ジャッキー・チェンと勝負する(58)
前回の「ツインズ・エフェクト」に続いて、アイドルユニット「Twins」の主演映画「花都大戦 ツインズ・エフェクト2」(2004年)の登場です。引き続きジャッキーはチョイ出演ですが、ジャッキー・チェンにとっては非常に重要な作品。
しかし、このタイトルを見れば、ああ「ツインズ・エフェクト」の続編なんだね、ジリアン・チョン(鍾欣桐)とシャーリーン・チョイ(蔡卓妍)のコンビが再びバンパイアハンターに扮して悪のバンパイア組織と闘うんだね、と思っても仕方がないところでしょう。
ところが、そうは問屋が卸さないのが香港映画。前作とは全然関係ないまったく別のお話でした。
舞台は遠い昔、どことも知れない場所にある女人国。
強力な女帝が支配する帝国で、男はみんな奴隷という国。そこで、奴隷商人のシャーリーンと、皇帝密使のジリアンが活躍するファンタスティック・アクションであります。それにしてもアイドルの演じるような役じゃないんじゃないか、二人とも(笑)
「ツインズ・エフェクト」が香港ファンタスティックムービーの系譜を継ぐホラーアクションだったのと同様、これまた香港ファンタでは定番だった古装片(時代劇風作品)ムード。知ってる人は「チャイニーズ・ゴースト・ストーリー」とか「スウォーズマン」とか「テラコッタ・ウォリア 秦俑」とかを思い出していただければオッケイ。このシリーズ、香港ファンタの21世紀版を狙っているのかな。
香港映画の伝承技ワイヤーワークにCGをプラスした格闘シーンがたっぷり楽しめますが、「Twins」のような美少女が闘うと、凛々しくて非常によろしいです。
前作ではコミカルっぽいシーンでの登場だったジャッキー、今回は1シークエンスのみながら、がっつりとしたファイトを見せてくれます。しかも相手はドニー・イェン(甄子丹)という好カード。前作ではアクション監督に徹してスクリーンには登場しなかったドニー兄さん、我慢しきれなくなったのか、ついにジャッキーの前に立ちます。「シャンハイ・ナイト」以来2度目の顔合わせだけに、手の合ったダイナミックなファイトで見せてくれました。
さて、この映画がジャッキー・チェンにとって重要なのは、なぜでしょうか。いやそんなにモッタイつけることはないですね。
この「花都大戦」は、ジャッキーの長男であるジェイシー・チャンの映画デビュー作なのです。
幼いころから舞台や映画に出まくっていた父・ジャッキーと違い、ちゃんと大学を卒業したジェイシーくん。先に歌手デビューをはたし、満を持しての映画出演。しかもいきなり主演格です。
この時点で22歳くらいですからまだずいぶん若僧な気もします。いきなりの抜擢は、やはり父の御威光かと思われますが、でも考えてみれば親父ジャッキーはこの年ごろには、すでに「レッド・ドラゴン/新・怒りの鉄拳」に抜擢されて主演にのしあがっていましたから、まぁいいのか。親父のように下積みを重ねたわけでないのですが、かえってそれゆえに「すれていない」純粋さみたいなのが滲み出て、なかなかの好演。
それにしても、口元とか、ほんとにジャッキーにそっくり。親子の血ってのは争えないもんですな。
しかし、再三書いてきたように、親父は22歳時の「レッド・ドラゴン」のあとで一気にスーパースターへのしあがりましたが、この「花都大戦」からすでに10年余、息子のほうは現在のところ、まだそこまでの輝きは放っていないですね。その後、いろいろあったしねぇ。
「親の七光り」とかいろいろ言われてる面もあるようですが、いつか親父を超えるスターになってもらいたいものです。そう思うのは、ジャッキー親父も同じでしょう。
ところで親父は「チェン」なのに、なぜジェイシーは「チャン」なのか?
ジャッキー・チェンの「チェン」は、本名の「陳港生」から。
そうか「陳美齡」がアグネス・チャンなんだから、ほんとうは「ジャッキー・チャン」が正しいのか。
これはじつは、ジャッキーの日本初紹介の際に、「ジャッキーちゃん」に聞こえると気をつかった映画会社が「チェン」に変えたそうで、なんだ東映のせいだったのか。わざわざ間違いに合わせることもなかろうということになったようですね。
ついでにいえば、ジェイシーの中国語名は「房祖名」 あれ、「陳」姓じゃないの? いろいろ勘ぐられそうですが、これはジャッキーの父親(つまりジェイシーの祖父)にまつわるイロイロがあるそうで、うーんこの祖父ドノも何かと面白そうな人物なんですよねえ。ジャッキー一家には、人を楽しませる遺伝子が伝わってるんでしょうかね。
ジャッキー・チェンと勝負する 目次
ここから先は
¥ 100
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?