回線にCATV利用のことも多く、費用は家賃込みで見かけ上は無料となってることも多い。(有料チャンネルや、高速なネットを利用する場合は別料金)
ケーブルテレビでも1の直接受信の場合と宅内の配線は基本的には同じである。
ケーブルテレビ特有の問題としてBS/CSがパススルーでないことが多いということが挙げられる。なおここでの「CS」は有料の専門チャンネル群(BSを除く)という意味でとらえてほしい。CATVにおいては正確な表現ではないが、1のアンテナ受信における用語と合わせる。
パススルーとは文字通りそのまんま流すということで、地上波についてはパススルーであるが(一部例外はある)BS/CSにはSTBというチューナー的な機器が必要なことが多い。これはケーブルテレビはあまり高い周波数の信号を流せず、また限りある周波数帯で数多くのチャンネルを放送するのに効率が良いからである(トランスモジュレーション方式)
またこのSTBは市販されておらずレンタルとなり、毎月の料金が発生する。テレビの台数が多いとその費用もバカにならない(複数台の割引がある場合もある)またBS/CSの録画の際にテレビの録画機能や市販のブルーレイレコーダーを利用できず(あるいは利用するためには面倒な連携をする必要がある)不便である。ただしUSBのストレージを利用した簡易な録画機能はあるので以前ほどの不便はないかもしれない。
最近はこのSTBも多機能化し、ネット配信動画も見れたりするので、それはそれで便利かもしれない…と思ったが最近のテレビは(特に4Kテレビは必ず)そんな機能は内蔵されてるのでやはりあまりありがたみはないか。テレビのリモコン1つで完結する方が便利なので、テレビとSTB2つ使うのはできれば避けたい。
CATVの各地域のケーブル配線の幹線部分は光ファイバーになっているが各住宅へのつなぎこみはまだ同軸ケーブルが使われてることが多い。完全に光ファイバー化すれば以下の3で説明する光回線と同じものとなり、その場合はBS/CSもパススルーとなることが多い。ネットも高速化する。またBSはパススルーでもCS系の有料チャンネルはSTBが必要なことがある。完全な光回線化は意外と地方の中小の業者のほうが達成してたりする。
CATVのおすすめ度であるが、地域的に利用せざるを得ない場合(過疎地で他に光回線業者がないとか、地元に民放が少なくCATV利用が昔から普及している地域など)または完全に光回線化してる場合以外はあまりおすすめしない。集合住宅では地域を問わず仕方なく利用せざるを得ないことはあるが。
なお集合住宅の場合は、地上波はCATVだがBS/CSは屋上にその住宅のパラボラアンテナがついており、パススルーでない弱点が解消されていることも多い。その場合はいいとこどりで結構理想のテレビ視聴環境である。集合住宅住まいなら屋上に注目しよう。屋上が下から見えないくらい大きいマンションならついてる可能性は高い。ついてない場合は各住人がそれぞれパラボラアンテナを外につけてたりする。
メリット
地域外の地上波チャンネルが見れることがある。東京でテレビ神奈川とか、大阪でKBS京都とか。あるいは徳島県のような民放が少ない地域で大阪の放送を見れる場合もある。
たいていの場合地上波の空きチャンネルを利用したコミュニティチャンネルがあり地域情報を流していたりする。地域によっては地元の議会中継、高校野球の地区大会、地元の祭の中継などもある。
台風、地震、大雪に強い。断線があっても家の外側なら復旧してもらえる(家の外側はCATV側の責任)
BS/CSは大雨、雪に強い(といっても絶対的なものではない)
ネットとセット契約ができるので、あまり契約先を増やしたくないときにはよいかもしれない。ただし完全光ファイバー化していない場合は少し時代遅れの遅いスピードしか出ないことが多い。
たいていの場合auのスマートバリューの割引対象となっており、auユーザーなら割安に利用できる。
