いつかこの子を抱きしめてあげたい「運動靴と赤い自転車」

運動靴と赤い金魚

いつかこの子を抱きしめてあげたい

イランという国を映画で思う時、親近感を覚え何故だか懐かしい。
宗教も文化も異なるのだけど、流れる時間の速度が近しいのだろうか。

ファーストカット。小さな女の子用と思われるピンク色の靴が修復されていく。
ピンク色に、リボンの装飾。
修理してもそれは僅かな延命処置とわかる、かなりくたびれた靴。
次のカットでその靴の修理が終わるのを待つ少年。どうやら彼はお使い途中らしい。
そしてこの少年にはこの小さな靴を履く妹がいるのだとわかる。
ほんの少し目を離した隙に、靴を無くした彼は貧困に喘ぐ両親にそれを言い出すことができない。靴を買う余裕なんてないのだから。
仕方なく、一つの靴を共有して使う兄妹。苦労も限界に達した頃、小学校のマラソン大会の賞品が運動靴だと知り、お兄ちゃん、必死に走る、走る、、、!
この映画、シンプルなストーリーながら、子ども目線で当時のイランの国の経済格差、宗教、教育制度の様子が入り込んでいて、国内の検閲が厳しい国で映画を作るということ、芸術の役割、その重要性についていたく考えさせられる。
映画が国外に羽ばたく様が、まるで伝書鳩に乗せた希望のような側面を併せ持っていて感慨深い。アッバス・キアロスタミ監督、ジャファール・パナヒ監督ら、他の監督陣の作品らにも是非目を向けて欲しいな。

人の心の痛みがわかる優しさが一番の財産かなと思う。
道徳心はお店に売ってない。お金では買えないし、コレクションできない。
どんな成功者も、生き生き語るのはみんな貧しい頃の苦労話だったり、する。
私、人様の苦労話を聞くのが大好き。
どんな資産コレクションを披露されるより、
昔の苦労話の方がぐっとくるのです。
妹のために走る。そんな経験はきっと誰にもあって、そんな頃の心細さに触れ合うことができたなら、その苦労が報われる。あの時の涙が栄養剤になる。そう思うんです。
いつかそんなお話、お聞かせください。

運動靴と赤い金魚
‎چه‌های آسمان‎/Children of Heaven
1997/イラン/88min
監督・脚本/マジッド・マジディ

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