野球、映画、アニメ、ドラマなどの専門チャンネルは充実しており、割安である。まあそういうのはサブスクのネット配信で間に合うことが増えてきたが。
デメリット
毎月費用がかかる。テレビのチャンネルを最低限にしても結構かかる。
上記のようにBS/CSパススルーは未対応のところが多く、視聴や録画が不便である。
ネットもあまり高速ではないことが多い。
有料チャンネルはセットメニューが多く、単品では選べないこともある。
個人的には(他に選択肢がある状況なら)CATVは選択しないだろう。
3.光回線による受信
個人的なおすすめ光回線。この場合もいくつか種類がある。
NTTのフレッツ回線または光コラボ回線
地域の電力会社系光回線
光コラボは今ではすっかり主流の契約方法だが、NTTのフレッツ回線とインターネットプロバイダーをセットにして、プロバイダー側の名前で売るものである。プロバイダーが光回線を直接持っているわけではない。ドコモ光もソフトバンク光もこれ。
そのNTT回線を利用したテレビサービスの「フレッツテレビ」は光コラボにおいては「⚫︎⚫︎光テレビ」と名乗っていることが多い。中身は同じ。これ光ファイバーに地上波放送、BS放送、スカパーのCS放送、そして今はほとんどニーズはないだろうけど(一般のスカパーで十分なので)スカパープレミアムサービス光が全部流れている。BSおよびCSのスカパーもパススルーで、市販のテレビや録画機器がそのまま使える。
これはONUという光回線のモデム的なものからテレビの信号が出てくる。それを宅内の配線につないで分配すると全部の部屋で見れる。1部屋だけで見れればいいのならテレビの近くに光回線を施工し、ONUとテレビを直結すればいい。
なおこれはスカパー(CSの有料放送は抜きに)とNTTの共同のサービスという形になっており、スカパー側では「テレビ視聴サービス」という名前がついている。NTTでは「フレッツテレビ」と呼び、光コラボの場合はそれを仕入れて、各プロバイダーの⚫︎⚫︎光テレビという名で売っている。
また集合住宅向けの一括契約もあり、最近のマンションだと結構多い。
2の場合は関西ならeo光で、それ以外も同様のサービスがある地域がある。この場合も基本的には1と同様だが施工の仕方が若干違い、光化を達成したCATVに近い面もある。BSはパススルーだがCS系のチャンネルはCATV的でSTBが必要である(スカパーを利用しない)
なお「ひかりTV」というサービス(ひらがなでひかり)があるが、地上波も含め全てネット配信のような形で、専用チューナーが必要である。テレビ1台ならともかく複数あれば割高だし、何より不便である。NURO光の場合はテレビはこれしか使えず、自前アンテナがある場合はよいがそうでないならおすすめしにくい。
メリット(以下NTT回線の場合。電力系の場合は少し違う)
BSもCSもパススルーであり、使い勝手がいい。
CATV同様、大雨や雪にはある程度強い。
光コラボ業者は星の数ほどあり、自分にあった業者を選べば良い(ただしテレビサービスの中身は同じである)よくわからない場合はスマホの割引が効くものでいいと思う。
CATVより高速なネット回線が利用できる。
CATV同様、台風や地震、大雪に強い。断線しても復旧してもらえる。
コストは意外と安い。月に1000円しない(ネット代と有料チャンネルは除く、純粋なテレビ設備利用料として)
アンテナ受信の場合と同じ条件でスカパーやWOWOWも利用できるので必要に応じた契約をすることができる。
デメリット
1000円以下とはいえ毎月費用はかかる。
地域外の地上波放送の対応はCATVほど積極的ではない(東京の隣の県でTOKYO MXとか、大阪で兵庫のサンテレビといった需要のある一部チャンネルは対応)
有料放送をたくさん見るならCATVのほうが割安。
CATVのようなコミュニティチャンネルはない。
利用できない地域もまだ多い。都市部はだいたい対応してる
まとめ
いくつかテレビ受信の方法を書いたが、その地域によって事情が違うので、最適な方法を選んでもらいたい。